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高齢者・認知症に対する非薬物療法の種類って?介護・看護・リハビリ職が実践できるアプローチ集

病気や障害の「治療」というと、薬を用いたものが先に思い浮かぶという方は多いです。
しかし、高齢者や認知症の方を対象に用いられる「非薬物療法」はバリエーションに富んでいます。
今回は非薬物療法として分類されるアプローチについてお伝えしていきます。
さまざまな方法が存在するため、病院や施設で実施してみたいと感じる非薬物療法があるかもしれません。

薬を使うだけがすべてじゃない!非薬物療法とは?

薬を使った治療法が「薬物療法」と呼ばれるのに対し、薬を使用しない治療法は総称して「非薬物療法」といわれます
リハビリで実施する運動療法もその一つですが、それ以外にもさまざまな非薬物療法が存在します。
特に高齢者や認知症の方に対しては、非薬物療法を用いたアプローチが積極的に行われている状況です。
非薬物療法は、活動性の向上・脳の活性化・コミュニケーションの促進などさまざまな目的で用いられますが、これも治療の一環といえます。
薬による治療がすべてではないため、薬物療法と非薬物療法を併用しながら、介護・看護・リハビリのスタッフが、必要な関わりを提供していきます。

体を動かして認知症予防!リハビリで実施する運動療法のメリット

理学療法士・作業療法士といったリハビリ職が提供する運動療法も、非薬物療法の一種です。
運動療法では、その名のとおり体を動かすことを治療の手段として用い、機能の回復や症状の軽減を目指していきます。
生活習慣病の予防という観点からも運動は大切ですが、認知症の発症を予防したり、認知症の進行を抑える効果もあります。
認知症の治療ガイドラインでは、発症予防については推奨グレードB(科学的根拠があり、行うよう勧められる)とされており、進行抑制についても効果が期待できると推察されています。
認知症の発症予防に関しては、特に有酸素運動の有効性が提唱されています。
運動療法を提供するのは理学療法士・作業療法士が中心となりますが、医療や介護の現場でも「リハビリ職の違いがわからない」といった疑問をお持ちの方は意外と多いです。
リハビリの種類・職種について知識を整理しておきたい方はこちらの記事(リハビリテーションとは?理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いと役割をわかりやすく解説!)もご一読ください。

毎日の関わりで介護・看護・リハビリ職が使える心理療法

高齢者のなかでも、特に認知症の方に対しては、心理面での安定を図るために心理療法が実施されます。
認知症によってわからないことが多くなると、心理的にも不安を感じやすくなり、徘徊などの問題行動に直結することがあります。
これはご本人にとっても、介護者にとっても大きな負担となります。
介護・看護・リハビリ職が使える心理療法をご紹介していきます。

●回想法

認知症の方は「短期記憶」とくらべ、「長期記憶」が保たれやすいという特徴があります。
つまり、直近の出来事は記憶として定着しにくくても、昔のことであれば記憶が残っていることが多いのです。
回想法では、昔の楽しかった記憶を思い出すことで、その記憶を強化し、心理面での安定を図っていきます。
国立長寿医療研究センターが2015年から2017年までに実施した研究では、地域高齢者を対象に回想法を実施し、効果を検証しています。
回想法を実施した介入群(20名)と、実施しなかった対照群(20名)では、WMS-R(ウエクスラー記憶検査)において、介入群で記憶遂行課題の項目で成績が向上したと報告しています。
つまり、回想法によって高齢者の記憶力が向上する可能性が示唆されたのです。

●バリデーション療法

バリデーション(validation)とは、もともと「確認する、認める」といった意味を持つ言葉です。
認知症の方の感情・経験を尊重し、認めることが基本的な姿勢となります。
具体的には、家に帰りたいと発言したり、徘徊したりすることも、「なにか意味があるのだ」ととらえ、共感していくことが基本の関わりです。
現場では「家に帰りたい」という方に対して「今日はもう日が暮れるので…」などと説明をすることで落ち着いてもらえる例もありますが、場合によっては「うそをつかれている」という印象を持たれてしまうケースもあります。
バリデーション療法では、「◯◯さんのお宅はどこにあるのですか?」などと会話をして、その世界を理解する姿勢を示します。
実際には、アイコンタクトをとること、「はい」か「いいえ」で答えられないオープンクエスチョンを用いることなど、さまざまなテクニックを使っていきます。

●リアリティ・オリエンテーション

現実見当識訓練ともいわれる訓練で、認知症のある方が、置かれている状況や現実を正しく認識するためのアプローチです。
いま自分がいる場所や季節などがわからなくなっては、誰でも不安を感じてしまうものです。
「今日は3月20日ですね」「もう桜が咲く季節になりましたね」などと質問や確認をしながら、現実認識を促していきます。
レクリエーションの冒頭などで実施する例が多いですが、毎日の関わり・会話のなかで、自然に使ってみると良いでしょう。
そうすることで周辺症状(BPSD)の軽減も期待できます。
今一度確認しておきたい「リアリティ・オリエンテーションの効果」については、こちらの記事(介護従事者は必読!世界的に実践されている「リアリティ・オリエンテーション」の効果をひも解く)でも詳しく紹介しています。

これらの心理療法は、非薬物療法のなかでも比較的実践しやすいものではないでしょうか?
回想法などは認知症の有無にかかわらず使用できますし、レクリエーションのプログラムとしても実施することができます。
また、認知症の方にケア・リハビリを提供する方は、バリデーション療法・リアリティ・オリエンテーションについても積極的に実践してみてください。

介護施設での実践例も多い!音楽・園芸・化粧の力で元気を引き出す

介護施設では、音楽療法・園芸療法・化粧療法など「◯◯療法」と呼ばれるアプローチが多く用いられています。
高齢者の方では良い反応を引きだすことにもつながるため、ぜひ導入を検討してみてください。

●音楽療法

音楽療法では、音楽の力を使って脳の活性化・痛みの軽減・コミュニケーションの促進・リラクゼーションなどを目指していきます。
実際には歌を歌ったり、タンバリンなどでリズムをとったりします。
音楽療法士という資格を持つ人もいて、ピアノやギターなどを演奏し、介護施設などで活躍しています。
音楽療法は「療法」として確立され、アセスメント・プログラムの考案・生演奏などの要素をもって構成されたものです。
「音楽レクリエーション」とは異なるため、こちらの記事(現役音楽療法士直伝!介護現場で取り入れてもらいたい音楽療法!プログラム案をご紹介)で、その違いと実施上のコツを確認してみてください。

●園芸療法

園芸療法では、草や花など植物の力を活用して、高齢者の元気を引きだしていくことができます。
介護事業所のなかには、畑での園芸を通じて体力づくりをサポートしている例もあります。
体力づくりだけでなく、園芸に関わる話題でコミュニケーションが活発になることや、自発的に水やりをするなど活動量のアップも期待できます
畑や花壇などがなくても、施設内で鉢植えの観葉植物を育てるなど手軽なものから始めることも可能です。
療法として実施するからには、余暇として楽しんでもらうだけでなく、利用者さん・患者さんの変化を見逃さないよう、注意深く観察していく必要があります。
なお、園芸療法で得られる効果や実践例については、こちらの記事(園芸療法ってどんな効果があるの?介護施設で高齢者の元気を引き出すアプローチ)でもご紹介しています。

●化粧療法

高齢者の方では、身体機能の低下や社会的な役割の喪失などがきっかけとなり、化粧を楽しむことを忘れてしまうケースが多いです。
身だしなみを整えると、なんとなく気持ちが引き締まると感じた経験のある方も多いと思いますが、化粧が心の状態に与える影響は大きいのです。
化粧をするようになると、外出頻度が増えたり、他者と積極的にコミュニケーションをとるようになる方もいます。
すべての方に当てはまるわけではありませんが、心身の元気を引き出すためには有用性が期待されているアプローチの一つです。
化粧療法の効果についてはこちらの記事(化粧療法で心身を元気に!介護従事者が知りたい効果を論文・経験から徹底解説)でも詳しく解説しています。

●光療法

認知症の方では、睡眠のリズムが乱れ、夜間に覚醒してしまうケースも少なくありません。
そうした場合に、光療法という光を用いたアプローチが用いられることがあります。
強い光を一定の時間で照射することで、睡眠や覚醒のサイクルを整えることを目的としています。
外出の頻度が減り、薄暗い屋内で過ごす時間が長くなると、徐々に体内時計が乱れていくことは想像に難くありません。
実際に光療法を導入している施設は少ないという印象ですが、少なくとも日中の離床時間を増やしたり、太陽の光を浴びたりすることは意識していきたいところです。
光療法についてはこちらの記事(介護現場で対応に苦慮する認知症の方の睡眠障害…光療法のエビデンスを調査)でもエビデンスに関する見解などをご紹介しています。

●学習療法

高齢者や認知症の方を対象とした学習療法も、すっかり定番となりました。
音読や計算などの教材を使って活動することで、脳の活性化を目指していきます
音読では、単語をとらえ目で見た情報を音韻へと変換し、意味を分析していくプロセスが含まれます。
また計算では、数字を用いて計算を実行しながら手を動かしていきます。
実際、学習課題によってMMSEなどの認知機能検査の成績が維持されるといった報告もあるほどです。
学習療法の意義や効果、エビデンスについてはこちらの記事(計算・音読などの学習プリントは効果アリ?認知症の方を対象とした文献からその真相を探る)をご覧ください。

●レクリエーション療法

病院や介護施設では、介護士や作業療法士などがレクリエーションを担当している例も多いのではないでしょうか。
レクリエーションでは、カラオケ・俳句・書道・編み物など、さまざまな活動を実施できます。
余暇としての側面も強いですが、定期的に活動に参加してもらうことで、活動量の確保にも貢献します。
また、もう一つの目的としては、脳の活性化が挙げられます。
生活のなかで活動の機会を持つことは、筋力や関節可動域といった体の機能だけでなく、脳の機能を保つことにも寄与するのです。
レクリエーションの効果を引きだすためのコツについては、こちらの記事(介護施設で行う集団作業療法・レクリエーションの効果を引き出すための視点)もご参照ください。

上記のほかにも、犬などの動物が介護施設で高齢者と触れ合うアニマルセラピー(ペットセラピー)と呼ばれるものや、香りの力で心身を癒やすアロマセラピーなどがよく知られています。
非薬物療法はバリエーションが豊富なので、病院・介護施設で実践してみたいと思うものから取り入れてみてください。

まとめ

高齢者や認知症の方における非薬物療法では、単なる「楽しみ」や「余暇」というレベルを超えて、治療的に意義のあるものとして位置づけられています。
心身を活性化させたり、コミュニケーションの機会が増えたり、認知症の方の周辺症状が落ち着いたりと、さまざまな良い変化を多く実感できるものです。
多忙な業務に押されて、新たな活動を始めるにはエネルギーが要るという方も多いと思いますが、ぜひ気になる非薬物療法を一つずつ実践してみてください。

参考:
日本神経学会 認知症疾患治療ガイドライン2010(2018年3月15日引用)
国立長寿医療研究センター 長寿医療研究開発費 平成28年度 総括研究報告(総合報告及び年度報告)(2018年3月15日引用)

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