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高齢者の体温はなぜ低い?その疑問に、メカニズムからお答えします!

入居者さんの体温を測定していると「35度台が多い」と感じませんか?
なぜ、高齢者は体温が低い方が多いのでしょうか。
今回は介護職の方にもぜひ知っておいてもらいたい体温のメカニズムと、高齢者はなぜ体温が低いのかについて、解説します!

体温は常に体内で作られ、全身に運ばれ、そして放散されている

人の体温は、体の中でなんらかの異常が起きていなければ、おおよそ36~37度付近で一定に維持されています。
ではなぜ人は、周囲の温度が変化してもこの体温を維持できるのでしょうか。
熱を作り出し、外に放出されるまでのメカニズムを3段階に分けて解説します。

1.熱を作り出す

体温を維持するためには、常に体の中で熱を作り出さなくてはいけません。
体の中で熱を作り出しているのは、筋肉と肝臓です。
筋肉は、収縮するためにブドウ糖などをエネルギーへ変えるとき。
肝臓は、食物から取り込んだ栄養素を代謝するときに、それぞれ熱を作り出します。

2.全身に運ぶ

体の中のさまざまな機能は、一定の熱がないと効率的に動くことができません。
そのため、筋肉や肝臓によって作られた熱は、血液によって全身に運ばれます。

3.熱を放散する

熱を作り続けていたら、体はどんどん熱くなってしまい、一定に保つことができなくなってしまいます。
そこで活躍するのが皮膚です。
皮膚の表面から熱を放散することで、高くなりすぎないようにしています。

このように体温は、体内で作られ、運ばれ、そして外へ放散されているのです。

体温を維持できるのは、温度を感知し、司令を出している視床下部のおかげ

体温の産出・輸送・放散を、それぞれ単独で行っていては体温が一定になりません。
そこで人の体温が常に一定に保てるよう、管理しているのが、温度受容器と体温調節中枢の2つです。
温度受容器とは、皮膚や脳の視床下部という部分に存在し、温度を感知する役割を担っています。
一方、体温調節中枢は、温度受容器もある脳の視床下部という部分にあり、体温を維持するいわば司令塔のような役割をしています。
そして体温調整中枢は、温度受容器によって感知された体温に合わせて、以下のような指令を体の各部署に出すことで、体温を一定に保っています。

体温が上がっている時 体温が下がっている時
熱産生 ・代謝率を下げる
・筋肉の震えを抑える

 熱の産出を下げる
・代謝率を上げる
・筋肉の震えを上げる

 熱の産出を上げる
熱放散 ・皮膚の血流量を上げる
・発汗量を上げる

 熱の放散を上げる
・皮膚の血流量を下げる
・発汗量を下げる

 熱の放散を下げる

基礎代謝と調整機能の低下が、高齢者の低体温を招く

人間の体にとって生命を維持するために最適な体温は、36度から37度付近です。
しかし実際に高齢者の体温を測定してみると、35度台と体温が低い方がとても多いです。
ではなぜ、高齢者は通常よりも体温が低いのでしょうか。
その理由は基礎代謝と調整機能の低下が関係しています。

●基礎代謝の低下

基礎代謝とは、人が生きていくために最低限、体が必要とするエネルギー量のことをいいます。
熱は筋肉や肝臓での代謝によって産出されますが、筋肉量は20歳をピークに徐々に減り、運動量も低下します。
よって、年を重ねると基礎代謝は落ちる傾向にあります。
基礎代謝が落ちることで熱の産出量も少なくなるため、結果として高齢者は子どもや若い方にくらべ、体温が低い方が多くなります。

●体温調整機能の低下

視床下部が司令塔となり行われている体温調整ですが、この体温調整機能も歳を重ねると機能そのものが低下します。
本来は体温が下がったとき、代謝を上げたり、皮膚の血流量を下げなくてはいけません。
しかしその伝達機能が加齢によって低下してしまっているので、体温の調整ができず、体温が低い傾向となります。

●加齢に伴う変化は、視床下部も原因の一つ

視床下部は体温以外にも、体の中でさまざまな情報を伝達するホルモンを分泌しています。
睡眠や覚醒、食事や水分補給など、人が生活していく上で大切な生理現象の調整も、視床下部が行っています。
高齢者が起こしやすい不眠や食欲の低下、水分量の低下といった問題は、視床下部の機能が低下することも、原因の一つと考えられます。

体温測定時に注意したい、体温が生理的に変動する5つの事柄

介護職など、ご高齢の方の体温測定をする機会がある方にぜひ覚えておいていただきたいのは、体温が生理的に変動するとされている、以下の5つの事柄です。

1.体温を測定する時間帯

体温は、夜間の睡眠中が最も低くなり、午後活動している間が最も高くなります。
このとき、正常であれば体温の変動は1度未満であるため、1度以上変動があった場合は、病気が隠れている可能性があります。
たとえば夜間は35度台と低い体温の方が、午後には36度後半だった場合は、病気の可能性がある、ということになります。

2.運動をしたとき

運動は、筋肉を多く収縮させるため、熱の産出量が増え、体温は上がります。

3.食事をしたとき

食事をすると、消化や吸収といった代謝が亢進するため、熱の産出量が増え、体温は上がります。

4.精神的に興奮しているとき

興奮すると、体温を上げる作用のあるアドレナリンの分泌が亢進されるほか、筋肉の緊張も亢進されるため、熱の産出量が増え、体温は上がります。

5.長期の栄養失調

長期にわたって栄養が不足すると、筋肉や肝臓が熱を産出できないため、体温は下がります。

これら5つの変動状況を踏まえた上で、高齢者の体温測定を行う際は、

  1. 〇毎日決まった時間
  2. 〇運動・食事の直後は避ける
  3. 〇精神的に落ち着いているとき

に測定することを心掛けましょう。

体温の測定は、できるだけ腋で行おう

額や鼓膜など、最近はさまざまな部位での体温測定器が多数市販されています。
しかし、腋は確実な体温を測定できる口や直腸にくらべて、簡単に測定できること。
そして、腋を隙間なく閉じることができれば、確実な体温に近い値を測ることができることから、日本では最も一般的な測定方法となっています。
腋を隙間なく閉じることができない。
腋で測定すると興奮してしまうなどの理由がなければ、極力体温測定は腋で行うことをおすすめします。

関連記事:
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参考:
健康長寿ネット エネルギー消費量の測定方法.(2018年6月22日引用)
WAM NET 高齢者の特徴とバイタルサイン.(2018年6月22日引用)
尾上尚志・北澤茂他.病気がみえる Vol.7 脳・神経,メディックメディア社,東京,2017,pp45.
熊谷たまき、徳田安春他.フィジカルアセスメントがみえる,メディックメディア社,2015,pp24-39.
TANITA 体組成計の測定項目の見かたについて.(2018年6月26日引用)

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