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高齢者の脈は早い?少ない? これだけは押さえたい、脈拍のメカニズムと触知部位

血圧や体温にくらべ、脈拍についてはあまり重視されないことが多いのですが、脈拍こそ、介護者がとっさに測定でき、異常かどうか判断できる目安の一つになります。
今回は高齢者を介護する方に、ぜひ知ってほしい脈拍について解説します。

脈拍は、心臓の拍動による血管内部の圧力の高まりによって測定できる

脈拍は心臓と血管が深く関係して生み出されています。
心臓は拍動を行うことで、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。
しかし心臓が一生懸命拍動を行っても、それだけでは全長約10万kmにも及ぶ全身の血管の隅々にまで血液を送ることはできません。
そこで活躍するのが血管の弾力です。血管はゴムのように伸び縮みができます。
心臓の拍動によって血管が膨張するとともに、血管内部の圧力を高めることで、体の隅々にまで血液を送り出すことができます。
このとき、心臓の拍動によって起こる血管内部の圧力の高まりを脈波(みゃくは)といい、この脈波を手首にある橈骨(とうこつ)動脈などで触知し、計測する値のことを脈拍といいます。

●心拍数と脈拍数が一致しないケースを覚えておこう

脈波は心臓の拍動によって生み出されているため、通常ならば心拍数と脈拍数は一致します。
しかし、血管や心臓が原因となり、心拍数と脈拍数が一致しないことがあります。
その場合血管の一部が狭くなっているか、あるいはふさがってしまっていないかが疑われます。
心臓の拍動によって全身に送られるはずの血液ですが、このような状態になると、橈骨動脈などの末端まで脈波が起こらなくなってしまうため、たとえ心拍数が正常であっても、脈拍は測定することができなくなります。
これらの現象は特に血管が硬くなる動脈f硬化や、血管を傷つける高血圧、あるいは糖尿病などの持病を抱えている高齢者に多くみられます。
脈拍が異常に少ないと思ったときは慌てずに反対側の腕で再度測定をし、脈拍数を確認するとよいでしょう。
一方、血管が原因ではなく心臓が原因で心拍数と脈拍数が一致しない場合もあります。
心臓の拍動が弱くなると、血液を運ぶというポンプ機能も低下してしまうため、脈波も弱くなります。
その結果、心拍数はむしろ早いくらいなのに、橈骨動脈といった末端では脈拍が少ないといった現象が起こってしまいます。
このように、脈拍は必ずしも心拍数と一致しないということを、ぜひ覚えておいてください。

脈拍の早い、少ないが意味していることを知ろう

高齢者の脈拍の基準値は、1分間あたり50~70回/分と、成人の基準値である60~90回/分にくらべて少なくなっています。
成人にくらべて高齢者は活動量や代謝が少なく、体内の酸素消費量が低下しているため、心臓がそこまで頑張らなくても十分役割を果たせるからです。
脈拍は病気によって変化することもありますが、生活の中でも上下しやすい数値の一つです。
そこで重要となってくるのが、生理現象としての脈拍の変化と、病気が原因で起こる脈拍の変化の見極めです。
では、施設等へ入居している高齢者の脈拍が基準値よりも早い、あるいは少ない場合、体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。f
頻脈(1分間での脈拍が100回以上)と徐脈(1分間での脈拍が50回以下)、それぞれの生理的、病的な原因をまとめました。

頻脈 生理的 運動 筋肉を動かすための代謝が亢進し、
体内の酸素需要が増えるため
食事 消化するための代謝が亢進し、
体内での酸素需要が増えるため
入浴 熱いお湯につかることで
交感神経の活動が亢進するため
ストレス ストレスが加わることで、
交感神経の活動が亢進するため
病的 発熱 熱を生み出すための代謝が亢進するため
貧血 体が酸素不足となり、
酸素の需要量が増えるため
心不全 1回あたりの拍出量が減り
より多く拍動する必要があるため
甲状腺機能亢進症 必要以上に
脈拍を上げるホルモン量が増えるため
徐脈 生理的 睡眠時 リラックスすることで副交感神経が働くため
病的 甲状腺機能低下症 脈拍を上げるホルモンの分泌量が低下する
薬剤 交感神経の働きを抑制するため

「頻脈は生理的な理由によるものも多いが、徐脈は睡眠時を除くと病的なものである恐れがある」ことが分かります。
頻脈の場合は、生理的な原因がないかどうかを確認することが大切です。
徐脈は病的なもの、特に薬の効きすぎによる恐れがあるため、看護師またはかかりつけの医師へ報告し、指示を仰ぐことが大切です。

なお、表の中で紹介している交感神経と副交感神経については、こちらのページ(血圧はなぜ1日の間でも変動しやすい?そのメカニズムを知って、介護に生かそう!)にて解説していますので、ぜひ併せてお読みください。

脈拍を測定できるだけで、おおまかな血圧が分かる!

脈拍は心臓と血管が深く関係しています。血圧も同様です。
全身の状態悪化によって血圧が低下すると、体は少しでも長く命をつなぐために、心臓や脳など、体の中央に多くの血液を送る一方で、足など体の末端へは十分な血液を送らなくなります。
その結果、橈骨動脈など末端では脈拍が触知できなくなります。
このことを利用して、脈拍がどの位置で触知できるかによって、おおまかな血圧を推定することができます。
脈拍を測定できる位置と、触知できたときの推定血圧を表にまとめました。

測定部位 推定される収縮期血圧
総頚動脈 60mmHg以上
大腿動脈 70mmHg以上
橈骨動脈 80mmHg以上

脈拍の触知は、医療資格を持っていなくても行えます。
上記3カ所の動脈触知ができるといざというときに役立ちますので、ぜひ普段から練習されることをおすすめします。

高齢者の脈拍は、できる限り1分間触知で測ろう

高齢者は心臓に持病を持っていることも珍しくありません。
数値としては正常でも、実際には脈拍が一時的に早くなったり、1拍だけ飛んでしまう、というケースもあります。
脈拍測定は自動血圧計だけではなく、1分間橈骨動脈を触知しての測定をおすすめします。
この脈拍測定によって、不整脈を早期に発見でき、それが高齢者の健康を守ることにもつながります。

参考:
学研 人間の血管の長さは、全部でどれくらいあるの
永井利幸他:病気がみえる Vol.2 循環器,メディックメディア社,東京,2017,pp340-341
熊谷たまき他:フィジカルアセスメントがみえる,メディックメディア社,東京,2015,pp40-45.

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