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呼吸が正常かどうかは、呼吸数が多いか少ないかだけではなく、深さや動作もチェックしよう

バイタルサインを測定する際、呼吸数まで計測している施設は少ないのが現状です。
しかし呼吸は生きるために必須な動作であり、常に注意すべき項目です。
今回は呼吸回数や深さ、呼吸の動作についてなにが正常で、なにが異常なのかを解説します。

呼吸数を管理しているのは、延髄にある呼吸中枢

人間が生きていくためには、常に酸素を体の中に取り込むとともに、体の中で作り出された二酸化炭素を体の外へ出さなくてはいけません。
呼吸活動をつかさどる呼吸中枢は、脳の中でも生命維持に重要とされている「延髄(えんずい)」という、脳の中でも特に奥深い部分に存在しています。
この呼吸中枢で、体内の酸素や二酸化炭素の濃度、緊張や感情の変化などの呼吸に関するさまざまなデータを統合し、呼吸を担う筋肉へ呼吸回数について司令を出しています。

●呼吸は不随意であり、随意でもある

呼吸は、心臓の鼓動とともに生きていく上で欠かすことができません。
そのため、呼吸は意識しなくても行われている不随意運動の一つです。
しかし呼吸は、不随意運動であると同時に、水泳のときなどは自分の意思で一時的に止めることができますし、緊張しているときには自分の意思で深く息をすることができる、いわゆる随意運動も行うこともできます。
ではなぜ、呼吸は不随意と随意、どちらでも行うことができるのでしょうか。
その答えは、脳の一部である大脳皮質にあります。
大脳皮質はさまざまな情報を認識し、考え、そして実行するまでの一連の働きをつかさどっている部分です。
たとえばこれからプールに飛び込もうとしているとき、大脳皮質は「泳ぐために息を止める」という情報を呼吸中枢に伝えます。
この情報を受けた呼吸中枢が息を止めるように呼吸を担う筋肉へ司令を出すため、意識して呼吸を止めることができるようになります。
このように、呼吸は普段は不随意運動ですが、大脳皮質の働きによって随意運動を行うこともできるという、まさに万能な機能なのです。

呼吸数を測定する際は、回数だけではなく、呼吸の深さも観察しよう

呼吸数は、先ほど解説したように意識して行うこともできます。
よって呼吸数は、入居者さんに気付かれないように測定する必要があります。
そこで看護師など医療従事者が行っている測定方法は、脈と一緒に測定することです。
脈拍を測定しているふりをしながら、さりげなく入居者さんの胸やお腹の動きを見て、呼吸数を1分間、測定します。
呼吸数の測定は回数だけではなく、呼吸の深さや呼吸動作も同時に観察することが大切です。
呼吸数の正常値は、呼吸回数が12~20回/分、呼吸の深さを表す1回の呼吸での換気量が約500ml/回です。

この正常値を基準として、呼吸数が多いか少ないか、浅いか深いかによって、以下の表のように分類されます。

分類 呼吸数 呼吸の深さ
回数の異常 頻呼吸 21回/分以上 ↑
徐呼吸 12回/分以下 ↓
深さの異常 過呼吸 500ml/回より多い ↑
減呼吸 500ml/回より少ない ↓
回数・深さの異常 多呼吸
少呼吸
無呼吸 ↓↓(呼吸の一時停止)

●呼吸をする際の体の動きによって、異常が分かることも

呼吸は、口や鼻、胸やお腹など全身のさまざまな部位を使って行います。
呼吸が多いか少ないか、呼吸が深いか、浅いかといった情報以外にも、呼吸をする際の体の動きによって、呼吸の異常を推測することができます。
呼吸の異常を示す体の動きを、表にまとめました。

分類 呼吸の様子
鼻翼(びよく)呼吸 息を吸う際に鼻の穴を広げ、少しでも多くの空気を取り入れようとする呼吸
下顎(かがく)呼吸 息を吸う際に下の顎をあえぐように動かして、少しでも空気を取り入れようとする呼吸
奇異呼吸 息を吸う際に通常はお腹が膨らむが、横隔膜が上がるため、お腹の上の部分がへこむ。
逆に息を吐くときに通常はお腹がへこむが、横隔膜が下がってしまうので、お腹の上の部分が膨らむ呼吸
陥没呼吸 息を吸うときに、胸の肋骨や鎖骨あたりがへこむ呼吸
口すぼめ呼吸 息を吐く際に口をすぼめるようにする呼吸

これらの呼吸は、たとえ分類を知らなくとも「いつもと呼吸が違う。おかしい」と感じることができるはずです。
もし入居者にこれらの呼吸が見られた際は、呼吸器官に重篤な障害が起こっている恐れがあるため、すぐに医療スタッフへ報告するようにしてください。

呼吸数を計測するのは難しい。だからこそ、酸素飽和度をチェックしよう!

忙しい介護の現場において、脈を測るふりをしながら、呼吸数が多いか少ないか、または呼吸が浅いか深いかといった呼吸の測定を一人ひとり行うことは、現実的とはいえません。
しかし、呼吸は命にかかわる大切なものなので、できれば継続して計測したいものです。
そこで活用したいのが、酸素飽和度です。
酸素飽和度とは、血液成分の一つであるヘモグロビンが酸素と結びついている割合を数値化したものです。
施設での測定では、パルスオキシメーターという、指に挟んで測定する医療機器を使用します。
酸素飽和度は、95%以上が正常とされており、90%以下だと酸素の取り込みが不足している「呼吸不全」の状態といえます。
日常の援助の中でもパルスオキシメーターによって、十分な酸素の取り込みができているかを確認することができます。
また、日常生活以外にも、

  • ・呼吸回数が多いor少ない
  • ・呼吸が浅いor深すぎる

といった異常が見られた場合は、まずパルスオキシメーターによって酸素飽和度を測定し、測定値が90%以下だった場合は医療スタッフへ報告した上で、病院への受診を検討されることをおすすめします。

呼吸が苦しいときは、上体を起こすように援助しよう

呼吸が苦しいとき、つい横になってしまいがちですが、横になってしまうと肺が膨らみにくくなるため、呼吸がしにくくなります。
呼吸が苦しい場合は、ベッド上で上半身を起こし、オーバーテーブルやクッションなどの上に枕を置いて、顔と腕を乗せることができると、呼吸がしやすくなります。
呼吸が苦しいときは、寝かせるのではなく、上体を起こすことをぜひ意識してみてください。

参考:
尾上尚史他:病気がみえる Vol.7 脳・神経,メディックメディア社,東京,2017,pp22-23
熊谷たまき他:フィジカルアセスメントがみえる,メディックメディア社,東京,2015,pp64-70

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