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湿潤が消毒より重要って本当?傷処置の新常識を解説します

けがをしたらまず消毒、それがこれまでの常識でした。
しかし今はこの常識が覆され、けがに対しては消毒せずに湿潤を保つことが推奨されていることをご存じでしょうか?
今回は、介護職員もぜひ知っておきたい傷の処置方法についてご紹介します。

創傷治療の3原則は「消毒しない」「水道水で洗浄」「湿潤状態を維持する」

傷ができたとき、これまでは

  • ○消毒しないといけない
  • ○傷はなるべく乾かす

が良いとされてきました。
しかし2018年現在、推奨されている創傷治療の3原則は

  • ○消毒しない
  • ○水道水で洗浄する
  • ○湿潤状態を維持する

の3つです。
では、それぞれの項目について詳しく解説していきましょう。

●消毒しない理由は「傷を治そうという働きを妨害してしまうから」

身体にはもともと、傷ができた部分を再生する働き、そして傷口からの細菌感染を防御する働きが備わっています。
しかしこれらの機能は消毒成分にとても弱く、濃度の低い消毒液であっても影響を強く受けることが、研究によって明らかになりました。
消毒はもともと、傷周囲の細菌が侵入して化膿しないために行っていたことです。
しかし、その消毒が、かえって自分自身の防護機能や再生機能を奪ってしまい、傷の回復を遅らせていたのです。
このため、今は基本的に消毒を行わないことが推奨されています。

●水道水での洗浄は、傷周囲の汚れや細菌を洗い流すため

消毒しないことと同時に推奨されているのが「傷口を水道水で洗い流す」ことです。
水道水と言われると「傷口に水の中に含まれているばい菌が新たについてしまわないか」と心配になってしまう方もいるのですが、日本の水道水は不純物などが取り除かれた、とてもきれいなものです。
褥瘡ケアの専門家が集まる日本褥瘡学会においても、褥瘡処置に水道水を使うことが推奨されているほど安全なものなので、安心して使っていただければと思います。

●湿潤状態を維持する

傷の湿潤状態を維持する、といわれても、具体的なイメージがわきにくいかもしれません。
傷が治るまでの過程として、これまではなるべく乾かして、早くかさぶたを作ることが良いとされてきました。
しかし、身体がもつ傷の再生機能および感染を防ぐ働きは、消毒に弱いだけではなく、乾燥することでも機能が著しく低下してしまうことがわかってきました。
そして、かさぶたは傷口が乾いてしまうことで作られることから、傷にとってよくない状態だったということもわかったのです。
乾燥によって身体がもつ再生機能、そして感染を防ぐ働きを妨害しないためにも、乾燥の反対である湿潤を維持することが提唱されるようになりました。
この治療法は「湿潤療法(モイストヒーリング)」と呼ばれています。

傷の処置で注意したい2つのポイント

今回ご紹介した、傷の処置での3原則ですが、介護の現場において、これらの原則を守りつつ、具体的にどのように処置すればよいのでしょうか。
ぜひ知っておきたいポイントを2つ、ご紹介します。

●水道水はなるべく直接洗い流す

水道水で傷を洗浄する際、なるべく水道水で直接洗い流すようにしてください。
これは、容器などに移すことで容器内の細菌等が水道水に含まれてしまう恐れがあるためです。
また、傷の周囲が土などで汚れている場合は、石けんなどで汚れを落としてもかまいません。
ただ、石けんの成分が残っていると皮膚によくないので、しっかりと洗い流すようにしてください。

●ガーゼは原則的に使用しない

傷口に直接絆創膏やガーゼを貼っていたら、膿が出てくるようになった、あるいはガーゼが傷口にひっついてしまって剥がすとき痛かった、という経験をされたことはありませんか?
傷口にガーゼを当てると、傷を治すために細胞が出す浸出(しんしゅつ)液をガーゼが吸い込んでしまうだけではなく、蒸発も促してしまいます。
そのため、傷口は乾燥してしまい、より治りにくくなってしまいます。
よって、傷の処置をするときにガーゼは使用しないようにしましょう。

傷の回復を促進してくれる「ドレッシング材」

ガーゼや絆創膏は傷を早く治すために適していない、と説明してきました。
ガーゼに代わって傷を早く治すためにぜひオススメしたいのが、傷の回復をより促進してくれる、医療用材料の一つ、ドレッシング材です。
CMでもよくみる、ジョンソン&ジョンソン社が販売している「キズパワーパッド」も、湿潤療法を行うドレッシング材の一つです。
ドレッシング材とは、表面は水や細菌の侵入を防ぐとともに、裏面はハイドロコイド素材という、傷にぴったりくっついて湿った状態を維持しながら傷を治す成分を吸収してゼリー状になることで、傷を治す力を促進させる働きがあるものをいいます。
ドレッシング材はドラッグストアなどでも市販されていますので、絆創膏やガーゼではなく、こういった湿潤療法を行えるものを選ぶとよいでしょう。

●ドレッシング材がなくても、身近にあるもので湿潤を保つことは可能

ドレッシング材は絆創膏やガーゼにくらべると高額なので、施設の状況によっては常備しておくことが難しい、というケースもあるかと思います。
傷に対する湿潤療法(モイストヒーリング)を推進している京都逓信病院では、以下のような治療法を推奨しています。

  • ○皮膚の乾燥防止などさまざまな使い道のある白色ワセリンを、食品用のサランラップフィルムに塗る
  • ○紙おむつや尿取りパッドなどを穴あきポリエチレン袋(台所の三角コーナー用ゴミ袋など)に入れる

これらを自作して傷口に当てることで、ドレッシング材に近い効果が期待できます。

理解を得られにくい治療法だからこそ、事前の説明が重要

消毒しない、水道水で洗い流す、湿潤状態を維持する、という新しい創傷処置は、長い間ずっと傷=消毒が当たり前だった高齢者からすると、受け入れがたい治療法ともいえます。
そこで看護師でもある筆者は、湿潤療法を行うにあたりいつも「これは、身体本来の治す力を引き出す治療法なんです」と説明しています。
身体本来の、という説明をすることで、驚くほど高齢者の受け止め方は変わるので、ぜひ試してみてください。

参考:
国立病院機構 東埼玉病院 傷の正しい治し方.(2018年8月21日引用)
京都逓信病院 湿潤療法により、痛くなく、早く、きれいに傷を治す.(2018年8月21日引用)
一般社団法人 日本褥瘡学会 褥瘡の治療について.(2018年8月21日引用)

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