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姿勢を見直して誤嚥を減らそう!誤嚥性肺炎予防のためにできること

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因と予防について、2つの記事(誤嚥性肺炎を予防するには?~嚥下訓練と口腔ケアの予防効果~)(高齢者に多い誤嚥性肺炎、発症の原因は加齢?分かりやすく解説します)でお話しました。
しかし、実際の介護現場で関心が高いのは「食事中の誤嚥をどう防ぐか」ではないでしょうか。
本記事では食事中の姿勢に焦点を当てて、誤嚥を起こしにくい姿勢について解説します。

誤嚥させないために、なぜ姿勢が大切なのか

私たちは食事をするとき、意識をせずに適切な姿勢をとっています。
しかし高齢者では病気や障害(脳梗塞の後遺症など)、筋力の低下などから食事中の姿勢が崩れやすくなります。
なかには自力で座ることのできない方もいらっしゃるでしょう。
姿勢が不良のまま食事をすると、誤嚥しやすくなり大変危険です。
たとえば「仰向けに寝転んで水を飲んだらどうなる?」と聞かれたら、ほとんどの人が「むせる」と答えるのではないでしょうか。
姿勢は誤嚥を防止する上で不可欠な要素なのです
介護施設においては、利用者さんが自力で適切な姿勢をとることができず、介護職員が整える場面が多くあるでしょう。
適切な姿勢に整えるためのポイントを、座って食べるとき・ベッド上で食べるときに分けてご紹介していきますので、参考になさってください。

姿勢のポイント~座って食べるとき~

座って食べるときに注意したいポイントは以下の5つです。

チェックポイント
体幹のバランス ・体が左右に傾かないようにする
・まひがある人にはクッションなどで調整する
足の位置 ・両足の裏をしっかり地面につける
・届かないときは足台を使う
首の角度 ・顎(あご)を軽くひく
テーブルとイス ・テーブルの高さはおへその少し上
・テーブルと体の距離はこぶし1個
・腕をテーブルの上に置いたとき、肘が90度に曲がるように
・イスの高さは、足の裏が地面についた状態で、膝が90度に曲がるように
(足台を置いて調節しても可)
胸を広げる ・脇を軽く開き、肘をテーブルの高さまで持ち上げる

●体幹のバランスを整えてリラックス

誤嚥性肺炎を予防するには?~嚥下訓練と口腔ケアの予防効果~でもお話しましたが、嚥下(えんげ)にはのどや舌のほか、さまざまな部位の筋力が必要です。
あなたの右半身にまひがあると想像してみてください。
イスに座ると右肩が下がり、右手はだらんとぶら下がるでしょう。
実際に疑似体験してみると分かるのですが、上記のような姿勢では首や肩に力が入っているはずです。
このように筋肉が緊張した状態では嚥下はスムーズにできません。
体幹が安定するとリラックスした姿勢を保持することができ、嚥下もスムーズになります。

食事中にバランスが崩れたら、その都度こまめに調整するとなお良いでしょう。

●足裏からの刺激は、体幹バランスに影響を与える

立位では、足の裏全体でしっかり地面をつかまなければ体幹バランスは保つことができません。
これは座っていても同じです。
足の裏から受ける触覚などの刺激は、体幹バランスの調整に重要です。

●軽く顎をひくと、気管に入りにくくなる

座って食べるときに注意したいポイント

軽く顎をひく(すこし前かがみになる)と誤嚥しにくくなる根拠は、のどと気管の位置関係にあります。
顔が正面を向いた状態だと、のどから気管に食物が入りやすくなります。
軽く顎をひくと、のどから気管へ入りにくく、食道へ入りやすくなります。
どのくらい前かがみになればいいのかというと、顎の先から胸の間に指が4本入るくらいが目安です。

●胸を広げる=咳払いしやすい、呼吸しやすい姿勢

胸を広げるってどういう意味?と思った方もいらっしゃるでしょう。
肩を前に倒し、いわゆる猫背になってみてください。
胸が狭く感じませんか。
反対に左右の肩甲骨がくっつくくらいに胸を張ってみてください。
胸が広がったのを感じませんか。
胸が広がると、深呼吸ができ、咳払いがしやすくなります。
誤嚥したときに、強く咳き込んで吐き出すことのできる姿勢でもあるのです。

姿勢のポイント~ベッド上で食べるとき~

食事するときの基本は座位ですが、利用者さんによってはベッドでの食事を余儀なくされる方もいらっしゃるでしょう。
基本的な姿勢のポイントは座って食べるときと同様です。
ベッド上では、足の位置はあまり重要ではないように感じるかもしれませんが「座って食べるとき」の項で説明した通り、足裏からの刺激が大切なのはベッド上でも変わりません。
クッションなどを使って「接地している」と感じる姿勢に整えます。

チェックポイント
腹圧を上げない ・食事中は膝を上げない

ベッドアップするときにはずりおちを防ぐために、膝を上げる。
しかし、ベッドで食事をするときは膝を下げてください。
膝が上がった状態ではお腹に圧力(腹圧)がかかってしまいます。
腹圧がかかると、胃の内容物が逆流しやすくなるだけではなく、胃が広がらずに食欲が落ちてしまいます。
胃内容物の逆流は誤嚥性肺炎の要因のひとつですから十分注意したいものです。

●リクライニング位は誤嚥しにくい?

座って食べるときに注意したいポイント

リクライニング位とは、ベッドを水平にした仰向け(0度)を基準として、背上げ角度に応じてリクライニング位30度、60度などと表します。
リクライニング位では、食物を口の中からのどへ運ぶ際に、重力を利用して送り込みやすくなること、気道が食道よりも上になり誤嚥しにくいことから、嚥下障害がある方の姿勢として有効です。
座位で頻繁にむせる利用者さんに試してみることも一案です。
その際は医師や看護師、言語聴覚士と相談し、リクライニング位何度で実施するのか十分検討してから行いましょう。

姿勢の調整は「安全な食事」「食の楽しみ」を満たすケア

適切な姿勢は誤嚥を減らし、ひいては誤嚥性肺炎を予防することになります。
また、利用者さんにとって食事は楽しみとしての意味合いも大きく、安全に食事ができればその欲求を満たすことができます。
姿勢の調整は、高齢者介護において重要なケア技術であるといえるでしょう。

参考:
前田圭介:誤嚥性肺炎の予防とケア 7つの多面的アプローチをはじめよう.医学書院,2017,pp.80‐87,102-103.

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