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入居者さんのケア

高齢者によくあるスキントラブル”発赤” その発赤、緊急性はある?ない?

高齢者はスキントラブルを起こしやすいものです。
なかでも皮膚が赤くなる”発赤”(ほっせき)は、様子をみて良いときと緊急性の高いときがあるのでやっかいです。
本記事では介護スタッフの方に向けて、皮膚の発赤について解説します。

高齢者によくあるスキントラブル”発赤”

発赤を正しく把握する

発赤(ほっせき)とは、紅斑(こうはん)※1あるいは初期の紫斑(しはん)※2によって生じる皮膚表面の赤みのことです。
※1毛細血管の拡張などによって皮膚が赤くなった状態。指で押すと消える
※2皮膚内の出血によって生じる紫紅色の斑

あなたが入居者さんの発赤を見つけたとき、報告すべきか悩むことはありませんか。
緊急性の高い発赤ならばすぐに報告すべきですし、慌てなくても良い発赤ならば少し経過をみることができます。
しかし「緊急性の高い発赤」を見分けるのは容易ではありません。
打撲の内出血でも、蚊に刺されても発赤が起こり得るからです。
介護スタッフの方に必要なことは「”どんな発赤か”の情報を集めて、皮膚の状態を正しく把握し、報告すること」です。

収集すべき皮膚の情報

主訴 どこに(部位)
現病歴 いつから?
自覚症状は?
(かゆい、痛い、熱感、腫れているなど)
思い当たる原因はある?
全身症状は?
(発熱、倦怠感、関節痛、頭痛など)
症状の程度は?
(改善傾向、増悪傾向)
症状の範囲は?
(小さくなってきた、広がってきた、赤くなったり消えたりを繰り返している)
なにか薬を使ったか?その効果は?
発赤部の様子 紅斑(一時的な発赤)か紫斑(持続する発赤)か
水泡や傷の有無
発赤の大きさ
境界は明瞭か不明瞭か
平らかでっぱっているか

ケース1.この発赤は褥瘡(じょくそう)?簡単な見分け方

この発赤は褥瘡(じょくそう)?簡単な見分け方

発赤ができていたら、一番はじめに疑うのは褥瘡(じょくそう)ではないでしょうか。
褥瘡とは、長時間同じ部位に圧迫が加わったことで血流が悪くなり(あるいは血流が停止し)、皮膚が赤みを帯びたり、ただれたり、傷ができたりすることをいいます。(一般的には床ずれと言われています)
褥瘡の初期は発赤のことが多いのですが、発赤のすべてが褥瘡なわけではありません。
褥瘡なのか否かを見分けるポイントと方法は以下の通りです。

○ポイント:持続する発赤は褥瘡、一時的な発赤は褥瘡ではない

持続する発赤は血管が破綻して赤血球が漏れ出ている状態であり、圧迫を取り除いても消褪しません。
一時的な発赤は反応性充血といって、圧迫を取り除けば30分ほどで消褪します。

○判別方法:発赤部を指で3秒間圧迫する

指を離したときに皮膚が白くなれば反応性充血、赤みが消えなければ褥瘡と考えます。

反応性充血であれば利用者さんの体位を変えて圧迫を取り除き、いったん様子をみます。
赤みが消えなければ褥瘡とみなし、すぐに医師や看護師に相談してください。
確かめる際は、指で押すという行為そのものが皮膚にダメージを与えることもありますから、慎重に行いましょう。

ケース2.緊急性の高い発赤!蜂窩織炎(ほうかしきえん)

緊急性の高い発赤!蜂窩織炎(ほうかしきえん)

発赤のなかには緊急性の高いものもあります。
ここでは訪問看護師である筆者が実際に経験した事例を紹介します。

事例)正さん、96歳

5日前から倦怠感を訴えていた。
3日前、右下腿に10cm×5cmの発赤があることに息子さんが気づく。
かぶれたのかと思い、手持ちの軟膏を塗ったが効果なし。
ご家族から連絡があり訪問。
発赤部を指で3秒圧迫すると白くなった。
発赤部には傷はないが、腫れと熱感がみられた。
倦怠感は続いており、微熱もある。
かゆみはなく、正さんは「5日前よりも具合が悪い。(足の)中が痛い」と話している。

先ほどお話した「皮膚の情報」を色分けしてみました。
この情報からは

  • ○一時的な発赤なので褥瘡ではない
  • ○軟膏の効果がないのでかぶれではない

ことが分かります。
さらに、以下の情報から緊急性を有することが分かります。

  • ○倦怠感や微熱などの全身症状が5日前からある
  • ○発赤部に腫れと熱感、痛みがある
  • ○5日前よりも具合が悪いと訴えている

発赤・腫脹・熱感、痛みは炎症の所見です。
さらに、5日前から症状があり、なおかつ悪化しています。
このときは病院受診をすすめ、蜂窩織炎(ほうかしきえん)で入院となりました。
蜂窩織炎は、皮膚の深いところから皮下の脂肪組織にかけて起こる急性の感染症で、膝から下に多く発症します。
蜂窩織炎の場合、外用薬では治療できず、抗菌薬を内服または点滴しなければなりません。
炎症は「傷からばい菌が入って起こる」と考えがちですが、蜂窩織炎ではどこから細菌が侵入したのか分からない(傷がない)ことも多いのです。
たとえ蜂窩織炎という病名を知らなくても、問題はありません。
先述したように情報を集めて報告できれば、医師も看護師も緊急性を感じ取ってくれるはずです。

ケース3.おしりが赤いのはおむつかぶれ?

おしりが赤いのはおむつかぶれ?

介護施設にはおむつを使用している利用者さんも多いでしょう。
「しょっちゅうおむつかぶれを起こしてしまう。」
「おむつかぶれがなかなか治らない。」
失禁の多い方や、蒸れやすい季節は、おむつかぶれに悩まされていませんか。
いくら丁寧にケアをしても改善しない臀部(おしり)の発赤は、おむつかぶれ以外も疑ってみるべきです。
おむつのなかは失禁や汗による湿度、体温による適度な温度、便や皮膚などの栄養と、菌が繁殖しやすい環境が整っています。
たとえば、真菌(カビ)。
真菌で有名なのは水虫ですが、臀部も真菌に感染することがあります。
真菌感染症の場合は、いくら保湿剤を塗っても治りません。
なかなか治らないからと、ステロイド軟膏でも使おうものなら大変です。
ステロイド軟膏は真菌に栄養を与えるようなものですから。
毎日ケアしているのに治らない、ステロイド軟膏で悪化したなどの情報があれば、皮膚の情報とあわせて医師や看護師に相談してみてください。
IAD(失禁関連皮膚炎)の記事もご参照ください)

利用者さんをよく観察すること

発赤にはさまざまなバリエーションがあり、それ故に「何の発赤か」にたどり着くのは難しいです。
まずは、利用者さんの皮膚に発赤を発見したら、慌てずに情報を集める習慣をつけましょう。
また、普段から利用者さんをよく観察することが一番大切です。
良く観察することで「内出血しやすい人」「皮膚が弱い人」「かぶれやすい人」など、参考になる情報をあらかじめ得ることができるでしょう。

参考:
清水宏:あたらしい皮膚科学第2版.中山書店,2011.

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