介護・高齢者施設が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

医療従事者向け 介護プラス

入居者さんのケア

なかなか治らないおむつかぶれ。IAD(失禁関連皮膚炎)予防のポイント

毎日ケアしているのに改善しない、もしくは悪化してしまうおむつかぶれ。
IAD(失禁関連皮膚炎)では、これまでに行ってきた”良く洗う”ケアが最善ではないことが分かってきました。
本記事では介護スタッフの方に向けて、IADの発症メカニズムと予防のポイントについて解説します。

なかなか治らないおむつかぶれ。IAD(失禁関連皮膚炎)予防

IADとは?おむつかぶれとの違いは?

IADとは?おむつかぶれとの違いは?

IAD(Incontinence Associated Dermatitis:失禁関連皮膚炎)は、「尿または便への曝露※1に起因する皮膚障害」と定義されています。
(※1医療用語では細菌やウィルス、薬物、化学物質などにさらされること)
高齢者介護の現場では、おむつかぶれは悩ましい問題です。
日常的に失禁している方のおむつかぶれは治りにくく、ご本人にも痛みやかゆみなどの苦痛が伴います。
これまで、おむつかぶれのケアは「排泄物の刺激によるトラブルだからしっかり洗う」という考えが一般的でした。
訪問看護師である筆者も、おむつかぶれのある利用者さんへのケアはまず「きちんと落とすこと」が最優先だと考えていました。
もちろん、尿や便を洗い流してからスキンケアを実施するという行為は間違いではありません。
しかし、IAD発症のメカニズムからは

  • ○かぶれてからのケアでは遅い
  • ○もっと根拠のある予防的スキンケアが必要

であることが分かってきたのです。

IADは皮膚内部にも損傷が起こっている

IADは皮膚内部にも損傷が起こっている

おむつかぶれは、尿や便の刺激で起こる「接触性皮膚炎」であり、皮膚表面に起こる反応です。
刺激となるものが取り除かれれば(洗い流せば)、皮膚の状態も改善されるはずです。
しかし、どんなに丁寧にケアをしても悪化するケースに出会うことがありませんか。
筆者もある利用者さんのケースで、排便のたびに洗浄してスキンケアを行っているのに悪化してしまい、途方に暮れた経験があります。
これは、筆者の経験したケースがIADであったことを示しています。
峰松らの研究によって明らかになった、最新のIAD発症メカニズムをみてみましょう。

  1. 1.排泄物によって皮膚が浸軟(しんなん:ふやけること)する
  2. 2.浸軟により、皮膚のバリア機能が破綻する
  3. 3.特に便に含まれる消化酵素(リパーゼ)はアルカリ性が強く皮膚のバリア機能を低下させる
  4. 4.正常な皮膚では透過できない消化酵素や細菌が皮膚の奥まで侵入し、組織を損傷させる
  5. 5.IADが起こる

IADではかぶれた(赤くなった)時点で皮膚の表面だけではなく、内部の組織損傷が起こっています。
つまり赤くなっているのを発見したときには進行しているということです。
IADを発症したあとでは、従来のように洗い流して刺激を取り除くケアを行っても改善は望めません。
なかなか治らないおむつかぶれには、IADかもしれないという視点を持つことが大切です。

IADケアのポイントは予防と管理

IADケアのポイントは予防と管理

IADケアでポイントになるのは「予防」と「管理」です。

  • ○予防的スキンケア(予防)
  • ○失禁へのアプローチ(管理)

失禁へのアプローチは、

  • ○排尿のパターンを知り、トイレへ誘導する(おむつへの失禁を減らす)
  • ○排便をコントロールする
  • ○一人ひとりにあったおむつやパッドを使用する

などが考えられますが、これは医師や看護師との連携なしでは解決できません。
特に下痢便は水分量が多く、それだけで浸軟を引き起こしますし、消化酵素の含有量も多いので対策は必須です。
下痢しやすい利用者さんは、早期に医師や看護師に相談し、下痢の要因を把握するとともに「下痢をさせない」対策を講じましょう。

もうひとつ、介護職員の方が直接関わるケアとして、「予防的スキンケア」があります。
次項では日常的に実施したい予防的スキンケアと、IADを発症してからのスキンケアについてお伝えします。

IAD予防に正しいスキンケア方法を知ろう

予防的スキンケアはIADの基盤である「浸軟(ふやけ)」を防ぐことにつきます。
しかし、おむつを使用している方の皮膚は、蒸れや排泄物によって浸軟の状態になりがちです。
浸軟を防ぐには失禁のコントロールのほか、浸軟予防のスキンケアが重要です。
尿や便にさらされても「ふやけさせない」ために以下のケアを徹底しましょう。

  • ○皮膚のバリア機能を低下させない
  • ○撥水効果のあるクリームを予防的に塗布

本来健康な皮膚は弱酸性の皮脂膜がバリアとなり、皮膚を守っていますが、皮膚が乾燥した状態ではバリア機能は低下してしまいます。
洗浄したあとはすぐにスキンケアを行うことが大切です。

洗浄 洗浄剤を使いすぎない
ごしごし洗わない
水分の拭き取りはこすらず、押さえ拭き
保湿・保護 保湿効果のある入浴剤の使用
洗浄後は10分以内にスキンケア
撥水効果のあるクリームやオイルの塗布

また峰松らは、組織内部の損傷が治癒するには一週間程度を要し、 IADの特徴的な治癒過程として、毛包膨大部から表皮様の組織が伸び、損傷部位を皮膚から分断して排除すると述べています。
洗う際に起こる摩擦は、IADの治癒過程を妨げます。
すでにIADが起こっている皮膚には、上記の洗浄、保湿・保護をベースに、より慎重にケアを行いましょう。

総合的なアプローチを!

スキントラブルが起こると、皮膚の状態にばかり注目しがちです。
皮膚の状態を正しく把握し、適切なケアを行うことは大切ですが、おむつの選び方や失禁のコントロール、栄養状態の改善など、あらゆる可能性を想定して総合的にアプローチすることで、よりIADの治癒は促進されるでしょう。
また、スキントラブルがなくとも日常的に同様のアプローチをすることで、IADが起こりにくい皮膚を保つことができるのです。

参考:
峰松健夫,麦田裕子:失禁に伴う皮膚炎の最新知識.エキスパートナース,照林社,2017,pp.65‐73.

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)