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高齢の発達障害者の施設入所。施設ケアでの理解と注意ポイントとは?

発達障害は脳機能の障害で、先天的なものです。
発達障害と診断された人に対して、障害者対策研究事業の一環で支援のあり方が考えられるようになりました。
この記事では、高齢の発達障害者への施設側の理解と配慮に関する見解を紹介します。

高齢の発達障害者への施設側の理解と配慮に関する見解を紹介

高齢の発達障害者の特徴

発達障害とは、「ASD」「ADHD」「LD」などの脳の機能面の障害のことです。
発達障害者が高齢になると、そぐわない環境だと障害部分が際立って周囲とうまくいかないことがあります。
ここでは、高齢者に絞った発達障害の症状を解説します。

1)ASD(自閉症スペクトラム)

ASD(自閉症スペクトラム)

自閉症スペクトラムは、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などを含めたすべての症候群を示します。
特徴として、コミュニケーションが取りにくく、同じ行動を繰り返すなどこだわりが強く、臨機応変に対処することが苦手です。
ほかの利用者と人間関係をうまく構築できないため、いつもと違う状況に遭遇すると不安になり、暴れたりほかの利用者とトラブルになることがあります。
外見では障害を判断しにくいため、周囲も高齢のためだと思い、発達障害だと気が付きにくいことが多いです。
引っ越しや違う指示やルールなど、環境の少しの変化に対応しにくく、変わったことを伝えても理解できません。
周りの様子を見ながら動くことができず、自分の関心ごとややりたいことなどを行い、自分のペースで動くので、周囲には変わった人とみなされがちです。
高齢になって身体機能の衰えに対応ができないので、今までの生活パターンと違う人からの援助は受け入れがたく、頑固で融通がきかないと思われがちです。
感覚が過敏なため、大きな音や特定の音を聞いてパニック状態に陥いることやスキンシップを嫌う人がいます。
逆に、感覚が鈍いために痛い、熱い、冷たいなどを感じにくい人もいます。

2)ADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHDは男性には衝動性や多動性、女性には不注意性が多く、落ち着きがなく、忘れ物やミスが多い、食堂で長時間座っていることができないなどが見られ、高齢になっても症状が続くといわれています。
場の空気が読めずに不適切な行動や発言が見られ、衝動的に感情を表したり、行動したりする人もいます。
パニックになると、大声を出したり、ほかの人と言い争いや暴力に発展することがあります。
ADHDは、ノルアドレナリンやドーパミン不足で、情報がうまく伝わらないことが原因だといわれています。
医師からの薬の処方により、シナプス間の神経伝達物質を増やしてADHDの症状を改善します。

3)LD(学習障害)

LD(学習障害)

LDには、読む、書く、算数などのすべての領域に障害があるケースや、特定の領域のみに障害があるケースがあり男性に多いです。
長い案内文や省略された案内文、流れる文字、早く話す人の言うことなどは、情報として入らず、理解できない人がいます。
時刻や本などを正しく読むことができない、聴いても理解ができない人もいます。

高齢の発達障害者の実態

のぞみの園が2014年に全国の発達障害者センター88カ所で行った、50歳以上で知的障害がない発達障害のある人の相談件数やサービス提供件数についての調査では、77カ所のセンターで計144人の発達障害に関する相談件数がありました。
その中で、65歳以上で発達障害と診断されている人は3人しかおらず、疑いのある人も含めると6人のみでした。
高齢の発達障害者の人数が少ないのは、研究がはじまったばかりで発達障害と診断された高齢者がほとんどいないためです。
発達障害支援法が施行されたのは2005年4月で、高齢発達障害者に関する実態把握がなされていないのが現状です。
相談件数の144人の内、約70%以上の発達障害者が家庭を持ち、本人の賃金収入や家族の収入、年金で暮らしていることから、中年期以降の知的障害がない発達障害者の多くが職業を持ち、家庭を築いていると考えられます。
正確な診断基準が定められ、発達障害の研究が進むにつれて、今後は中年や高齢になってから発達障害と診断される人が増えていくと推測されています。

高齢の発達障害者への理解と注意するポイント

現在、発達障害者と診断された人は、これから高齢になるので、今後施設への入所が増えていくことでしょう。
しかし、高齢者施設が発達障害者を受け入れるには、発達障害者の特性を職員がよく理解している必要があります。
なぜそのような行動をとるのかを分かっていれば叱責や注意が減ることでしょう。
今後、発達障害と診断される人が増えると推測されるので、高齢者施設でも発達障害についての知識や対応方法などの研修が必要でしょう。

●発達障害者への対応ポイント

発達障害者への対応ポイント

発達障害者への対応は障害により異なりますが、その人の障害を理解し、症状に合った対応が必要です。

  1. 1)生活パターンを変えるときは、何度も経験して新しい生活パターンを身に付ける
  2. 2)伝える情報は簡潔で繰り返し伝えることが必要(ダメなことでなく、することのみを伝える)
  3. 3)食堂へ行く廊下に「→食堂」などのサインを見やすいように一定の間隔や位置に設置する
  4. 4)音やアナウンスなど、音に敏感に反応する人には、さまざまな異なる音声案内や音でストレスにならないように工夫する
  5. 5)壁紙の模様、床の色やデザインによっては、ドアや段や溝に見えることがあるので、錯覚をしないように配慮する
  6. 6)暴力を振るう、大声を出すなどの理解しがたい行動をとったときは、パーテーションなどで一人になれる空間(カームダウンエリア)を作り、落ち着くのを待つ
  7. 7)発達障害支援センターと連携をとり、相談や職員への研修を行う
  8. 8)医療機関を受診してカウンセリングなどの適切な療法により、施設での生活を継続できる
  9. 9)在宅や障害者施設から高齢者施設へ入所した場合は、変化に戸惑い、不安でパニックになりやすいため、専門の同じ施設で生活できることが望ましい

介護保険や障害者福祉法の改正により中重度の発達障害者は、65歳以上でも64歳まで受けていた共生型サービスを引き続き利用が可能になりました。
共生型サービスでは、発達障害者が環境を変えずに同じ状態のサービスが受けられるため、困難な状況を避けられます。

高齢発達障害者の特徴を理解して柔軟に対応することが大切

発達障害という特性のために、コミュニケーションがうまく取れず、孤立感を感じたり、施設での生活になじめず、不安やパニックになることが多いようです。
対応しにくい行動は発達障害のためであると理解していれば、叱責ではなくカームダウンして柔軟に対応できるようになります。
今後、発達障害者の診断基準の研究が進み、実態把握がなされて、高齢発達障害者への理解が深まれば、個々の障害に応じて、適した対応の方法が明確化されるでしょう。

参考:
地域及び施設で生活する高齢知的・発達障害者の実態把握及びニーズ把握と支援マニュアル作成 高齢発達障害者の実態把握に向けた予備的検討.(2019年7月18日引用)
地域及び施設で生活する高齢知的・発達障害者の実態把握及びニーズ把握と支援マニュアル作成 高齢知的障害者支援のスタンダードをめざして.(2019年7月18日引用)
BFガイドライン(施設編).(2019年7月18日引用)
厚生労働省 老年期発達障害者(60代以上)への障害福祉サービス提供の現状とニーズ把握に関する調査について報告書.(2019年7月18日引用)

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