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老人ホームのリスクマネジメント体制を整えるには何をすればいい?

老人ホームに入居し、安心して暮らせる毎日を願っている方は多くいます。
ここでは、そんな「安心」を提供するために必要なリスクマネジメントの重要性と、具体的な体制整備について、詳しく解説していきます。

調査データで見る老人ホームの事故とリスクマネジメントの実態

平成30年1月5日付の読売新聞で「老人ホーム事故死944人 誤飲や転倒 国へ報告1割」という報道がありました。
読売新聞の調査によれば、2016年度に誤飲や転倒などの事故によって亡くなられた入居者は、全国の有料老人ホームで944人にも上ります。

この調査データは、115自治体、対象施設約1万8000施設からの回答をもとにしたものです。
調査対象となった施設は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅だけですが、特別養護老人ホームなどの介護保険施設もあわせると、さらに多くの事故が発生していることが推測されます。
「国へ報告1割」との報道が事実であれば、老人ホームの運営において利用者が偶発的に亡くなるリスクは看過できるものではありません。

老人ホームの運営にも影響が。管理者が考えるべきリスクマネジメント

老人ホームでは、利用者が少しでも自立した生活を営めるように介護職員が日々ケアに当たっています。
介護施設における自立した生活とは、自分の力でできることを維持したり増やしたりすることであり、それは同時に入居されている利用者の尊厳を守ることにもつながります。
しかし、介護を要する高齢者の生活には、思わぬ事故などのリスクが伴います。
つまり、利用者の自立を優先すればするほど、リスクマネジメントは重要になってくるといえるのです。

老人ホームの介護現場では、誤嚥や転倒などによって事故が起きないようにさまざまな対策を講じています。
その試みは「リスクマネジメント」と呼ばれています。
リスクマネジメントの取り組みは、老人ホームに入居されている利用者だけでなく、これから入居を希望される方やそのご家族にも注目されているポイントです。
こうした安全対策は、施設と利用者(家族)の信頼関係を築くためには欠かせないものであり、結果的に老人ホームの運営という面においても、直接的に影響を与えることになります。

リスクマネジメントを行ったからといって、介護事故をゼロにできるわけではありませんが、対策をしっかりと立てておけば、事故のリスクを下げることは可能です。

リスクマネジメントに取り組む際は、主に2つの観点から進めていきます。
そのリスクマネジメントの2本柱とは、リスクコントロールとダメージコントロールです。

〇リスクコントロール

リスクコントロールとは、事故が起きないようにするためにはどうすればいいか?という取り組みのことです。
居住環境を整備すること、事故防止委員会の設置や職員の研修、施設内での事故防止に関する基本方針を定めるなど、主に「予防」を重視したものです。

〇ダメージコントロール

ダメージコントロールとは、事故が起きたときにどのように対応すればいいか?という取り組みのことです。
利用者に対する緊急対応、職員間の連携の方法、家族への報告、上司や行政への報告、施設内での情報共有、今後の再発防止策の検討など、主に「事故後の対応」を重視したものです。

リスクマネジメントの具体的な整備方法

ここからは、管理者が行う具体的なリスクマネジメントの整備方法についてお伝えします。

〇組織の体制を整える

社会福祉法第24条には「提供する福祉サービスの質の向上および事業経営の透明性の確保を図らねばならない」とあります。
この文言には、福祉施設が利用者の安全を含むよりよいサービスを提供することを求められるという意味が含まれています。
これをクリアするためには、事業所が定めた安全管理についての理念やビジョンにもとづいた運営を、忠実に行っていく必要があります。
さらに、策定した内容が利用者や家族にも明確に伝わるように、透明性の高い現場づくりを行っていかなければなりません。

現場で行うリスクマネジメントとしては、まず安全に関する高い意識を職員全体で共有することが必須です。
一方、管理者が考えるべきことは体制を整えることです。
そして、現場の職員がリスクマネジメントを行いやすいように、その道筋をつくることです。
具体的には、ヒヤリハットメモの活用や職員の研修、事故予防委員会の活動など、職員一人ひとりがリスクマネジメントを意識し、行動にうつすための基盤を、積極的に整えていきましょう。
職員がリスク因子を見つけた場合は対策を提案する必要があり、そうした現場の声を管理者はしっかりと受け止め、十分に検討することも大切です。

リスクマネジメントを徹底するには、チームワークが欠かせません。
日々の業務に埋もれてしまわないように、現場の責任者を中心とした全員参加型のシステム(体制)を構築していくことが必要です。

〇事故予防委員会の充実

事故予防委員会では、事故事例、ヒヤリハットの分析を中心に行い、リスクコントロール・ダメージコントロールが機能しているのかを確認する必要があります。
また委員会は、防止対策はもちろん、事故発生時においても中心的役割を担うことになります。
そのため、委員長には、経験が豊富でアセスメント能力や判断能力の高い職員を選出し、委員会メンバーにも、直接入居者とかかわる現場の職員を加えることが望ましいでしょう。

事故が起きたときの職員の連携は、特に大きなポイントとなるので、さまざまな事故事例を議題に挙げ、シミュレーションしておくことが重要です。
さらに、以下のようなことを委員会で確認、決定し共有しておく必要があるでしょう。

  • ●家族への連絡は誰が行い、その後の説明は誰がどのタイミングで行うか
  • ●行政への事故報告は誰がどのタイミングで行うか
  • ●記録をする項目に漏れはないか、事故報告書の書式は準備されているか

まとめ

老人ホームの運営において、リスクマネジメントは現場だけが取り組むものだと考えている管理者は多くいます。
しかしリスクマネジメントは本来、管理者の業務であり「現場の担当者が注意すれば防げる」と考えているようでは時代遅れです。
ヒューマンエラーをいかに予防できるかを常に考え、現場のささいなヒヤリハットを残さず拾い、予防につなげる仕組みを構築していくことが求められます。

また、こうした取り組みを利用者や家族にも伝えていくことで、リスクマネジメントに対する理解と協力を得ることも可能になるといえます。
利用者の自立を支援しながら利用者の安全を守るということは、決して容易なことではありません。
しかし、管理者があらかじめ基盤をつくり、解決のための道筋を用意すれば、リスクマネジメントに対する職員たちの意識もおのずと高まり、思わぬ不幸な事故を減らすことにつながります。

参考:
厚生労働省 人口動態統計年報 主要統計表(最新データ、年次推移) 平成23年度 (平成30年1月9日引用)

社団法人 全国有料老人ホーム協会 介護事故発生ゼロをめざす-ケアリスクマネジメントハンドブック 平成14年度版  (平成30年1月9日引用)

厚生労働省 特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン 平成24年度版 (平成30年1月9日引用)

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