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  • 高木雪絵

    公開日: 2019年08月29日
  • 入居者さんのケア

軽度認知機能障害の症状とは?介護施設のスタッフが知っておきたいサインを解説

「介護施設に入ると認知症になる」というイメージをお持ちの方も少なくありません。
利用者さんを施設でお預かりする以上、認知症を発症しないようにできる限りのケアをしていきたいところです。
今回は、認知症予備軍といわれる「軽度認知機能障害」の症状やサインについてお伝えしていきます。

軽度認知機能障害の症状やサインを知る

軽度認知機能障害とは

軽度認知機能障害とは、「認知症の一歩手前」や「認知症の予備軍」とも称される障害であり、近年注目を集めています。
英語では「Mild Cognitive Impairment」と書き、日本語ではその頭文字をとって「MCI」と記すことも多いです。
軽度認知機能障害の有病率に関しては、国内外で報告が散見されます。
報告によってデータにはばらつきがありますが、65歳以上では有病率が15〜25%ほどになると考えられています。
軽度認知機能障害になると、認知症に進行する場合もあれば、正常に戻る場合もあります。
こちらも研究報告によってデータに違いはあるものの、それぞれの確率は概ね次のようになっています。

  • ●軽度認知機能障害→認知症へ移行する割合:5〜15%程度/年
  • ●軽度認知機能障害→正常に戻る割合が:16〜41%程度/年
    (認知症疾患診療ガイドライン2017より)

軽度認知機能障害から正常に戻る確率に関しては幅が広く、安定したデータとはいえません。
そして、単純に誤診を訂正した結果なのか、議論が必要という見方もあります。
ただ、正常に戻る可能性もあるため、認知症の発症を防ぐような生活習慣を持つことは欠かせません
なかには認知症に進行する人もいるため、この不確実性をふまえて備えていくことが大切になります。

軽度認知機能障害のサイン・症状

軽度認知機能障害のサイン・症状
軽度認知機能障害のサイン・症状
軽度認知機能障害のサイン・症状

軽度認知機能障害のサインや症状を知っておくと、介護施設の利用者さんの異変に早く気がつくことができます。
軽度認知機能障害は、正常ではなく、さらに認知症でもない状態となりますが、具体的には次のような症状が挙げられます。

  • ●同世代と比較して、もの忘れの程度が強い
  • ●もの忘れが多いと自覚している
  • ●日常生活・ADLに大きな支障はない
  • ●もの忘れがない場合も、1つの領域に認知機能障害がある

軽度認知機能障害の方では、認知症の方と異なり、基本的なADLが自立している点が特徴的です。
入浴や着替え、買い物など、身の回りのことが自分でできるため、介護や支援が必要になりません。
軽度認知機能障害の方は、一見すると健常な高齢者のように見受けられるため、見過ごされてしまいやすいです。
もの忘れなどの記憶障害があればサインとしてとらえやすいですが、実行機能など、特定の認知機能が1つ低下するタイプの方もいます。
認知機能の低下が、日常生活において次のような行動・サインとなって現れることがあります。

活動 行動や反応の例
料理 順序立てて作業ができなくなり、手の込んだ料理を作れなくなる、同時進行ができなくなる。
コミュニケーション 最近の会話や出来事は覚えていても、詳しい内容が思い出せなくなる。
作業・仕事 遂行能力・集中力が低下し、以前よりもミスが増える。意欲が低下して、新しいことを覚えない(覚えようとしない)。

たとえば、以前は手際よく複数の料理を作っていたのに、簡単なものしか作らなくなったり、段取りが悪くなったりしていれば、認知機能の変化を疑うことができます。
もとから料理をしない人であれば、一概に異常とはいえないため、その人の過去の生活や行動を基準に変化をとらえてみるとよいでしょう。
介護施設に入居されている方の場合、料理の評価は難しいかもしれませんが、ほかの活動にも段取りや効率の悪さが現れることはあります。
介護施設の利用者さんの様子に、もの忘れの多さ、特定の認知機能の低下といったサインがないか確認してみてください。

軽度認知機能障害はMMSEで評価できる?

軽度認知機能障害はMMSEで評価できる?

介護施設でもよく用いられている認知機能検査に「MMSE(Mini-Mental State Examination)」があります。
施設によっては、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いている場合もあるでしょう。
軽度認知機能障害の評価において、MMSEなどの評価尺度では、感度・特異度が不十分とされています。
認知症のスクリーニングではMMSEが使えますが、仮にMMSEで正常なスコアだったとしても、軽度認知機能障害が隠れている可能性があります。
軽度認知機能障害の診断には、MoCA-Jなど前頭葉機能の検査を含む評価尺度が用いられますが、日常生活の様子からサインを見逃さないことも大切です。
軽度認知機能障害の診断においては、介護者からの情報も手がかりになる場合が多いため、日頃からしっかり記録をつけておきましょう。

介護施設の利用者さんの様子をしっかりチェック

介護施設の利用者さんの様子

介護施設に入ると、どうしても買い物や食事の支度といった作業が減り、認知機能を賦活する機会が減少してしまうことがあります
知らず知らずのうちに認知機能が低下し、軽度認知機能障害となり、それが認知症へ進行してしまうのは避けたいところです。
軽度認知機能障害の症状やサインについて知っておき、利用者さんの変化を見逃さないようにしましょう。

あわせて読みたい:
認知症の作業療法ですぐに使える!軽度・中等度・重度の段階別アプローチ
早期発見がカギ!認知症の初期症状を調べるために役立つ17のチェックポイント

参考:
認知症疾患診療ガイドライン2017.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html(2019年8月29日引用)

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

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