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  • 浅野茜

    公開日: 2019年08月30日
  • 入居者さんのケア

認知症の進行予防に効果的な回想法をレクリエーションに活用しよう

回想法は、これまでの人生を振り返ることで自己肯定感を生み、精神を安定させるだけでなく、脳を刺激することで認知症の進行予防に役立つと考えられている心理療法です。
その回想法を、取り入れ方や行う際の注意点とともにご紹介します。

認知症の進行予防に回想法を活用

回想法を行うことで脳の血流の増加が期待でき認知症の進行予防に役立つ

回想法を行うことで発散を促し精神の安定が期待できる

回想法は、過去を思い起こさせるものや言葉などをきっかけに、若かりし頃を思い出すことによって脳を刺激して血流を増加させることを期待する心理療法です。
特に前頭前野の血流を促すとされています。
前頭前野は

  • ○思考する
  • ○ワーキングメモリー
  • ○記憶をコントロールする

などの働きを担っています。
さらに、前頭前野には脳全体に指示を出し脳のほかの部分を動かすといった機能も持っているため、ここを刺激してあげることが脳全体の活性化にもつながります。
回想法で昔のことを思い出し、それを言葉として表現する過程で脳全体が刺激されるのです

回想法を行うことで発散を促し精神の安定が期待できる

現在の日本では、回想法は認知症の進行予防のために行われていることが多いです。
ただし歴史的にみれば、もともとは老年期のうつ病を治療することを目的に始まりました。
昔の物や映像・写真などをきっかけに、若いころを思い出します。
同じ時代を生きたほかの高齢者とその時代について語ることで、また若い人に聞いてもらうことによって過去の自分を振り返ることができます。
高齢者同士は、過去のつらさや悲しさ、または幸せな感情に共感を得られます。
また、回想法の実施者に促され傾聴してもらうことで自分を表出することもできるのです。
不安や怒り、悲しみなどの感情は言葉にして表現することで、その苦痛は軽減され、精神の安定につながるとされています。
それを精神分析の用語では『カタルシス効果』と呼ばれており、回想法ではまさにこの効果が期待されるのです。

回想法の具体的な取り入れ方

回想法の具体的な取り入れ方

回想法を行うためには昔を思い出すきっかけを用意します。

  • ○流行した映画のパンフレット(表紙の写真など現物ではなくてもよい)
  • ○古い街並みの写真や絵
  • ○昔よく使われた道具

など。

このきっかけを提示し、それについて高齢者に話をしていただきます。
このとき重要になるのが聞き手の態度です。
聞き手はただ高齢者の話を聞くだけではなく、受容的な態度で共感しながら聞く必要があります
高齢者が話をしたいと思えるようにするのです。
時には発言の少ない高齢者に話をふる必要もあります。
また、相づちなどで表現することで話を聞いていることを表しさらに話がしたいと思ってもらえるようにしましょう。

●私が昔を思い出してもらうきっかけとして実際に使用したものの例その1:シルクハットとステッキ

私は美空ひばりさんの幼少期を思い出すきっかけとして、シルクハットに見立てた黒色のハットと新聞紙で作ったステッキを使用したことがあります。
このアイテムは美空ひばりさんが12歳の時に主演を務めた映画『悲しき口笛』で使っていたアイテムです。
『悲しき口笛』は1949年に公開された映画です。
このアイテムをきっかけに1949年ごろのことを思い出してもらいました。
その当時いくつだったのか?どこに住んでいたのか?という質問を皮切りに、その当時を思い出していただきました。
当時20代前半だった方が多く、働き盛りだったという話や戦後でまだまだ生活が大変であったという話を引き出すことができました。

●私が昔を思い出してもらうきっかけとして実際に使用したものの例その2:『巨人・大鵬・卵焼き』

『巨人・大鵬・卵焼き』は1960年代の流行語です。
子どもたちが、

  • ○野球チームの巨人
  • ○相撲取りの大鵬
  • ○卵焼き

が好きであるということ、またそれぞれが時代の象徴であるとされてはやった言葉です。
これらの写真を用意しました。
この時代には30代前後だった方が多く、子どもを育てるのに一生懸命だったという話で盛り上がりました。

回想法を行う際の注意点

回想法を行う際の注意点

回想法を行う際にはいくつか注意していただきたい点があります。

  • ○無理に話をしてもらおうとしない
  • ○対象者の生活歴などを事前に確認しておき、触れてはいけない事柄などがないかどうかを確認してから行う
  • ○間違いを指摘しない
  • ○回想法で聞いた話を他言しない

という点です。
回想法は、昔を思い出していただき、それについて自然に話ができるように導いていく心理療法です。
無理に話をしてもらっても心に負担が生じてしまいます。
声かけや傾聴する態度を示して話してもらえるように促し、話しが引き出せなくても無理強いしないようにしましょう。
人には触れてもらいたくない過去もあります。
事前にこれまでの生活歴を確認し、話題に出してはいけないような事柄がないかどうか確認しておいてください。
また、間違いを指摘する必要もありません。
実際に確認済みの情報とは異なる話の内容だったとしても問題はありません。
なぜなら回想法で必要なのは、思い出そうとするプロセスとそれを言葉にして表現することが重要だからです。
そして、回想法を行うなかで聞いた話は他言しないようにしてください。
回想法の中で知りえた情報はプライベートな内容です。
介護職員には守秘義務などもあり、安易に話してしまったりはしないと思いますが、他言してほしくないのは高齢者同士でも同じこと。
他言しないから安心して話をしてもらいたいこと、他言しないでもらいたいことの2点は回想法をはじめる前に必ず開始前に伝えてください

取り入れやすいものから取り入れてより効果的な時間を過ごしましょう
レクリエーションの内容を決める際に悩んでしまう介護職員の方は多いのではないでしょうか。
それはより良いレクリエーションの時間を提供したいと思うが故のことでしょう
回想法は正確に行うには、知識や技術が必要とされる心理療法ですが、勉強しながら少しずつ取り入れることもできます。
注意点だけは意識しながら、手に入れやすいきっかけを利用することで始めてみてはいかがでしょうか。

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参考:
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット  回想法.
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/kaisou.html(2018年7月2日引用)
高齢者音楽療法セッションの回想法における刺激と反応の可能性とその類型.
https://www.seitoku.ac.jp/daigaku/music/bltn/bltn12/harasawa12.pdf(2018年7月2日引用)
Wikipedia カタルシス.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%B9(2018年7月2日引用)

  • 執筆者

    浅野茜

  • 大学にて、社会福祉主事任用資格を取得後、デイサービスにて勤務。
    3年後、スキルアップのために介護付き有料老人ホームへ転職しました。
    その間に、介護福祉士・介護支援専門員の資格を取得。その後、目標だったケアマネジャーとして勤務しました。
    保有資格等:社会福祉主事任用資格、福祉住環境コーディネーター、介護福祉士、保育士、介護支援専門員

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