褥瘡予防におけるリハビリ職の関わり方とは?ポジショニングやシーティングをうまく実践するコツ
褥瘡を予防するためにはベッド上のポジショニングや座位に対するシーティングが重要になります。
しかし、重要性はわかりながらも、どのように実践したり、他職種に定着させればいいのか悩むリハビリ職は多いのではないでしょうか。
そこで、今回はリハビリ職としてどのようにポジショニングやシーティングに関われば良いのか、具体的な実践例や褥瘡予防の結果を出すためのコツを紹介します。
目次
身体機能や姿勢・動作を評価して他職種にアドバイスしよう
リハビリ職がポジショニングやシーティングを実践する強みは、心身機能や姿勢・動作の評価ができる点です。
以下に具体的な実践例を紹介します。
●身体機能の評価をポジショニングやシーティングに生かす
拘縮や筋緊張の亢進が進み不良姿勢が強まると、褥瘡のリスクが高まります。
そのため、関節可動域や筋緊張の状態を把握して、ポジショニングやシーティングを調整したり、適切な姿勢が作れているか適宜確認したりすることで、リハビリ職としての専門性を生かすことができます。
ポジショニングであれば、実際にクッションを当てた時の緊張状態を評価しながら、うまく除圧できているか確認します。
シーティングであれば、仰臥位の状態で下肢や体幹の可動域や形態測定をしたり、座位でスタッフが支持しながら筋緊張の変化を評価したりして、車椅子や座位でのシーティングを調整していきます。
また、呼吸や循環状態を評価しながら、座位姿勢を調整して離床を促すことで褥瘡予防ができます。
そのため、重度介助が必要な利用者さんでも、リハビリ職が呼吸や循環状態を評価しながら、シーティングをして適切な離床を促すことが重要になります。
●姿勢や動作の評価で褥瘡予防のポジショニングやシーティングを工夫する
身体機能の評価に加えて、姿勢や動作の評価をすることは褥瘡予防に重要です。
たとえば、座位で骨盤の後傾が強まっていると、仙骨の褥瘡リスクが高まるため、リハビリ職が姿勢評価をして修正する必要があります。
ポジショニングにおいても、体のねじれを無くして、安楽な姿勢を取ることが褥瘡予防のポジショニングの基本ですので、仰臥位でも側臥位でも姿勢を評価して、余計な緊張が入っていないかや部分的な圧がかかっていないかをチェックすることが重要です。
また、動作の評価では、ベッド上での動作ができるのであれば、動きを妨げるようなポジショニングは逆に褥瘡のリスクを高めます。
しっかりベッド上や座位での動きを評価し、自分で体位変換や座り直しができれば、それに合わせてポジショニングやシーティングを見直していく必要があります。
資料作成や生活現場に積極的に介入して取り組みを定着させよう
リハビリ職が心身機能や姿勢・動作を評価して適切なポジショニングやシーティングを考えても、利用者さんに関わる時間が長い介護職や看護職に実践してもらえなければ、褥瘡予防の効果は得られません。
そのため、資料の作成をしたり、積極的に介護現場に介入したりして、他職種と一緒にポジショニングやシーティングを定着させるようにします。
●「管理表」や「解説入りの写真」を作成
褥瘡予防・管理ガイドラインでは、褥瘡を予防するためには、2時間以内での体位変換を推奨しています(推奨度B:根拠があり行うよう勧められる)。
そのため、実際に時間通りに体位交換とポジショニングの修正ができているか、表で管理できるようにしましょう。
また、ポジショニングやシーティングは言葉で説明したり、一度手本を見せたりしただけでは、実践しにくいです。
そこで、以下のようなポイントで図や写真を使って確認できる資料を作成しましょう。
- ○絵より写真を使用する(利用者さんやご家族の同意を得て)
- ○注意点を丸で囲んだり、色付けして目立たせる
- ○解説をわかりやすく付け加える
絵でポジショニングの資料を作る場合もありますが、できれば正しい方法をした写真を撮影して、資料を作ったほうが正確に伝えることができます。
確実に守ってほしいポイントは目立つように目印をつけると実施し忘れを減らすことができます。
また「なぜクッションを入れるのか」や「どの部位を除圧する必要があるのか」、シーティングで注意するポイントなどは文章で解説を加えることで、理解が深まり他職種が実践しやすくなります。
その際はリハビリ職が使用する専門用語はなるべく避けるようにしましょう。
●現場に積極的に介入して介護方法も助言
リハビリ職が他職種にポジショニングやシーティングを伝える場合は、できるだけ現場に一緒に介入するようにしましょう。
いくら良い資料を作成しても、渡して終わりでは実施するほうもうまく意図を理解できなかったり、細かい部分が伝わらなかったりします。
そのため、以下のような現場に積極的に介入して、一緒にポジショニングやシーティングの調整を実施していくことが重要です。
ポジショニングの介入場面の例 | シーティングの介入場面の例 |
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・定時の体位変換 ・オムツ交換 ・点滴などの処置後 ・離床後に臥床する場面 など |
・食事場面 ・トイレ介助時 ・離床直後 ・入浴後 など |
他職種と一緒に介入する場合は、介助方法への助言もしましょう。
ポジショニングやシーティングを考えても、介助方法で筋緊張を高めたり、皮膚のずれを生じさせたりすると褥瘡リスクを減らすことができません。
そのため、実際の介護現場で一緒に介助をしながら、褥瘡予防につながるアプローチを協働していくことが効果的です。
一方的なアドバイスはNG!他職種の意見を聞くポイントを紹介
リハビリ職が積極的にポジショニングやシーティングを進めようとしても、うまく他職種と連携できていないという悩みをよく聞きます。
他職種の強みを理解して、しっかり意見を聞くことが重要です。
●褥瘡予防に関わる職種の強みを理解しよう
施設では多くの専門職が褥瘡予防に関わります。
以下の表を参考にそれぞれの強みを理解して、専門性を発揮することで効率的で効果的な褥瘡予防ができ、結果としてポジショニングやシーティングの効果を高めることが大切です。
褥瘡予防に関わる職種 | 専門性を生かした強み |
---|---|
医師 | 創部の状態の評価と治療法の指示や処置の実施が可能 |
看護師 | 創部の状態の評価と処置が可能 |
介護職 | 24時間の生活活動や状態の把握が可能 |
栄養士 | 栄養状態の把握が可能 |
●他職種の意見を聞いてポジショニングやシーティングに反映
リハビリ職とは異なる専門性を持っている職種の特性を理解できれば、各職種の意見をしっかり聞いてポジショニングやシーティングに生かすようにしましょう。
例えば、栄養状態の悪い利用者さんにいくら適切なポジショニングを実施しても、体圧分散寝具を考慮しなければ、褥瘡は発生・悪化してしまいます。
医師や看護師には利用者さんの創部の状態を聞き、それを踏まえて一緒にポジショニングやシーティングを考えていくことになります。
また、介護職はもっとも多くの場面で利用者さんに接しており、発赤の有無などにいち早く気がつくことも少なくありません。
夜間どのような活動性があるかで、ポジショニングが活動を妨げる要因になることなどは介護職に聞かなければわからない情報です。
以上のように、多職種協働でのポジショニング・シーティングを実施する意識を持つようにしましょう。
※介護職とうまく連携する方法は、「介護スタッフとうまく連携するために理学療法士・作業療法士が知っておきたいポイント」で詳しく紹介しています。
褥瘡予防のポジショニング・シーティングはいかに多職種で取り組めるかが重要
リハビリ職は姿勢や動作を評価できる専門家としてポジショニングやシーティングで重要な役割を持っています。
しかし、それだけでは褥瘡予防に十分な方法を実践できません。
褥瘡に関しては、病気や疾患、皮膚や栄養の状態、普段の生活様式など多くの要因が関連しています。
そのため、医師や看護師、介護職など多職種でポジショニングやシーティングを考えることが重要です。
リハビリ職としての専門性を十分に発揮しながら、チームの一員としての役割を考えて褥瘡予防につなげましょう。
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級