介護・高齢者施設が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

医療従事者向け 介護プラス

介護従事者は必読!世界的に実践されている「リアリティ・オリエンテーション」の効果をひも解く

介護施設などでは、認知症の方に対する関わりのなかで、「リアリティ・オリエンテーション」を取り入れていることも多いのではないでしょうか?
慣習的に何気なく行われていることも多いアプローチ方法ですが、実はその効果を検証した文献も存在します。
今回は、リアリティ・オリエンテーションという、どの施設でも行っている取り組みの効果や応用方法をお伝えしていきます。

リアリティ・オリエンテーション

まずは知りたい!リアリティ・オリエンテーションってなにをするの?

認知症の方に対する非薬物療法の一つとして、世界的にもリアリティ・オリエンテーションは広く用いられています。
たとえば、次のような声かけを通して、認知症の方が「現実を正しく認識」できるように支援することを目指していきます。

  • 「今日は4月3日ですね」
  • 「今日は天気が良く、暖かいですね」
  • 「もうすぐ節分ですね」

日付・時間・場所などに関する質問や確認を繰り返し、認知症の方に現実感を持ってもらうことを目的とします。
そのため、「現実見当識訓練」とも呼ばれています。
複数の利用者さんと実施する、レクリエーションなどの場面で導入されることが多いですが、毎日の関わりのなかでいつ用いても問題ありません。
たとえば、介護職の方が利用者さんの食事・着替えなどの介助をしながら、さりげなく会話に取り入れることも効果的でしょう。
こちらも毎日の積み重ねがとても大切になります。
認知症の方は、今自分がどこにいるのか、季節はいつか、時間は何時かといった現実認識が乏しくなっていきます。
わからないことだらけの環境で過ごすことは大変不安ですし、それが一因となり認知症がさらに進行していく恐れもあるのです。
外界に対する誤った認識を改善し、行動・感情の問題が生じないように働きかけていくことが望ましいでしょう。

リアリティ・オリエンテーションの効果を文献からひも解く

リアリティ・オリエンテーションに関する最初のシステマティックレビューとしてSpectorら(2000)の報告がよく知られています。
このレビューでは、43の研究報告から効果を検討しています。
ただ、このレビューで用いられた文献では、介入の期間・方法・効果判定の指標にばらつきがあったことには留意すべきです。
実際の例としては、次の表に示す通り介入期間・内容などに違いがあったのです。

文献名 介入期間・頻度 内容
Baines et al.(1987) 30分・週5日
4週間実施
RO board
多感覚刺激
Gerber et al. (1991) 60分・週4日
10週間実施
RO board
運動
食事の準備
ディスカッション
Hanley et al. (1981) 30分・週4日
12週間実施
RO board
時計
カレンダー
地図
ポスター

(表中のRO boardは、日付や時間などが書かれたボードのこと)

これらの研究では、介入期間や頻度も違えば、実際に内容として含まれるものによっても異なります。
日付や時間などが書かれた「RO board」を用いてアプローチをしていることは共通していますが、運動の有無をはじめとするほかの内容には、文献によって違いがあります。
このように統制されていない部分もあるため、効果があると断定することは難しいのです。
日本神経学会の「認知症疾患治療ガイドライン2010」では、リアリティ・オリエンテーションについて、推奨グレードはC1(科学的根拠はないが、行うように勧められる)と設定されています。
ただ、2005年にOnderらが、薬物療法との併用に着目して、研究成果を発表しました。
このなかでは、アルツハイマー病の方のMMSEなどのスコアに向上が認められたとの報告が発表されています。
このように、現実見当識訓練はそれ単独で用いるというよりも、ほかの治療法との組み合わせによる相乗効果が注目されてきている傾向にあります。
学術的にはそのようにいわれていますが、薬物療法と非薬物療法の併用により、効果的なケアを実現できるということは、多くの人にとってイメージしやすいのではないでしょうか?

筆者が重要だと感じるポイントは、「五感」を刺激すること

「五感」を刺激すること

先にご紹介した文献のなかにも「多感覚刺激」というキーワードがあったように、認知症の方には豊富な刺激を入力することがとても大切になります。
普段のケアの質をさらに高めるとしたら、筆者は認知症の方の「五感を刺激すること」が大切だと感じます。
「桜が咲く季節になりましたね」といった声かけも現実感を持つためには有効ですが、もっと全身で現実を感じていただくための対応も必要になるでしょう。
声かけだけだと聴覚的な情報だけが手がかりとなりますが、たとえば桜のイラストをお見せしたり、実際に桜の木が見えるところまでお連れしたりすることで、「視覚」に関する情報も付加されることになります。
桜の花の香りを嗅いでもらう、実際に手で花を触ってもらうといった関わりによって、「嗅覚」や「触覚」も刺激できるかもしれません。
このように、複数の刺激を組み合わせて、認知症の方が理解しやすい形で情報を提示し、現実見当識の訓練を行っていくことも効果的だと感じます。
実際、筆者の経験ではレクリエーションのなかで「今日は何月何日ですね」と確認している場合とくらべ、さまざまな刺激が伴う場合のほうが、利用者さんの反応が良くなる例が多いことを実感しています。
筆者の場合は、リハビリ職として介護施設で働いていたため、介護スタッフとくらべて利用者さんと関わる時間は短かったと思います。
ほんの1〜2分など限られた時間ではありましたが、リハビリが終わったあとに、施設のエントランスを出て利用者さんと一緒に外の空気を吸うこともありました。
この効果を科学的に証明することは難しいのですが、利用者さんの覚醒が上がる・表情が良くなることはしばしば経験しました。

まとめ

介護施設などでは、レクリエーションのときだけ日付や場所の確認を行っていることも多いかもしれません。
しかし、普段の関わりのなかで、ちょっとしたスキマ時間にも実践できるものなのです。
介護やリハビリの合間に、何気ない季節や場所の話を取り入れていくと、利用者さんの認知・行動レベルで恩恵がもたらされることがあります。
認知症の方にとって現実を感じる手がかりが増えるよう、できるだけ「五感」を刺激することを意識しながら、毎日のケアにあたってみてはいかがでしょうか。

関連記事:
計算・音読などの学習プリントは効果アリ?認知症の方を対象とした文献からその真相を探る
介護現場で対応に苦慮する認知症の方の睡眠障害…光療法のエビデンスを調査
認知症対応、本当にそれでいいの?今こそ見直したい本当の対応術

参考:
Spector A, Davies S, et al.: Reality orientation for dementia: a systematic review of the evidence of effectiveness from randomized controlled trials. Gerontologist40: 206-212, 2000.

Onder G, Zanetti O, et al.: Reality orientation therapy combined with cholinesterase inhibitors in Alzheimer’s disease: randomized controlled trial. Br J Psychiatry187: 450-455, 2005.

日本神経学会 認知症疾患治療ガイドライン2010(2018年1月21日引用)

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)