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新型コロナウイルス

高齢者が新型コロナウイルスに感染したら…?予防法や対処をわかりやすく解説

2019年末頃から中国武漢市を中心に爆発的な拡がりを見せている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
高齢者が発症すると重症化しやすいとのこと。
国内でも感染者が増え続けている今、介護施設などでも高齢者への対策が必要となっています。
そこで今回は、施設でできる新型コロナウイルス対策や感染が疑われる利用者さんにどう対応すべきか詳しく解説します。

新型コロナウイルスは適切な感染対策を講じれば、感染リスクを低くすることができます。

新型コロナウイルスの特徴とは?

新型コロナウイルスの特徴とは

現在、世界を震撼させている新型コロナウイルス感染症。
中国武漢市が発祥とされ、中国国内の感染者は約77,000名。
そのうち、命を落とした方は2,600名以上にのぼるとのこと(2020年2月25日現在)。
日本国内での感染者も156名となり、1名の死者が出ています。(※1)
同じく中国で2003年に発生したSARS(重症呼吸器感染症)の感染者・死者を既に大きく上回り、現在のところ収束する気配はありません。
新型コロナウイルスについては現時点でははっきりわかっていない部分も多いですが、その特徴について詳しく見てみましょう。

●どのような症状が現れる?

新型コロナウイルス感染症では、次のような症状が現れるとされています。(※1)

  • ○発熱(37.5度以上)
  • ○咳
  • ○呼吸困難感
  • ○倦怠感

これらの症状は、一般的な風邪やインフルエンザなどでもよく見られる症状です。
このため、中国への渡航歴がある方、帰国者と接触があった方でなければ新型コロナウイルス感染症を疑うのは難しいかもしれません。
しかし、国内で新型コロナウイルス感染症患者の治療に当たる医師チームの見解によれば、非常に強い倦怠感を訴えること、微熱が長く続くことが印象的とのことです。
また、「肺炎」ばかりに注目が集まっていますが、下痢や嘔吐などの消化器症状がある患者さんも少なくないようです。
(※2)
やはり、一般的な風邪などとは少し違った症状の現れ方であるケースが多いと考えられます。
一方で、全く症状がない方も新型コロナウイルスに感染していることが判明するケースも多々あり、症状の現れ方は個人差が大きいことが示唆されています。

●どのように治療する?

残念ながら、新型コロナウイルスの治療法は現時点では確立されていません。
一説によると、抗HIV薬に一定の効果があるとされています。
しかし、その効果は確実といえるものではありません。
日本国内でも抗HIV薬の投与が行われるケースもありますが、現状では酸素吸入や人工呼吸器による呼吸管理、脱水に対する補液治療などの対症療法が主体となっています。

新型コロナウイルスの感染経路は?

新型コロナウイルスの感染経路は

新型コロナウイルス感染症はウイルスが体内に入り込むことによって発症します。
つまり、ウイルスの侵入を予防することができれば発症を防ぐことができるのです。
そのためには正しい感染対策を徹底することが大切となります。

新型コロナウイルスがどのように感染するのか詳しく見てみましょう。

●どのような経路で感染するの?

新型コロナウイルスがどのような経路で感染するのか、多くの方が気になることでしょう。
しかし残念ながら、現時点で新型コロナウイルスの感染経路は特定されていません。
感染の広がり方などから、「接触感染」と「飛沫感染」を起こすとの考え方が強いものの、確実とはいえないのが現状です。(※3)
「接触感染」とは、感染者から排出されたウイルスが付着したものに触れ、その手で鼻や口を触れることで体内にウイルスを取り込んでしまう感染経路のことです。
新型コロナウイルスに限ったことではありませんが、感染症が流行しているときはドアノブや電気スイッチ、つり革などさまざまな場所に病原体が付着している可能性があります。
一方、「飛沫感染」とは、感染者の咳やくしゃみのしぶきを近くにいる人が鼻や口から吸い込んでしまう感染経路のことです。
しぶきの中には病原体が多く含まれているため、しぶきを吸い込むと病原体も同時に取り込んでしまうことになるのです。
しかも、しぶきは思いのほか遠くまで飛び散るもの。
くしゃみのしぶきは半径2mの範囲にまで広がるとされています。
このため、通常の社会生活を送っていれば、どこにいても感染する機会はあるのです。

施設ではどう対策する?高齢者が新型コロナウイルスに感染したら…?

日本国内では、既に新型コロナウイルスの二次感染が生じていることがわかっています。
つまり、中国への渡航歴、帰国者との接点がなくても街中で感染してしまう可能性があるのです。
しかも、新型コロナウイルスは感染しても症状がないまま、ほかの方へ感染を拡げるケースもあるとされています。
つまり、介護施設内であっても職員や面会家族の方から高齢者へ感染が拡がってしまうことは十分にあり得るということ。
施設内でも十分な感染対策が必要です。
また、万が一、施設内で新型コロナウイルスが疑われるような症状のある方が出た場合にどのような対処をするべきか確認しておきましょう。

●どのような感染対策をすればいいの?

どのような感染対策をすればいいの

現在のところ、新型コロナウイルスは「接触感染」や「飛沫感染」をするとされていますので、次のような感染対策を行いましょう。(※3)

○手洗い・消毒

接触感染を予防するには、手に付着したウイルスを体内に取り込んでしまう前に取り除くことが大切です。
そのためには、小まめな手洗いとアルコール消毒が有効とされています。
外出先から帰宅したときだけでなく、小まめな手洗いとアルコール消毒を徹底しましょう。

○マスクの着用

飛沫感染はマスクを着用することである程度予防することが可能です。
ウイルスが含まれるしぶきのサイズはマスクの繊維の隙間より大きいため、体内への侵入をブロックする効果があるとされています。
鼻と口をしっかり覆い、できるだけ顔にフィットさせて着用しましょう。
ただし、WHOは近距離で濃厚な接触をしない限り、マスクには屋外での飛沫感染を予防する効果は薄いとの声明を発表しています。
新型コロナウイルスが猛威を振るう今、世界中でマスクが不足しているとされています。
もちろんマスクにはウイルスへの感染を予防する効果はありますが、マスク以外の感染対策も忘れずに実行することが大切です。
もちろん、マスクの買いだめなどに走ることがないよう、冷静な対策を行いましょう。

●冷静にいつも通りの感染対策を!

冷静にいつも通りの感染対策を

厚生労働省の見解によれば、新型コロナウイルスが空気感染する危険は低いとのこと。
接触感染や飛沫感染への上述した対策は、通常の風邪やインフルエンザと同じです。
中国などの悲惨な医療現場のニュースなどを目にすると「新型コロナウイルスは恐ろしい!」と思われがちですが、冷静にいつも通りの感染対策を徹底することが大切。
手洗いやマスクなど基本的な予防対策はもちろんのこと、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版」などを参考に感染対策の体制を見直してみましょう。
(※3)

●「疑わしい」ときはすぐに相談を!いきなりの受診はNG!

厚生労働省は、高齢者の方が次のような症状に当てはまると新型コロナウイルス感染症の疑いがあるとしています。

  • ○風邪症状や発熱(37.5度以上)が2日以上続いている
  • ○強いダルさや息苦しさがある

非常に漠然とした基準ですが、高齢者や何らかの基礎疾患がある方は発症すると重症化しやすいとのこと。
嘱託医などの治療を受けても症状が改善しない場合、悪化する場合は注意が必要です。
症状のある患者さんは個室で管理し、各都道府県に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に電話で相談しましょう。
地域の発生状況などから、感染している可能性があると判断されたときは検査が行われることとなります。
また、上のような症状が見られるとき、不安になっていきなり医療機関を受診するのはNGとされています。
感染を拡大させてしまう可能性もありますので、どのような対処をすればよいか相談センターや医療機関に電話で相談しましょう。(※3)

検査は希望すれば誰でもできるの?

ここ1、2カ月、筆者自身も「熱はないけど夜空咳が出る」、「何となくダルい」といった症状を訴えて新型コロナウイルスの検査をご希望される患者さんによく遭遇します。
上述したように、新型コロナウイルス感染症は症状がない方、非常に軽度な症状しか出ない方もいらっしゃいます。
このため、それらの症状だけでも新型コロナウイルスに感染している可能性は全くないわけではありません。
しかし、地域での発生状況、旅行歴などから明らかに新型コロナウイルスでないと考えられる場合は通常検査を行うことはできません。
現在、日本国内では一日に3,000名分の検査しか行うことはできないとされています。
もし、感染している可能性がきわめて低いという方すべてに検査をしてしまっては、本当に必要な方の検査が後回しになってしまう可能性もあるのです。
そのような事態を防ぐためにも、通常は感染の疑いが強いと考えられたときのみ検査を行うという流れになっています。

まとめ

一向に収束の気配がない新型コロナウイルス感染症。
特に高齢者は発症すると重症化するとされており、現段階では年齢が高くなるごとに致死率も上昇することがわかっています。
国内では二次感染、三次感染も起こっているため、いつ施設の利用者さんが新型コロナウイルスに感染するかわからないのが現状です。
しかし、新型コロナウイルスは適切な感染対策を講じれば、感染リスクを低くすることができます。

日ごろと同じく感染対策を徹底し、疑わしい症状のある利用者さんには今回ご説明した正しい対応を取るようにしましょう。

参考:
1)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月25日版).(2020年2月25日引用)
2)国立国際医療研究センター 当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告.(2020年2月25日引用)
3)厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け).(2020年2月25日引用)

  • 執筆者

    成田 亜希子

  • 大学卒業後8年目医師です。プライベートでは2児の母。
    一般内科医として勤務し、医療系フリーライターに転身し、4年の経歴を持ちます。
    保健所勤務経験もあり、医療行政にも精通しています。

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