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帰宅願望が強い認知症の入居者との関わり方。言葉がけが気持ちの変化を促す。複数の介護士が行っている言葉がけとは?

認知症の方に「家には帰れない」とそのまま伝えると、怒ったり不機嫌になったりされます。
どのように対応したらよいのか、現場で働いている介護士が、帰宅願望が強い入居者へかけている言葉や関わり方を紹介します。

帰宅願望が強い入居者へかけている言葉や関わり方

帰宅願望は自宅にいる認知症の高齢者にも表れる

帰宅願望とは、家に帰りたいという思いが強く、それを言葉に出すことです
慣れ親しんだ家に帰りたいと思うことは自然なことです。
施設に入居されるとすべての環境が変わるので、戸惑われることは当たり前です。
長年施設に入居されていながら「家に帰りたい」と言われる入居者の方は、昔に住んでいた故郷の家へ帰りたいという思いから「家に帰る」と言われているのかもしれません。
しかし、自宅にいても「そろそろ家に帰る」と言って徘徊される方もいます。
これは認知症になると、自分が自宅にいるという認識がなくなるためです。
娘の家にいたときが楽しかったという思い出があれば、それが帰宅願望となり、娘の家まで行こうと徘徊するのかもしれません。
ただ、徘徊する利用者には事故のリスクが高いため、玄関に見守りセンサーなどの対応が必要でしょう。

帰宅願望は日が沈むころに表れることが多い

帰宅願望は日が沈むころに表れることが多い

帰宅願望は、日が沈むころにでることが多いので、夕暮れ症候群ともいわれています
夕方が近づいてくるとそわそわして落ち着きがなく徘徊しだしたり、ブツブツと独り言を言ったり、「そろそろ家に帰る」ときかなくなったりします。
日が暮れるころは、あたりが少しずつ暗くなるため次第に不安になります。
認知症の高齢者は、脳の機能が低下して、眠くなる時間が夕方の6時ごろです。
そのころは施設職員の顔も認識しにくくなります。
帰宅願望は、そのようなことが原因で起きると考えられています。
つまり、夕方に「これから家に帰る」と施設職員に訴えることが繰り返されるのです。
しかし、帰宅願望は必ずしも夕暮れ時ばかりではなく、時には午前中に「これから帰る」と訴えられることがあります。
人によって、帰宅願望の背景にある感情が異なります。
徘徊するときは、「外にでてはいけません」と言うのではなく、しばらく一緒に歩いて話をします。
そのうちに、なぜ外にでたのか忘れてしまうので、「そろそろ戻りましょうか」と声をかけると素直に戻られるのです。

帰宅願望が強い入居者への関わりと言葉がけ

帰宅願望が強い入居者への関わりと言葉がけ

高齢者の帰宅願望の訴えに、現場ではどのように関わり、どのような言葉がけをしているのでしょうか。

●帰宅願望の人へは「帰れない」と否定的な言葉がけはNG

「家に帰りたい」と言われた際に「家へは帰れません」と職員が言うと、ますます不安が助長されて落ち着きがなくなります。
「帰れない」という言葉を使わないで、「今日はもう暗いからここに泊ってくださいね」と伝えると、「泊れる部屋はあるの」と尋ねられ「ありますよ」と答えると安心されます。

●施設で暮らすことが楽しいと思える言葉がけをする

施設ではさまざまなイベントがあること、ごちそうが毎月食べられること、友達ができることなど、施設で暮らすことは楽しいと思えるように伝えます。
また、その人の趣味や仕事に関する話をしながら、一緒に手作業などを行います。

●寂しいことによる帰宅願望はほかの入居者との関わりを増やす

1人で部屋にいると心細くなり「家に帰る」と言われる方がいます。
できる限り居室より人が集まるところでの時間を増やし、ほかの入居者の方と雑談することで施設での生活を楽しいものにします。

夕暮れ時には何度も居室からでてこられて1人でいる不安を訴えられるので、そのたびに「私たちが見回っているから大丈夫ですよ」と声かけすると安心されます。

●居室に家に置いてあるものを置く

昔の家族写真やぬいぐるみ、大切にしていた置物など、家にあったものと同じものを居室に置くことで、居室がなつかしい空間となり自分の居場所だと感じられます。
たとえば、本人が作った人形、本好きな方なら読んでいた本を置く、一緒にすごした家族の写真を飾る、本人のフルート演奏を録音したテープを聴けるようにするなどです。
昔に作ったものや写真などを見ていただき、「ご自分で作られたのですね。上手ですね」「家にも猫がいるのですね」と居室を身近なものにして声をかけます。

●怖いと感じるものを居室から取り除く

居室が不快に感じることから帰宅願望につながることもあります。
騒音や光などの刺激は、認知症の高齢者にはストレスになる場合があります。

テレビの赤いランプやエアコンのランプ、空調の音を怖いと感じて夜に何度もコールを押す方がありました。
電源タップにさしたコンセントを毎回自分で消し、夜は空調をOFFにしています。
居室が安心して居られる場所であれば、「家に帰る」ことが「居室に帰る」と変化することもあります。

●入居者の思いに寄り添う

家のことや子供の話などを傾聴しているうちに落ち着いてこられる場合もあります。
「家に帰る」と訴えてこられたら、「家は○○町でしたね」とか「息子さんが2人おられますね」などと話を続けます。
家族がどうしているか、家はどうなっているのかなどが心配で帰宅願望として表われたので、感情に寄り添うことで安心感を与えます。

帰宅願望が強い入居者には思いに寄り添う言葉がけをしよう

誰でも自宅が一番落ち着く場所です。
自宅と全く違う環境の施設に入居したら、認知症の方であればパニックになり家に帰りたいと思うでしょう。
帰宅願望の訴えには、不安感を与える言葉がけをせずに、入居者の思いに寄り添い、施設での生活が楽しいと思っていただけるような言葉がけをすると落ち着かれます。
居室の様子が自宅と似ていて、写真など自宅にあるものが置いてあれば安心されます。

参考:
認知症介護情報ネットワーク 続・初めての認知症介護.
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/228/s_h25kaigokaisetsu_04.pdf(2020年3月11日引用)
言葉の力.
http://www.roushikyo.or.jp/cms/contents/seminar/201304/pdf(2020年3月11日引用)

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