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介護施設でもケアに役立てよう!音楽療法で期待できる効果を解説

介護施設をはじめ、さまざまな場で音楽療法が導入されています。
実際、音楽によって明るい気持ちになったり、暗い気持ちになったりと、心理面への影響が大きいことは実感できるものです。
今回は、心の安定をはじめとして、多様な目的で応用される音楽療法の魅力に迫ります。
音楽療法に興味のある医療や福祉の関係者はぜひ参考にしてみてください。

各分野で注目を集める「音楽療法」の魅力

「音楽療法」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
その名の通り音楽の力を使って、健康維持や心身の機能回復などに役立てていこうというものです。
音楽療法は「音楽」という、多くの人にとって親しみやすいものを活用するアプローチであることから、年齢や性別を問わず、さまざまな方に用いることができます。
日本では2001年に「日本音楽療法学会」という学術団体が設立され、学会の情報によると会員は5,500名を超えています。
また、音楽療法士という資格を取得した人は、2017年時点で日本全国に約3,000名いるとされています。
音楽療法士は楽器の演奏技術があるだけでなく、福祉・医学の概論、臨床心理学なども学んでいるため、医療や福祉の現場で専門性を発揮することができるでしょう。
音楽療法では、次のような観点から多様なニーズに応えることができます。

  • ●脳の活性化
  • ●リラクゼーション
  • ●心理的な安定
  • ●コミュニケーションの支援
  • ●感情の表出やコントロール
  • ●痛みの軽減

上記のように音楽によって得られる恩恵は、そのケースによっても異なりますが、さまざまな効果が期待できるといえるでしょう。
実際に音楽療法は病院や介護施設のほか、学校・健康教室・親の会などの場でも活用されています。

高齢者や子どもにも!音楽療法の効果・目的を探る

日本音楽療法学会のパンフレットでは、高齢者や子どものための音楽療法について紹介されています。
対象者によって、どのように目的を設定するのか、どのような効果を期待できるのかをご紹介していきます。

●高齢者に音楽療法を!認知症の方の「心の安定」にも

介護施設などでも定期的に音楽療法士を招いて、ピアノやギターの演奏に合わせて利用者さんが歌を歌ったり、音楽を鑑賞する例があります。
テレビなどでもそうしたシーンが取りあげられることが増えてきた印象です。
また、認知症の方に対して音楽療法を導入する病院・施設もあります。
認知症では、記憶や見当識の障害にまつわる症状を「中核症状」と呼ぶのに対し、徘徊・不安などの行動・心理状態に関する症状を「周辺症状(BPSD)」といいます。
音楽療法では、思い出の曲、懐かしの曲などを用いることで、心が安定するように導き、周辺症状が生じないようにアプローチしていきます。
認知症の方では、新しい記憶は定着しにくいですが、過去の記憶は残っていることも多いです。
そのため、昔からなじみのある音楽を活用することで、認知症の方の心理状態に良い影響があることはイメージしやすいでしょう。

●音楽の力で子どもの健やかな発達をサポート

子どもの医療・福祉においても、音楽療法は活用されています。
子どもの場合は、発達をサポートできるよう、音楽を介してアプローチをしていくことが大きな目標となります。
たとえば、自閉症の子どもが集団生活になじめるよう、音楽を介入のツールとして活用し、コミュニケーション能力を引き出していきます。
筆者は発達障がいの子どものリハビリを経験したことがありますが、子どもの場合は特に遊びや音楽を活用して関わっていくと効果が高まるという印象を受けます。
音楽や遊び自体に価値があるというよりは、それを利用して子どものスキルを高めることに「療法」としての意義があるといえるでしょう。

音楽療法の効果は科学的にも証明されている?

アメリカ国立衛生研究所のデータベースである「PubMed」で、音楽療法を意味する「music therapy」と検索すると、非常に幅広い分野の研究・症例報告がヒットします。
子ども・介護者・自閉症・アルツハイマー病・不安・うつ病などに対する効果を検証するべく、音楽療法の研究が行われているのです。
日本神経学会で公開している認知症疾患治療ガイドライン2010のなかでは、5つのランダム化比較試験(RCT)の結果を分析しており、認知症の方の周辺症状に効果があったことについて触れています。
認知機能や言語機能、感情面への効果が認められた例もありますが、日本神経学会の見解としては「方法論的に満足できるものではない」としています。
研究と一言で表しても、どれくらいの人数を対象に行ったのか、年齢や性別といった要因は統制されていたのかなど、さまざまな観点から評価されることになります。
これはあくまでも科学的に判断した場合の見解であり、音楽療法に効果がないと断定しているわけではありませんし、実施してはならないということでもありません。
症例報告レベルでは非常に多くの肯定的なエピソードが寄せられていますし、実際に現場では患者さん・利用者さんの反応が良くなると認識されていることも事実です。
高齢者や子どもをケアする医療・福祉の現場などでニーズがあると判断される場合、音楽療法士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

普段の生活のなかでも、テレビやショッピングモールなどさまざまな場で音楽が使われています。
音楽によって気分が明るくなったことがあるという方も多いのではないでしょうか?
「エビデンス」というレベルでは今後も調査が必要になる部分はありますが、音楽が持つ力を医療や福祉に役立てることに成功している例も多く存在します。
高齢者や子どもに関わる施設を運営している方は、音楽療法を活用したケアを視野に入れてみてはいかがでしょうか。

参考:
音で元気にする 音楽療法とは?(2018年1月26日引用)
認知症疾患治療ガイドライン2010(2018年1月26日引用)

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