お風呂に入ることは褥瘡の患者さんにとって良いことずくめ!正しい入浴方法を医師の視点より解説
骨が突出し、荷重がかかりやすい場所に発症しやすい褥瘡。
褥瘡の悪化する原因として、血流が悪くなり、傷が治らないことが挙げられます。
褥瘡の予防として入浴には3つの効果があります。
1つめは汚れを落とし、感染予防、感染部位の細菌を除去すること。
2つめは血流を良くすることで傷が治りやすくなるといった効果。
3つめは身体が温まることでリラックスできること。
そういった観点から、入浴は褥瘡患者さんには必要不可欠です。
今回は褥瘡患者さんの入浴のポイントについてお話しします。
目次
褥瘡ケアとして入浴介助を行う前の準備
まずケアを行う前に介助者は手を洗いましょう。
家庭で介護する場合は必須ではありませんが、介助者の手に傷がある場合には感染する可能性はゼロではありませんので、介助者への感染予防の観点から手袋はしたほうが良いでしょう。
また、衣服がぬれないように防水・撥水加工のあるガウンかエプロンを着ましょう。
お湯は適温で!40℃以上のお湯と長湯は避ける
ぬるいお湯だと風邪をひきやすいといわれますが、風邪をひきやすくなる原因は、熱いお湯で入浴した後に身体が冷えるからです。
熱いお風呂から上がった後に発汗し、その汗が蒸発することで皮膚の水分がなくなってしまい、それが皮膚の乾燥につながります。
心疾患や高血圧の既往がある方はヒートショック現象に要注意です。
特に動脈硬化性疾患の既往がある方は、寒い脱衣所にいた後に熱いお湯に入ると身体が急な温度変化に対応できず、血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳卒中を起こす可能性があります。
また、入浴中に徐々に身体が温まることで血管が拡張します。
そうすると急に血圧が下がることがあり、脳に血流がいかなくなり失神する可能性があります。
入浴前に必ず血圧を測り、脱衣所も暖めて適温のお湯で入浴し、意識状態に変わりはないか必ずチェックをしましょう。
また、長湯は運動と同様に体力を消耗するため、長時間の入浴は控えましょう。
低刺激性のボディーソープ、せっけんを使ってしっかり洗おう
入浴して褥瘡部位を洗浄することで、褥瘡や周りの痛んだ組織を取り除くことができ、細菌や汚れを落とすことができます。
香料や洗浄力の高いせっけんを使うと、皮膚の荒れや乾燥を助長してしまいますので、低刺激の弱酸性のせっけんおよびボディーソープを使用しましょう。
強くこすると表皮の損傷が起きるため、しっかり泡立てて優しく洗いましょう。
ごわごわとしたスポンジなどで直接患部をこするのはおすすめできません。
また、すすぎ残しがあると汚れがそこに残っていることになるため、感染の原因となります。
生理食塩水もしくは適温の(40℃以内)のお湯でしっかりすすぎましょう。
量は褥瘡面積×10ml以上が適切であるといわれています。
また身体を拭くときもごしごし拭くのはやめて、タオルで優しく押さえるように拭きましょう。
最後に、乾燥は傷、褥瘡の大敵です。
乾燥のため、かゆみが出て傷ができやすく、皮膚が弱くなるため、しっかり保湿をしましょう。
入浴で汚れをなるべく落とすために
入浴の大きな目的は汚れを落とし、付着している細菌を除去し、感染予防を行うことです。
清拭よりも入浴やシャワーのほうが汚れはしっかり落ちますので、可能であれば浴槽やシャワーでしっかり入浴しましょう。
入浴により感染が起きたりすでにある感染が悪化したりすることはほぼありません。
また、毎日もしくは2日に1回入浴するなど頻度が多ければ多いほど、褥瘡が治りやすいといわれていますので、できるだけ回数は多く入浴するように心がけましょう。
入浴の際の移動は大変ですが、その際、皮膚に擦過傷をつくってしまうと褥瘡の原因になるため、ずれが起きないような移動の工夫をしましょう。
褥瘡の原因についてはこちらの記事(正しい知識で褥瘡予防!医師が解説する褥瘡のメカニズム)で詳しく説明していますので、併せてご一読ください。
また、寝たきりになってしまった場合、横になったままシャワー浴ができるセレーノHK-3100G/Pがおすすめです。
セレーノは最小3.0m×3.0mの浴室に設置することができ、一般家庭の浴室でも設置可能です。
スイッチの操作だけでボディーソープを混ぜたお湯を流すことができ、洗髪ボウルもあるため、横になったまま入浴と洗髪が同時に行えます。
また、オープンバス型・開閉式担架のため掃除もしやすくなっています。
すでにジュストを利用している場合はジュストの担架も使えるモデルとなっています。
入浴の際、特浴用アクションパッドを褥瘡の現在起きている場所や褥瘡の起きやすい仙骨部位に使うと、ずれによる褥瘡の予防および保護になります。
特にこのアクションパッドはずれを吸収し、新たな褥瘡ができることや褥瘡の悪化を防ぎます。
また600kgまで荷重に耐えられるため、周囲に圧力が逃げて身体が沈んでしまい、硬い浴槽の底に身体が当たってしまう「底付き」を起こすことがありません。
ゲル素材ではなくAKTONという素材でできていますので、熱にも水にも強いです。
マイナス30℃から100℃までの温度変化に対応可能な耐熱性があり、水にも強い特浴用アクションパッドは浴槽で使用し、褥瘡が起きやすい部分を保護するのにぴったりな製品です。
褥瘡患者さんには入浴は不可欠。正しい方法で入浴をしましょう
褥瘡患者さんが入浴を行うことで3つの効果が得られます。
- ①汚れを落とすことで、感染予防になり細菌を除去する
- ②血流を良くすることで、褥瘡部分の傷が治りやすくなる
- ③身体が温まることで心身ともにリラックスする
正しい方法で汚れをしっかり取り、最後に保湿をしましょう。
入浴中に急変する可能性もゼロではありませんので、入浴中の血圧の変動や意識状態に気をつけましょう。
参考:
日本皮膚科学会 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―2:褥瘡診療ガイドライン(2021年1月13日引用)