現役音楽療法士直伝!介護現場で取り入れてもらいたい音楽療法!プログラム案をご紹介
介護の現場で働く方のなかには、音楽療法というセラピーに興味がある方もいるでしょう。
そうはいっても、実際はどのように行えばいいのかわからず、結局取り入れることができない方もいます。
そこで、介護スタッフさんに気軽に導入してもらえるような、簡単な音楽療法の実践方法をご紹介します。
音楽療法と音楽レクリエーションの違いは生演奏とプログラムの有無
音楽療法とまではいかないまでも、音楽を使ったレクリエーションに取り組んでいる施設はたくさんあります。
しかしそのなかで、音楽療法を実践している施設はほんの一握りです。
音楽療法は、
- ・アセスメント
- ・事前に決めたプログラム
- ・生演奏
- ・終了後の評価と記録
といった4つの要素で成り立っています。
アセスメントや終了後の評価や記録は、音楽療法に関わらず日々の業務でもこなしていることです。
では、プログラムを決めることと生演奏についてはどうでしょう。
プログラムは、音楽療法の目標に応じてつくるものです。
利用者さんの反応を含む、音楽療法全体の流れを予想しながら、プログラムを組み立てていきます。
また、生演奏も大切です。
生演奏での伴奏はCDなどとは違い、利用者さんが歌ったり演奏したりするテンポに、その都度合わせることができます。
また、演奏に慣れてきたら、プログラムに合わせてリズムを変えることもできます。
難しい曲を弾きこなす必要はありません。
まずは1、2曲を、利用者さんの歌声に合わせて弾くところから始めてみてください。
プログラムは起承転結を基本に組み立てよう
どんなレクリエーションでも、あらかじめ内容を決めてから始めますが、音楽療法でも事前にプログラムをつくり、それに沿ってセッションが行われます。
そしてこのプログラムは、目標を設定したうえで作成されます。
その目標とは、全体を活気づけることであったり、回想法を用いて利用者間のコミュニケーションを促すことなどです。
音楽療法士は、目標に応じたプログラムをつくっていきますが、組み立てやすいのが起承転結を意識したプログラムです。
具体的には、音楽で「起承転結」の流れをつくるのです。
●『起』で音楽療法の世界へ誘いましょう
まずは起承転結の『起』の部分です。
ここでは、多くの利用者さんにとってなじみのある曲を選びましょう。
歌い慣れた曲、知っている曲を使うことで、音楽療法への参加意欲を高めることができます。
童謡や唱歌なら、リズムもそんなには複雑ではなく、知っている利用者さんも多いのでおすすめです。
見当識訓練にもなりますので、季節に応じた歌だとなお良いでしょう。
●『承』で音楽療法の世界を盛りあげましょう
次は『承』の部分です。
ここでは、場の雰囲気を盛りあげられる曲を選びましょう。
童謡や唱歌に合わせて手足を動かす体操を取り入れたり、楽器演奏に取り組むのもいいかもしれません。
また、「よく耳にはするけれど歌ったことはない」曲を選ぶことも効果的です。
たとえば、テレビなどで流れている演歌などは、「メロディは覚えているけど歌うのはちょっと」と思われる曲が多くあります。
そのような曲を、みんなで歌ってみよう、チャレンジしてみようという形で使用するのです。
少しでも手応えがあると、利用者さんに達成感を味わってもらうことができます。
●『転』で少し雰囲気を変えてみましょう
『転』の部分では、少し流れを変えて全体にメリハリをつけてみましょう。
ここで少し静かな曲を選び、落ち着いた雰囲気に持っていくこともあります。
逆に、それまでのプログラムで使用してきた曲から、ガラリと雰囲気を変えてもいいです。
たとえば「起」と「承」が、体操や楽器演奏などの声を出さないものだったのであれば、「転」では歌いやすい歌謡曲などを入れれば、思い切り歌って発散することもできます。
●『結』で落ち着いた空気に戻していきましょう
プログラムの最後は全体を落ち着いた雰囲気に促していきます。
これは、プログラムが最後であることを伝えるためと、興奮した神経を落ち着かせるためのものです。
こちらもよく知られた童謡や唱歌のなかから選んでください。
何度か音楽療法を行うのであれば、最後の曲だけは毎回同じにしてみると、利用者さんも音楽療法の終わりを意識しやすくなります。
具体的なプログラム案をご紹介します
高齢者施設での音楽療法のプログラム案をご紹介します。
今回は、認知症の方、片まひの方、目が見えない方など、さまざまな方がいるグループを対象とします。
季節は冬です。
この条件でプログラムを作成します。
●音楽療法の世界に誘う『起』の具体案
まずは1曲目から3曲目までを『起』の部分とし、冬に関する曲を歌唱します。
1月なら「一月一日」(唱歌)、2月なら「まめまき」(童謡)、3月なら「うれしいひなまつり」(童謡)など、冬には行事にまつわる曲が多くあります。
また『冬景色』(唱歌)、『雪』(童謡)、『雪の降る街を』(歌曲)など、冬の景色を思い起こさせる曲もあります。
これらをはじめの部分に使います。
●音楽療法の世界を盛り上げる『承』の具体案
『たき火』(童謡)を使って体操を行うのもいいです。
「寒いので身体を温めましょう」といって活動を促すことができます。
12月でしたら『ジングルベル』や『赤鼻のトナカイ』などのクリスマスソングが、楽器演奏に使用しやすいです。
●雰囲気を変えたい『転』の具体案
ここでは、雰囲気を変えるためにこれまでの流れにない曲を用意しましょう。
冬だからといって、冬にまつわる曲ばかりを歌っていると、なんだか寒々しい気がしてきます。
春が近づいている時期であれば『春よ来い』(童謡)や『北国の春』(演歌)などの春の到来を感じることができる曲を歌ってみるのも良いでしょう。
●落ち着いた雰囲気にする『結』の具体案
音楽療法で脳が活性化するのはいいことですが、興奮したまま終わってしまうと、徘徊につながったり、不眠の原因になってしまうことがあります。
これを避けるためにも、また終わりを意識してもらうためにも、落ち着いたテンポの曲を使用しましょう。
『夕焼け小焼け』(童謡)や『ふるさと』(唱歌)は誰もが知っている曲なのでおすすめです。
まとめ
音楽療法は難しそうだと敬遠されたり、実は音楽レクリエーションなのに音楽療法と勘違いされることもあります。
本格的な音楽療法となると、やはり音楽療法士でなければ難しいかもしれません。
でも、楽器が得意、歌が好き、というスタッフがいたら、音楽療法のプログラムをお手本にして、利用者さんに楽しんでいただけるレクリエーションに役立ててみてはどうでしょうか。