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もう一度考えたい 介護施設における「身体拘束」の是非

みなさんは、初めて身体拘束を見たときと現在では、どのような印象の変化があるでしょうか。
初めは「なぜ縛り付けるの?」「早く取るためにはどうすればいいんだろう」と思っていたのに、いつの間にか身体拘束をすることが「普通のこと」になったりはしていませんか?
今回は、もう一度考えたい「身体拘束」について解説します。

身体拘束はすでに法律で禁止事項になっている!

身体拘束とは「本人の意思に関係なく体や行動の自由を制限すること」です。
よって厚生労働省は介護保険指定基準において、身体拘束を禁止としています。
禁止となっている具体的な行為の一例として、以下のような拘束があげられます。

  • ●立ち上がりのときにふらつきがあるため、机と椅子で体を固定し一人では立ち上がれない状態にする
  • ●徘徊しないように、ベッドに抑制帯で利用者さんを固定する
  • ●自分ひとりで降りられないように、ベッドを4点柵で固定する

同時に厚生労働省は「身体拘束の対象となっていない行為でも、言葉による拘束など、虐待的な行為があってはならない」としています。
言葉による拘束とは、たとえばふらつきのある利用者さんが立ちあがろうとしたときに「ダメ!」と言葉によって行動を制止しようとする行為も含まれます。
しかしこれらの行為は、多くの施設ではいまだに行われているのが現状です。
筆者は施設と病院の双方で、看護師として勤務していた経験がありますが、どちらも先ほどあげた例のような身体拘束を経験しました。
ではなぜ、厚生労働省から禁止されているにも関わらず、身体拘束がいまだに行われているのでしょうか。
それは厚生労働省が同時に「例外3原則」として、やむを得ない3つの状況を提示しているからです。
その例外3原則とは、以下の3つになります。

切迫性 本人またはほかの利用者などの生命または身体が、危険にさらされている可能性が極めて高い
非代替性 身体拘束を行う以外に代替する介護方法がない
一時性 一時的なものである

この3つの要件すべてを満たした場合にのみ、身体拘束が例外的に認められるとされています。
実際に筆者が勤務していた病院においても、身体拘束を行う必要があると判断するためには、

  1. 1)抑制チェックシートにて、切迫性、そして非代替性を確認
  2. 2)抑制を行うまえに、必ず本人または家族へ同意書をとる
  3. 3)抑制は必要最低限とし、1日のなかで抑制を外す時間を必ずつくる

この3つをクリアして初めて身体拘束を行えるようになっていました。
しかし、2014年に厚生労働省が行った調査によると、この「例外3原則」を知らないと回答した施設が、全体の約4%存在していることがわかっています。
つまり、正しい知識と理解がないまま、本来禁止されている身体拘束を行っている施設がいまだにある、ということになるのです。

拘束をやめると転倒・転落が増える!?

身体拘束が禁止されているにも関わらず、なぜ多くの施設がいまだに身体拘束を実行しているのでしょうか。
その理由として「拘束をすることで転倒・転落を防ぐ」ということがあげられます。
年齢を重ねた方にとって、転倒・転落はその後の人生を大きく左右するといっても過言ではありません。
よって介護従事者として、利用者さんの転倒転落リスクを減らしたいと思うのは、当然のことだともいえるのです。
実際に荒木(2015)は記事のなかで、こう記しています。
「私たちは、転倒・転落によって患者が傷つくというつらい経験をしています。それを乗り越えて、身体抑制をしない決断をするには勇気が必要でした」
荒木は抑制をしない看護を実行に移すため、5年という月日にわたりさまざまな取り組みを行いました。
そして、看護師を中心としたリハビリ専門職など他職種と連携し、拘束を減らす努力を続けたところ、患者さんたちの表情が威厳に満ちていることに気づいた、と記しています。
確かに身体拘束を中止するのは勇気がいります。
しかし、その取り組みを行うことで利用者さんに目に見えた変化が起こるのだとしたら、施設全体で取り組む価値は十分あるのではないでしょうか。

介護士だけではなく、医師や看護師など他職種との情報共有が重要!

身体拘束を外すためにまず行うべきこと。
それは、施設職員が一丸となって身体拘束をなくしていくという目標に向かって連携を取ることです。
井上は抑制をしないことで起こりうる病院内の転倒転落を防ぐため、転倒転落ワーキンググループを提案しています。
井上が提案しているそれぞれの職種による役割を以下に記します。

医師 総合的な判断
看護師 疾患管理
介護福祉士 日常生活状況、精神心理面
リハビリ専門職 運動機能面、動作・活動分析
薬剤師 薬剤面の評価

介護施設においても、介護福祉士以外にも看護師やリハビリ専門職の方など、多くの職種の方が働いています。
それぞれの専門性を生かし、利用者さんに対する情報を共有することで、身体拘束以外の転倒転落防止策を検討することができるのです。
同じ年齢や持病であっても、利用者さんの状況は個々に違います。
よって、個々の利用者さんの状況と転倒・転落要因で傾向をつかみ、対策を立てる仕組みを整えることが重要となるのです。

まとめ

筆者が看護師になりたての頃、ミトンや抑制帯を使うことが患者さんの命を守ること、と教えられました。
病院においては治療が優先されるため、抑制が命を守ることにつながることもありますが、介護施設は治療の場ではなく、あくまで生活の場です。
身体拘束をなぜしなくてはいけないのか、それを拘束を行うまえにまず考えること。
それが、身体拘束を減らす第一歩になるのではないでしょうか。

参考:
粟生田友子:抑制はなぜしてはいけないのか:リハビリナース:2015年8巻1号:p74-80
荒木暁子他:「抑制しない看護」が成功したら、患者や病棟はどう変わるのか?:リハビリナース:2015年8巻2号:p74-78
井上美鈴:抑制しないために何が必要か:リハビリナース:2015年8巻3号:p80-87
厚生労働省 平成26年度 老人保健健康増進等事業 介護保険関連施設等の身体拘束廃止の追跡調査及び身体拘束廃止の取組や意識等に関する調査研究事業報告書(2018年2月21日引用)

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