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コミュニケーション 訪問介護

在宅ヘルパーが直面した困難事例!コミュニケーションで解決できた!

訪問介護は基本的に一人現場です。
すぐに相談できない環境では困難事例に遭遇しやすく、怖い思いをすることもあります。
今回は実際に起こった困難事例を見ながら、解決策をお伝えします。

新しいヘルパーが気に入らん!

クレームへの解決策は「コミュニケーション」

あれも言いたいこれも言いたい!

困難事例とは、ヘルパーが利用者またはその家族から、暴力や危険行為、セクハラなどの精神的苦痛や身体的苦痛を与えられることをいいます。
また、独居などの生活環境やサービスの拒否なども困難事例に含まれます。
こうした困難により、ヘルパーの離職や利用者のサービス停止を余儀なくされるなど、在宅ヘルパーの業務そのものに、深刻な影響を及ぼす問題となっています。

よくある困難事例として「クレーマー」があります。
ヘルパー側に何の過失もない場合でも、クレームをつけられてしまうのはなぜでしょうか?

●クレーマーの心理はヘルパーへの不安でいっぱい

利用者が苦情を訴えてくる原因として、「思い通りにしてもらえない」と感じたことが「人間として気に入らない」という結果に結びついてしまったケースが多くあります。
つまり、コミュニケーション不足によって起こるクレームです。
そのため、長く付き合ってきたヘルパーにはクレームをいわないのに、新人のヘルパーが来るとクレームが増えるなど、人により変化があります。
利用者の家族が苦情を訴えてくるケースでは、「客であるという立場から」「介護疲れのストレスから」など、業務そのものが原因ではない場合も少なくありません。
どちらのケースでも、信頼関係の構築ができていなかったことが大きな要因といえるでしょう。
施設介護などでは、一日のなかで利用者と会話する時間をつくり、コミュニケーションを上手に図る時間を確保することができます。
しかし訪問介護では、時間内にサービスを済ませる必要があるため、利用者もヘルパーもお互いの存在に慣れるまで時間がかかります。
ご家族の気持ちになって考えてみれば、知らない人が自宅へ来て介護や家事をやることに不安を感じない人はいないでしょう。
さらに、新しく入ったヘルパーであればなおさら、ご本人もご家族も不安が募るのは当然のことなのかもしれません。
こうした不安をなくすには、信頼関係の構築が大切です。

●信頼関係の構築には笑顔を絶やさないこと

コミュニケーション不足によるクレームの事例として、山岡さん(仮名・60代男性)のご家族の例をご紹介します。
山岡さんの奥さまは新しいヘルパーが苦手でしたが、事業所にいるサービス提供責任者の藤村さん(仮名・50代女性)に対してはとても感謝していると毎日話していました。
実は山岡さんの奥さまはまだサービスを始めたばかりの頃、新人の藤村さんに対してもたくさんのクレームをつけていたそうです。
「10年以上も通い続けてようやくこうした信頼関係ができる場合もある」
藤村さんは解決のため、まずは山岡さんに言いたいことを言ってもらい話に耳を傾けることから始めました。
その後、クレームにならないようにするために、ヘルパー同士の連携や事業所のフォローを欠かさずに行ったり、明るく接するなどの誠実な対応が実を結び、信頼を得ることに成功したのです。
新人ヘルパーさんが今すぐできる解決策は、こうした先輩からの引き継ぎをしっかりと受けることです。
部屋に入ったときの状態を覚えておき、もとの状態に戻すように心がけるなどもクレームをなくす方法のひとつです。
そしてなにより、笑顔の対応を忘れないようケアにあたることが大切です。

暴力行為の解決策は「無理な対応をしない」

困難事例のなかでも、対応が難しい暴力行為については、コミュニケーションの取り方、言葉のかけ方に注意が必要です。

●思い通りにできない…ジレンマと罪悪感が暴力に

暴力や危険行為によるサービスの拒否は、認知症の方や精神疾患のある方に多く、ヘルパー自身の体に傷がつくなど大変難しい問題です。
しかし、人は思い通りにできないときにイライラしてしまうもの。
自分のことが自分でできないジレンマや周囲への罪悪感が、暴力行為へと走らせる要因になっていることもあります。
たとえば認知症の方であれば、本来のその人は責任感が強く頼りがいがあり、面倒見の良いタイプであったかもしれません。
それが真逆と感じる状況になり、そこから生じる大きな葛藤が、意図せず暴力として出現している可能性があります。
精神疾患がある方の場合では、妄想や幻覚、記憶の混乱といった要因から暴力行為が起きることもあります。
これらのケースでは、感情によるものだけではなく、あくまでも病気が引き起こしているため、行為自体をやめさせることは難しいでしょう。
しかし、行為の引き金となるものは必ずありますので、注意深く見守り、サービスを行うようにしてください。

●暴力行為への対応はできることから

ここで、危険行為の事例を2つ紹介します。
奥田さん(仮名・70代男性)は精神疾患による症状によって、とがったものを見ると無意識に奪い取ってしまう、といった危険行為があります。
※精神疾患がすべて危険な行為につながるということではありません。
詳しくはこちら(精神疾患=暴力は間違い!苦手意識を持つ前に、介護士として把握してほしい症状と状態像を解説します)をご覧ください。
奥田さんのケースでは、まずサービス中はとがったものを一切見せないようにしました。
実施記録の記入のために必要なボールペンも使わないようにし、この場で記録は書かずに印鑑だけをもらうようにして対処。
サービス中は好きなテレビの話をすると気が紛れ、落ち着くようでした。
このように、利用者の好みを知って対応することで、解決できる事例はたくさんあります。
認知症により、おむつ交換の拒否と激しい暴力がある沢さん(仮名・80代女性)の場合、女性にだけこうした行為があり、男性に対しては優しくなる傾向にありました。
沢さんのケースでは、男女2人ペアで一緒に行き、声かけを行いながらケアをするなど、できる限りご本人が安心するように努めました。
その結果、女性ヘルパーが一人で訪問しても暴力行為をしなくなったのです。
いずれもご本人が落ち着くように配慮することで解決した事例です。
このように、暴力行為への対応は無理をせず、できる範囲から始めることが大切です。
こちら(認知症とせん妄。2つの疾患を理解し、介護の現場における暴力行為への対策へつなげていこう!)も合わせてご覧ください。

セクシャルハラスメントには事業所が真剣な取り組みを

ただふざけてるだけで済ませてはいけない!

勤務中にセクシャルハラスメント(以下、セクハラ)を経験したというヘルパーは多く、そのほとんどが男性利用者からの発言や行動です。
こうしたトラブルは、精神的苦痛が大きいにもかかわらず、ヘルパーが一人で抱え込みやすいケースでもあります。
事業所はこうした相談に対しては、まず同性対応にするなどの策を講じて解決を試みます。
訪問介護の現場では密室になりやすいため、男性のヘルパーと2人体制で介助に行くなどの方法もあります。
男性利用者からのセクハラに対しては、わりと解決策が有効となることが多いですが、家族からのセクハラや、同性利用者からのセクハラなどは事業所でも見過ごしやすい問題です。
介護ヘルパーの草野さん(仮名・20代女性)の事例では、同性利用者からのセクハラに適切な対応がなされず、離職につながっています。
草野さんは3年ほど勤めており、すでに何件もの信頼があるヘルパーでした。
最近担当になったばかりの方から、キスを迫られることが度々あり、事業所に相談。
しかし事業所は、この利用者さんが同性であることから冗談だと捉え、職員の交代などの対応を行いませんでした。
その結果、草野さんは突然の離職。
長く勤めていたヘルパーを失うことは、事業所にとってもほかの利用者さんにとっても良い結果とはいえません。
このように、同性利用者からセクハラを受ける事例は決して少なくありません。
事業所はヘルパーからの相談を軽く受け止めず、真摯に向き合い対応することが大切です。

まとめ

どのような場面に遭遇しても、まずは利用者の目線に立ち、なぜ起こったのかを考えることが解決への糸口です。
今回の事例をもとに、事業所やケアマネジャー、ほかのヘルパーと相談しながら最善の解決策を見つけてください。

関連情報:
リハビリ・介護施設の施設基準や診療報酬・介護報酬(2023年4月30日引用)

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