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介護事業の会計処理には基準がある!基準に違反すると取り消し処分になることも

介護の会計処理は、一般企業の会計処理と方法が異なり、同様の会計処理では基準に違反することがあり注意が必要です。
介護の運営基準を満たす会計処理では、会計区分をもとに行います。
ここでは、介護の会計処理方法や注意ポイントをご紹介します。

介護事業の会計処

会計処理の運営基準とは

介護事業所や法人の会計の運営基準は、医療系サービスや福祉系サービスに定められた会計基準などの書類を作成し、それを介護事業所別に区分して算出することとしています。

●運営基準を満たす会計処理方法について

運営基準を満たす会計処理方法について

「指定居宅サービス等の事業の人員、設備および運営に関する基準第38条」では、介護事業所ごとに経理を区分し、それぞれの事業の会計を区分しなくてはならないとあります。
運営基準を満たすためには、複数の事業所を経営しているすべての法人が、それぞれの事業所ごとに会計を区分をしなくてはなりません。
介護報酬は、介護保険で成り立っているので、厳しい監査が入ります。
運営基準に違反すると、運営基準義務違反として事業所に実地指導が入り、従わなければ取り消し処分になることもあります。
また、会計での不正請求や虚偽報告などは取り消し処分の対象です。

運営基準を満たす介護の会計処理方法には、次の4方式があります。

  1. 1)会計単位分割方式
  2. 2)本支店会計方式
  3. 3)部門補助科目方式
  4. 4)区分表方式

「会計単位分割方式」が一番わかりにくい処理方法で、一般には「部門補助科目方式」や「区分表方式」で処理されています。
介護の会計ソフトは、この区分方式に対応しています。

●共通経費の按分方法

経費は、共通経費と個別経費に分けられます。

1)共通経費と個別経費とは

共通経費とは、社会福祉法人や医療法人が複数の事業所を経営している場合に共通して生じる経費を指し、個別経費は一つの事業所のみで使われる経費になります。

2)共通経費の按分とは

按分とは、基準となる人数や建物などの割合を計算して、割合に応じて割り振ることです。
たとえば、Y法人が同じ敷地内にA訪問介護事業所とB居宅介護支援事業所、別の敷地にC小規模多機能型居宅介護を経営しているとします。
経費の中で按分するのは共通経費で、人件費、地代家賃、水道光熱費、通信運搬費、材料費、減価償却費などがあてはまります。
経営者や経理担当者などの給料は共通経費にあたり、Aのホームヘルパーの給料は個別経費です。
A、B、Cの各事業所の介護職員や看護職員などの給料は、勤務時間割合で按分するか、延利用者数割合や職員別人員割合などで按分します。
地代家賃は、同じ敷地内のAとBは共通経費で、Cは個別経費で算出となり、AとBの地代家賃の按分方法は、建物床面積割合や物件の使用割合で按分します。
材料費は、各事業の消費金額により区分するか、延利用者数割合や各事業別収入割合で按分することになります。

介護の会計処理で注意するポイント

介護の会計処理は一般会計と異なり、運営基準違反に問われる可能性もあります。会計処理で注意するポイントをまとめました。

1)運営基準の区分方式で会計処理をしていない場合や不正請求、虚偽報告をした場合

運営基準の区分方式で会計処理をしていない場合や不正請求、虚偽報告をした場合

運営基準を満たしていない場合は運営基準義務違反とみなされ、実地指導が入ったときに指導されます。
それでも改善がなされない場合は、指定取り消し処分になることもあります。
今までのケースでは、不正請求や虚偽報告があった場合の取り消し処分が多くを占めています。

厚生労働省によると、2017年度に立ち入り検査を受けた事業所が今までで最多の1,586件で、そのうち指定取り消し処分(169件)や効力の全面停止処分(38件)、効力の一部停止処分(50件)を受けた事業所が257件に上ります。
内容は「介護給付費の不正請求」が81件、「帳簿書類の提出・命令違反、虚偽報告」が44件、「設備・運営基準違反」が33件、「介護保険法に基づく命令違反68件」などです。
都道府県別にみると、監査が厳格化している大阪府が29件と最も多い件数です。
運営事業者別では、株式会社などの営利法人の処分が139件と多数を占め、社会福祉法人が3件、医療法人が6件でした。
介護保険が始まった2000年から2017年度までに指定取り消し処分を受けた事業所の総数は1,659件で効力停止処分を受けた事業所は788件です。
それ以外に改善報告や改善勧告、改善命令があり、すぐに改善する必要があるのは改善命令です。
一番軽い改善報告を受けた事業所は628件に上りました。

2)社会福祉法人の会計単位、会計区分、経理区分の意味とは

社会福祉法人は、社会福祉事業や公益事業、収益事業に分けられます。
事業拠点ごとに会計を分ける必要があり、社会福祉事業会計、公益事業会計、収益事業会計と会計単位に分けられます。
会計区分は、上記の4つの会計処理方法のことです。
経理区分とは、定款に記載されている事業所ごとに内容を区分することで、資金収支計算書や事業活動収支計算書の内訳には、事業ごとの経理区分で記載します。

3)按分方法について

按分方法の中で一番利用されているのは延利用者割合で、介護給付費明細書のサービス実日数を集計して算出します。
按分方法はどれを選択してもよいのですが、一度選んだ按分方法はその後も継続して適用することが原則です。

4)帳簿の作成は決算期に1年分を一括処理できる

会計の区分は、事業所とほかの事業所の会計を按分などで分けて処理することで、それぞれの事業所の会計状況を把握します。
会計帳簿は、決算期に1年分を一括処理してもいいとされ、1カ月ごとの帳簿作成は必要ありません。
ただ、赤字の事業所があれば部門科目方式で毎月の損益を按分すると、赤字の原因を把握できるので早めに赤字対策ができるでしょう。

5)介護老人保険施設と同じ敷地にある市町村からの委託を受けた居宅介護支援センター事業の場合

老人保健施設と同じ敷地内に居宅介護支援センターがある場合、居宅介護支援センターの介護報酬は、「居宅介護支援介護料収益」として計上します。
市町村からの受託料の計上は「施設運営収益」です。
コストは老人介護保険施設と居宅介護支援センターの共通経費として按分します。
ただし、市町村から受託事業として独立会計を求められた場合はそれに従います。
居宅支援センターが独立事業所なら、介護老人保健施設と別会計で行います。

6)介護の未収金の仕訳は

未収金は、介護報酬を国保連(国民保険団体連合会)へ請求した月に行います。
売上の仕訳は、国保連請求の場合は
「介護報酬未収金(国保連請求)○○」「介護報酬収益分○○」
利用者負担の場合は
「介護報酬未収金(利用者負担)○○」「介護報酬収益分○○」とします。

7)返戻(へんれい)の仕訳は

返戻とは、国保連へ介護報酬の請求をし、内容に間違いなどがある場合、請求書類を事業所にさし戻されることです
介護報酬の請求時は未収金と同じ仕訳です。
2カ月後に介護報酬が入りますが、返戻が発生している場合は
「当座預金○○円」「介護報酬未収金(国保連請求)○○円」「(介護報酬収益分)返戻金額○○」として、請求の売り上げから減額します。
その翌月の請求では
「介護報酬未収金(国保連請求)○○円」「介護報酬収益分○○円」と仕訳します。

介護サービス事業の会計処理には会計ソフトが便利

介護サービス事業の会計処理には会計ソフトが便利

介護サービス事業の会計処理は一般企業の会計と異なり、会計基準に定められた方法で処理を行わないと運営基準義務違反となります。
介護事業の会計処理はかなり複雑で新しい基準にも対応しなくてはなりません。
介護事業所向けの経理・会計ソフトは、按分基準を設定するだけで自動的に算出できますので経理の負担軽減につながります。

参考:
厚生労働省 介護保険の給付対象事業における会計の区分について.(2019年6月20日引用)
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準.(2019年6月20日引用)
老振発第18号平成13年3月28日 介護保険の給付対象事業における会計の区分について.(2019年6月20日引用)
厚生労働省 社会福祉法人会計基準とは.(2019年6月20日引用)
シルバー産業新聞.(2019年6月20日引用)
広島市のHP 2016年9月30日 介護サービス事業者に対する指定取消処分について.(2019年6月20日引用)

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