介護サービス事業所の営業術!利用者を獲得するために必要な差別化の考え方
古くから介護サービスを営んでいる管理者からは、措置時代は良かったという話を聞くことがあります。
措置時代では、介護が必要な利用者は行政から依頼されてきたのです。
介護がサービスとなり、介護サービス事業所が増え、営業が必要な時代へと変化しました。
ここでは、介護サービス事業所の営業について見ていきます。
介護サービスにも営業が必要な時代に
措置時代や介護保険が始まった当初とくらべると、介護保険サービスに対する環境は様変わりしました。
悪い言い方かもしれませんが、「黙っていても稼げる時代」は終わったといえるでしょう。
その理由として、いくつかポイントを挙げたいと思います。
1)度重なる報酬改定
2018年(平成30年度)の介護報酬改定においては、厚生労働省からプラス改定になるとの発表もありましたが、前回2015年(平成27年度)の報酬改定は2.27%の大幅ダウンでした。
つまり現時点では度重なるマイナス改定で、介護サービス事業所の利益率は大幅にダウンしているといえます。
介護サービス事業所を運営する管理者を見てみると、福祉家として情熱のある人は多いものの、残念ながら経営感覚のない管理者がいることも事実です。
そのような介護サービス事業所については、報酬改定のなかでとう汰されていくものだといえるでしょう。
2)介護職員の人材不足
介護職のイメージの悪さからか、介護事業所はいつまでたっても人材不足にあえいでいる状態です。
また、優秀な人材は大手の企業や社会福祉法人が運営する事業所に流れてしまう傾向にあります。
そんななかで、中小の介護サービス事業所が人材を獲得していくことは、相当困難極めることであるといえます。
介護職員の人材不足は、利用者の獲得にも大きく影響します。
職員の配置人数、サービス提供責任者1人当たりの利用者数の制限などが、事業所運営に影響を及ぼすのです。
実際、利用者を獲得したくてもできないというジレンマを抱えている管理者はたくさんいます。
3)介護サービスの供給過多
地域によっては、介護サービス事業所同士で高齢者の奪い合いになっているところもあります。
介護サービス事業所が増えると、高齢者1人当たりのサービス量が増えていくことになります。
高齢者にとっては、さまざまな介護サービスが地域にあることは選択肢も増え、喜ばしいことだと思いますが、介護サービス事業所にとってはそうではありません。
これは同じ介護サービスだけにいえることではありません。
たとえば訪問介護を利用している高齢者が、ディサービスを利用すれば訪問介護の利用回数が減る可能性があります。
地域にショートスティがある場合は、10日間ほどショートスティ利用になると、その間の在宅サービスがすっぽりと抜けてしまうことになります。
介護サービスを展開する際には、こういった介護サービスの状況についても十分にマーケティングが必要です。
営業先の最重要ポイント「地域包括支援センター」「居宅介護支援事業所」
介護サービス事業所がどこへ、どのように営業を行うかについてお伝えしたいと思います。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所では、多くの介護サービス事業所が営業に来られています。
営業先はさまざまありますが、そのなかでも重要な「地域包括支援センター」「居宅介護支援事業所」についてご紹介します。
1)地域包括支援センター
地域包括支援センターは、その地域におられる高齢者のために、必要なサービスを提供しています。
地域包括支援センターは、数年前から「全戸訪問」を行っており、その地域に住んでいる高齢者の状況を完全に把握しているといえます。
地域の高齢者の情報をつかむには、まず地域包括支援センターに営業に行く必要があります。
しかし要支援者のサービス単価が低いという理由から、地域包括支援センターへの営業や業務を敬遠される事業者も少なくありません。
しかし高齢者の多くは、年数とともにサービスがどんどん増える傾向にありますから、早い段階で少しでも介入しておけば、今後の展望が開けるといえます。
地域包括支援センターは、公平中立に介護サービス事業所を活用しますから、少しずつでも依頼が来るようになるでしょう。
2)居宅介護支援事業所
地域にはたくさんの居宅介護支援事業所があります。
居宅介護支援事業所は地域に住む高齢者に対して、必要な介護サービスの調整をしているところです。
基本的にケアマネジャーは、自分が所属する法人の介護サービスを使おうとしますが、現在の制度には「集中減算」というものがあり、一つの事業所に集中して依頼することができません。
在宅介護サービスは利用者や家族が選択できるものですが、実際に利用者側が選択するケースは少なく、多くはケアマネジャー任せとなっています。
もちろんケアマネジャーはその利用者に合った事業所を勧めますが、管理者とのやり取りがスムーズであったり、管理者の人柄などに影響され、利用する事業所を選択することになります。
ここでケアマネジャーに選んでもらうには、日頃からのコミュニケーションが大事になってきます。
最初は多少困難なケースであっても引き受け、小回りのきく事業所であることをアピールしていくことが重要になってきます。
営業先でなにをアピールすればいいか
「営業先で、なにをすればよいのかわからない」という話を聞くことがあります。
また、事業所のパンフレットを渡すだけという管理者もいますが、それだけではサービスの利用につながるとはいえません。
では、事業所における「営業」とは、いったいなにをすればよいのでしょうか。
1)こまめに営業先の事業所を訪問する
まずは営業先の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーなどと、信頼関係を構築する必要があります。
そのためには、もちろん深い話もしなければならないときもありますが、まずはこまめに訪問することがポイントです。
営業は、質よりも量が大事です。
「近くに寄った」「あいさつだけ」など理由は何でもいいでしょう。
訪問回数を増やし、いつでも声をかけてもらえるような存在になることが大切です。
2)ほかの事業所との差別化
介護サービスでは、業務内容や料金設定などの理由から、それほど差別化ができないように思いますがそんなことはありません。
ケアマネジャーが困るケースを引き受けてくれる事業所は、とても信頼のおける事業所として評価されます。
たとえば緊急を要するケース。
すぐにサービスが必要になった場合に稼働できる、小回りが利く事業所は重宝されます。
困難なケースも同様です。
ほかの事業所が嫌がるようなケースでも、誠実に対応し受け入れていけば、信頼度はアップするでしょう。
3)報告や連絡はこまめに行う
「ケアマネジャーは忙しいから」と、報告・連絡を後回しにしてはいけません。
この報告・連絡がケアマネジャーの重要な業務である「モニタリング」や「再アセスメント」につながってきます。
さ細なことでもこまめに連絡をとり、状況などをしっかりと報告するようにしましょう。
まとめ
冒頭でも申しあげましたが、介護サービス事業所を運営する管理者をみると、介護福祉に対する情熱を持っている方は多く見受けられます。
事業所の運営には経営者目線もさることながら、福祉に対する情熱を少しでも営業先である地域包括支援センターなどに伝えていくことが欠かせません。
それが事業所運営において、最も大事な営業術だといえるでしょう。
参考:
厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 平成30年度介護報酬改定に関する審議報告 平成29年12月18日(2018年1月30日引用)