福祉用具のレンタルや購入で介護保険が利用できる!対象となる商品はどんなものか徹底解説
福祉用具と聞いてすぐに思い浮かぶものとしては「車いす」でしょうか。
介護施設に必ずあるものでは、つえや紙オムツといった小さなものから、入浴用の補助器具やベッド、リフトなどの大きなものも福祉用具です。
ここでは、主に福祉用具の種類や介護保険の利用範囲に関して説明します。
福祉用具について事業者の方であれば、その使い方についてはもうご存知だと思いますが、新しい福祉用具を導入検討する場合に改めて参考にしてください。
福祉用具の目的、誰が使うのか?
福祉用具とは高齢者や心身障がい者の機能訓練のための補助具のことです。これらは、単なる生活に便利な道具ではなく、日常生活向上を助ける目的があり、介護する側、される側の負担を軽減する役割を持っています。
福祉用具には一般のお店で購入もできますが、介護保険制度を利用したレンタルや購入の対象となるものもあります。
どのような福祉用具が対象となっているのでしょうか?
介護保険制度を利用する
介護保険制度を利用できる福祉用具は、利用者にとってより効果のあるものを支給するため、対象商品や限度額などの上限が定められています。
レンタルの場合、介護保険から9割を支給されるため自己負担は1割で利用できます。購入の限度額は1年間にひとりあたり10万円です。
介護保険制度でレンタルできる福祉用具とは?
厚生労働省が「介護保険における福祉用具」として定めている対象の福祉用具のうち、レンタルの対象となっているものを紹介します。
◯車いす
車いすは歩くことが困難な方や制限のある方が座ったまま移動できる福祉用具です。
手動車いす、電動車いすなど用途によってさまざまな種類がありますが、施設でよく導入されているものは手動車いすです。これは自立支援の観点から、できる限り動かすということが望ましいと考えられているからです。
いずれも体のサイズにあったものや、その方の状況に合わせたものを選ぶことができます。
レンタル対象として含まれる付属品はクッション、パッド、車いすに装着できるテーブル、ブレーキなどです。
◯歩行補助つえ
つえの役割は、歩行の補助です。麻痺やケガなどで痛みのある足に負担をかけないようにつえで支え、バランスを取って歩くことができます。
つえは日常生活で常に携帯するものですので、デザイン性が高いという特徴があります。
つえも車いすと同様、その方の状況に合わせて選べるようにさまざまな種類があります。
ただし、介護保険でレンタルできる杖は歩行補助杖、松葉づえやロフストランドクラッチなど、特殊なものがほとんどです。
高齢者が使用することの多いT字型のつえは、介護保険の適用とはなっていません。
それでも他のC字型やL型のつえに比べ安定感があり、軽いため持ち運びに便利であることから導入率が高く、親しまれています。
◯歩行器
歩行器はつえと同様に歩くための補助具ですが、つえの代用になる他、歩行訓練を目的として利用されることが多いことが特徴です。
歩行が困難である方も歩く練習ができるため、車いすを利用しなくても移動できる場合があります。
ただし歩行にスペースを取る必要があるため、住居環境によっては適さないことや、車輪がついているものでは前に押しすぎて転倒しないように注意が必要です。
◯特殊寝台
特殊寝台とは、利用者さんの体をおこしたり、ベッドから車いすへの移動や立ち上がりの動作を補助するため、傾斜をつけたりなど可動できるベッドです。
介護ベッドやリクライニングベッドと呼ばれています。
介助者にとっても、腰を痛めないように高さを調整できるなど、介護、医療の現場でとても役立っています。
レンタル対象として含まれる付属品はサイドレール(ベッド柵)、ベッドの手すり、マットレス、ベッドテーブルです。
◯床ずれ防止用具
床ずれ防止用具はベッドで過ごす時間が長い方の床ずれを防止するための福祉用具です。
体にかかる圧力を分散させるマットレスや体位変換を行う補助クッションである体位交換器などがあります。
体位交換器は寝たきりの方、自力で寝返りが打てない方の体とベッドの間に差し込み、姿勢を変えることができます。
さまざまな形が用意されているので、使う方の体にあったものを選ぶことができます。
◯認知症老人徘徊感知機器
認知症老人徘徊感知機器は、認知症の方がベッドから降りた時や、外へ出ようとしたときなどにブザーで知らせてくれる機器です。
介護現場ではベッドの下に敷いておき、踏むとブザーが鳴って感知できるタイプが普及しています。
他にも用途によってさまざまなものがあり、部屋の入口につけるタイプの物や本人の持ち物につけるタイプなどがあります。
介護保険の適用対象はマットレスタイプと人体感知センサータイプなど。
取り付けに工事が必要である場合や、GPSタイプなどは適用ではありません。
◯移動用リフト
移動用リフトとは、利用者の体をつり上げて目的の場所に移動するための補助を行う機器です。
手や体を使った介助だけで移乗が困難な方である場合に多く使用されます。
どこにでも移動が可能な床走行式リフトや、壁などに固定して使用する固定式リフトが介護保険の適用範囲です。
天井からつるすタイプは取り付け工事が必要になるため、介護保険は適用になりません。
また、つり具の部分についてはレンタル対象ではなく購入です。
◯手すり
廊下、階段、トイレ、浴室など利用者さんが生活する場所では転倒などの事故を未然に防ぐ必要がありますので、介護現場では手すりが必要不可欠です。
手すりの工事は介護保険で住宅改修費の補助を上限額20万円まで受けることができます。
◯スロープ
居宅内において段差がある場合、車いすの移動に困難が生じます。スロープは車いすの移動時、段差の負担を軽減する目的で使用する福祉用具です。
スロープはそのつど設置するタイプから改修工事が必要なタイプがあり、介護保険制度では福祉用具のレンタルだけでなく住宅改修費の補助も利用できます。
◯自動排泄処理装置
自動排泄処理装とは、トイレに行くことが困難である場合に使用される排泄用の吸引器です。陰部にあてるだけで尿や便を感知し、自動的に吸引できます。
自力でトイレに行く方でも、夜間には転倒のおそれがある場合などに適しています。
介護保険で購入できる「特定福祉用具販売」
以下の商品は特定福祉用具販売の対象となっており、購入価格の1割負担で購入できます。
- ◯腰掛便座
- ◯自動排泄処理装置の交換可能部品
- ◯入浴補助用具(入浴用いす、 浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
- ◯簡易浴槽
- ◯移動用リフトのつり具の部分
介護保険では、消耗品や排泄の用途に使われるものなどの、レンタル向きではないものは特定福祉用具販の対象です。
交換が必要なものは何度も購入する必要があるため、こうした制度の利用により負担を軽減しましょう。
福祉用具導入にあたって大切なこと
人の生活は毎日変わります。昨日使えていたものが使えなくなることも珍しくありません。
利用者の自立を支援するためには、今の環境に適した福祉用具を使っていくことが大切です。
そのためには、目的を明確にし、計画を立てることが大切です。福祉用具は便利だから使うものではありません。
使う方の生活に何が必要か、使うことでどのように役立たせることができるかなどのプランを立ててから導入してください。
また、導入するだけで終わらずに見直しが大切です。
安全性の確認や導入後の課題、問題解決に向けて今後はどのような福祉用具が必要か。
事業者、専門機関、利用者との連携を取り、その人それぞれのプランに合った福祉用具を選びましょう。