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介護施設でも取り入れることができる、急変時シミュレーションについてご紹介します!

介護施設においても、高齢化率上昇とともに循環器や呼吸器の病気を抱える利用者さんが増えてきています。
介護現場では、急変時対応マニュアルの作成や一次救命処置(BLS)は実施されていますが、対応に不安を感じる方も多いでしょう。
本記事では、介護施設でも実施可能な急変時シミュレーションについてご紹介します。

BLSだけでは不十分?急変時シミュレーションの目的とは

急変時対応においてBLSは必須の研修ですが、実際にその現場に遭遇したときに適切な処置ができるか不安に思う方もいるでしょう。
ここでは、急変時シミュレーションを実施する目的と実施方法について解説します。

●まずはBLSが実施できる環境をつくることが大切

日本AED財団によると、心肺停止後速やかに胸骨圧迫を実施すると、その後の生存率が2倍になり、またAEDの使用で半数以上が救命可能と報告されています。
急変時には、胸骨圧迫や除細動をいかに素早く実施できるかが重要となりますが、実際の介護現場ではさまざまな問題があり、実施が遅れることがあります。
以下にその理由を挙げます。

  • ◯急変なのか判断ができない
  • ◯周りに助けを呼べるスタッフがいない
  • ◯安全な蘇生スペースを確保できない

各スタッフが急変時に対応できるスキルをもっていたとしても、周囲に人がいない状況や、安全に蘇生できるスペースがなければBLSが実施できません。
急変時シミュレーションの目的は、「どんな場面でも、いかに素早くBLSを行える環境をつくることができるか」です。

●実際の介護現場を想定した訓練が必要

実際の介護現場では、食事・排泄・入浴・歩行・レクリエーションなど、利用者さんがいる場所や姿勢(座位か立位か)はそれぞれ異なります。
急変時シミュレーションを実施する際には、以下の項目を設定することが大切です。

  • ◯時間帯
  • ◯場所
  • ◯周囲の環境
  • ◯その他(不利な状況)

上記の不利な状況とは、他の利用者さんが密集している状況や、機器や物品が邪魔でスペースを確保できないなどが例として挙げられます。
よって、機器の整理や部屋のレイアウト変更なども急変時シミュレーションに含まれるといえます。

トイレ介助での急変に備えよう!おさえておきたい7つのチェック項目

介護施設内で急変が起こる場所として、最も注意しなくてはいけないのがトイレです。
トイレ介助で急変が起こった場合を想定して、BLS実施までの流れや注意点について解説し、安全な環境設定のために必要なチェック項目をご紹介します。

●トイレ介助では、狭い空間と周囲からの孤立が問題点

排泄中に急変が起こった場合、体を支えながらほかのスタッフを呼ぶ必要がある他、「車椅子が邪魔で通れない」「鍵がかかって入れない」などの問題が発生します。
また、なんらかの理由で緊急コールが押せない場合(コールの故障・手が離せない)は、大声でスタッフを呼ぶ必要があります。
しかし、レクリエーション中などでは、助けを呼ぶ声が届かないことも考えられます。
ほかのスタッフも、まさかトイレで急変が起こっているとは思わないでしょう。
トイレ介助を行う場合は、周囲に一声かけて行くだけでも、スタッフの安全管理に対する意識が高まります。

●急変時を想定したチェック項目

トイレ介助の際に急変が起こった場合、いかに早く安全な環境をつくることができるかが重要です。
必要なチェック項目を以下に挙げます。

上記表からも分かるように、急変時シミュレーションにおいては環境面での対策が重要となります。
チェックがつかない項目があれば、改善の可否についてスタッフ間で話し合ってみてはいかがでしょうか。

急変時シミュレーションの実践例をご紹介

ここでは、急変時シミュレーションの実践例についてご紹介します。

●ケース設定をする

今回のシミュレーションでは、以下のようにケース設定をしました。

1)利用者さんの情報

年齢・性別 80代・女性
病名 脳梗塞
既往歴 高血圧、心不全
コミュニケーション こちらの言うことは理解できるが、自分からの訴えは少ない
介助量 移乗はスタッフ1人で可能であるが、座位に介助が必要

2)状況

利用者さんからトイレの訴えがあり、スタッフがトイレ介助を実施した。
食事後にカラオケ大会がおこなわれており、他のスタッフ2名はそちらに参加している。

3)急変時の流れ

排便中に利用者さんの顔色が悪くなり、呼びかけに対して反応が得られなくなった。
便座から崩れ落ちそうになったため、緊急コールを押して応援を要請した。

●シミュレーション開始!問題点はどこに?

前述した設定をもとに、3人のスタッフ(A B C)で急変時シミュレーションを実践した例を挙げます。

1)緊急コールに気づいたスタッフが到着

1分後にスタッフBが駆けつけたが、トイレに鍵がかかっていて中に入れなかった。
中の介助者(スタッフA)が1分後に鍵を開けることができた。

2)利用者さんを安全な場所に

利用者さんを車椅子に乗せてトイレから出たが、ベッドはすべて使用中であり、急変した利用者さんを横にすることができなかった。
スタッフCが寝ている利用者さんを起こして移動し、3分後に1台のベッドを確保した。

●全員で改善案を検討しよう

今回のケースでは、BLSまでに時間を要したことが問題でした。
以下に今回のポイントを挙げてみましょう。

  • ◯トイレの鍵が外から開錠できなかった
  • ◯利用者さんが横になるスペースが確保できていなかった

これらの問題に対して、スタッフ間では以下のように取り決めをおこないました。

  • ◯トイレの鍵を外から開けるため、常に10円玉を所持しておく
  • ◯トイレ介助の際は、周りのスタッフに一声かけてから行く
  • ◯急変が起こった際に、処置ができるスペースを常時確保しておく

急変時シミュレーションで最も重要なポイントは、実施後の振り返りであるといえます。
「こうすれば間違いない」といった正解はありませんが、繰り返し練習することによって危険を回避する感覚は身についてきます。

日頃から「もしかして」を考える習慣づけを

急変時シミュレーションについて、トイレ介助場面を想定した1例をご紹介しました。
急変時における初動は救命率アップのために重要であり、常にさまざまな可能性を想定しておく必要があります。
職場の環境を見渡して、どこに危険が潜んでいるか、事前にスタッフ間で取り決めをしておくことはないかなど、常日頃から急変に対する意識を高く保つことが大切です。

急変時対応については、こちらの記事(あなたの施設は大丈夫!?介護現場で身につけておきたい急変時対応をご紹介!)でも紹介しています。

参考:
一般財団法人日本AED財団ホームページ. (2018年6月17日引用)

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