自分でできることが広がる介護ロボット!排泄支援機器のメリット
排泄は、ほとんどの方ができる限り自分でしたいと考えているようです。
高齢になっても可能な限り自力で排泄できることは、その人の尊厳も守られます。
国の介護ロボット事業で開発された排泄支援機器は、高齢者や介護者にどんなメリットがあるかをみてみましょう。
目次
高齢になっても可能な限り自分で排泄をしたい
排泄は、人間の尊厳に関わる部分で一番見られたくないところです。
特に、排便は決まった時間に行けなかったり、人に見られていると緊張して行けなかったりします。
在宅で家人にお世話になっている高齢者は、排泄物の処理をしてもらうことは気が引けることです。
介護者にとっても毎日の排泄の介助や処理は負担が大きいです。
そのような声を受けて、国の支援のもとに開発された介護ロボットが排泄支援機器です。
排泄支援機器は、可能な限り自力でトイレに行けることを目指します。
さらに、排泄処理も機器が行うので、気兼ねがありません。
今後、超高齢化社会になるにつれて、人手が不足するなかで排泄支援機器はますます必要度が高くなると考えられます。
介護ロボット事業ですすめている排泄支援機器とは
排泄支援機器は、介助者の代わりに排泄をサポートする機器のことです。
排泄支援機器の役割は、可能な限り一人で排泄できることと、失禁を減らして高齢者の自尊心を維持すること、介護者の負担を軽減することなどです。
その機器には、排泄のタイミングを知らせる機器、トイレで排泄動作を支援する機器、排泄を自動で処理する機器に分けられます。
●排泄がある前に知らせる機能
超音波を使って膀胱(ぼうこう)に尿がたまったら知らせる機能がある機器で、失禁する前にトイレ誘導できるため自尊心を保てます。
また、寝たきりの人には、排尿ありのお知らせで、すぐにおむつを交換できるため肌の保清と肌トラブルの予防になります。
●排泄支援機器がズボンなどの上げ下ろしや排泄までの動作を支援する
排尿に必要な動作は、まず下衣を下げて、トイレに座る、排泄をする(排尿や排便)、下衣を上げるという動作が必要です。
この動きを支援するような機器は製品化に至っていません。
ただ、排便を促しやすくして姿勢を保持する機器は利用されています。
●排泄を自動で処理する機器
一般のポータブルトイレは排泄はできますが、排泄物の処理は介護職員や家族が行わなくてはなりません。
しかし、自動で排泄処理する機器は、機器が便や尿を処理するため、おむつ交換も必要ありません。
すぐに処理できるので臭いも部屋に広がりません。
排泄支援機器の導入例
●排泄予測デバイス「DFree」(トリプル・ダブリュー・ジャパン)のメリット
膀胱の位置につけると、超音波センサーが膀胱のふくらみを感知し、連動しているスマホなどに尿がたまったときや尿が出たときを知らせる画期的なロボットです。
排泄予知をするDFreeは、国の支援を受けてさまざまな施設で利用されました。
複数の施設でDFreeを利用した結果、「失禁が減った」、「笑顔が増えた」、「今までより睡眠時間が長くなった」、「頻尿がかなり減った」などの報告もされています。
おむつの方では、長時間汚染したままにしないため皮膚トラブルが減ったという結果にもなりました。
このことから、「DFree」のメリットは、失禁や頻尿が減ったり、眠る時間が長くなったりすることで、利用者の自尊心を保てて介護の負担も軽減できることです。
●排泄姿勢保持機器「トイレでふんばる君」(株式会社ピラニア・ツール)のメリット
導入した施設の入居者は、座位が不安定な方でも機器を使うと安定した姿勢を保持できるため、職員がほかの人のケアに入っている間、リラックスしてゆっくりと排便できます。
毎日、食事後にトイレ誘導して便意を促す習慣づけをすることで、排便が出やすくなりました。
●TOTOのベッドサイド水洗トイレのメリット
TOTOの調べによると、一般的な特別養護老人ホームの個室トイレを使用する率は20%以下と低い状況です。
そのため、ある特別養護老人ホームでは、各室の個室トイレ設置はやめて、通常の29台から15台に削減し、残りはベッドサイド水洗トイレを導入しました。
その結果、便意のある利用者全員が水洗トイレを使えるようになりました。
排泄支援機器のメリットと今後の課題
各自治体による介護ロボット導入支援事業として施設や在宅で排泄支援機器を使用し、その結果から導入によるメリットや今後の課題を挙げてみました。
排泄支援機器の種類 | メリット | 課題 |
---|---|---|
排泄を予知する機器 (排泄予知デバイスDFree |
・失禁が減る ・睡眠時間が長くなる ・頻尿が減る ・自分でトイレに行けるようになった ・皮膚トラブルが減った ・介護者の負担が軽減 ・おむつ代が浮く ・介護保険の福祉用具適用 |
・認知症の方は、外す可能性がある ・DFreeは肌に直接貼るため、赤くなる人もいる ・排泄処理は行わなくてはならない |
排泄動作を支援する機器 (トイレでふんばる君) |
・リラックスして排便ができる ・姿勢保持する機器は、姿勢が安定するのでほかのケアに入れる ・一人で排泄ができる ・便が出やすい |
・「トイレでふんばる君」以外、衣類の着脱動作を支援する機器は開発されていない ・現在は介護保険の適用ではない ・かならずしもすべての人に対応できるわけではない |
排泄を自動処理する機器 (ベッドサイド水洗トイレ、 真空式水洗ポータブルトイレ、 自動ラップ式トイレラップポン、自動排泄処理器、 男性用採尿器など) |
・おむつ交換が必要ない ・水洗トイレやポータブルトイレは自動で処理できる ・臭いが広がらない ・遠いトイレまで移動しなくて済む ・介護保険の住宅改修や福祉用具が適用される ・ラップポンはレンタル可能 ・自動排泄処理機器で皮膚トラブルが減る |
・ポータブルトイレは基本的にレンタル不可 ・認知症の方には誘導なしには難しい ・賃貸住宅では水洗トイレの工事ができない ・工事費や維持費がかかる ・自動排泄処理器は要介護度が高い寝たきりの方が対象 |
排泄支援機器は利用者が可能な限り排泄を自分でするためのロボット
排泄支援機器とは、排泄を自立して行えることや介護負担を減らすことが目的です。
機器を利用することで排泄の自立につながり、利用者の尊厳が保たれます。
手間が減るため、施設のケアワーカーや在宅ヘルパーは利用者と関わる時間が増えています。
また、排泄予測機器では、おむつ対応の方の皮膚トラブルが減ることも期待できます。
自分でできることが広がれば、利用者が引け目を感じることはありません。
介護者の負担軽減にもつながります。
今後は、排泄動作支援の機器の開発もなされることで、排泄が一人でできなかった人も自分でできるようになるでしょう。
参考:
厚生労働省 介護ロボット導入活用事例集2017.(2019年4月16日引用)
介護ロボットポータルサイト ロボット介護機器の導入事例.(2019年4月16日引用)
株式会社アム レンタルサービス.(2019年4月16日引用)
全自動排せつ支援ロボット「ドリーマー」.(2019年4月16日引用)
関東学院大学TOTO「ベッドサイド水洗トイレ」.(2019年4月16日引用)