訪問リハビリでも物理療法機器を活用しよう!オススメの機器と使用方法を紹介
訪問リハビリでは在宅生活での課題や社会参加を目指した、実践的な練習をする機会が多くなります。
そのため、疼痛緩和や機能向上の練習に費やす時間は少なくなってしまいがちです。
そこで、物理療法を活用することで、限られた時間の中でも、効率よく治療をすることができます。
今回は、持ち運びができ、訪問リハビリでも使用できる物理療法機器を紹介します。
目次
訪問リハビリで運動機能の維持・向上を目指してIVESを活用
在宅では麻痺の機能回復が落ち着いてから、介入することが少なくありません。
そのため、運動機能に対するアプローチは自主トレーニングの指導をして、運動麻痺の悪化による機能低下を防ぐようにします。
しかし、利用者さんだけではなかなか効果的なトレーニングを継続できず、拘縮の悪化や筋緊張が亢進するケースもあります。
そこで、注目される麻痺への治療戦略が低周波電気刺激による治療の1つである、「IVES(integrated volitional control electrical stimulator):随意運動介助型電気刺激」です。
IVESは脳からの指令によって生じたわずかな筋活動電位を検出して、電気刺激を起こし随意運動をアシストします。
持ち運びも可能なため、運動麻痺に対するトレーニングとして、在宅でも活用できます。
●IVESを使用して手指の運動を効率的に実施
手指の運動は、ある程度の随意性を獲得できれば、課題指向型のアプローチを実施して、課題に特異的な動作の習得をすることが重要です。
IVESは利用者さんの問題点に合わせて、治療の対象とする部位を変更することができます。
そのため、手指を使用する課題に合わせて、必要な随意性をアシストすることで、随意性が低い利用者さんでも、課題指向型のアプローチを実践することができます。
二瓶らは手指対立筋群の麻痺で書字能力が低下している、脳卒中発症9カ月の利用者さんに対して、週1回・40分間、 IVES療法と運動療法や課題指向型アプローチを実施した結果を報告しています。
治療の結果、麻痺や握力の改善が見られ、書字能力の向上を認めたとしています。
また、 IVESと促通反復療法の併用で訪問リハビリを実施した結果、麻痺や握力の改善が見られたとの報告もあります。
以上のように、 IVESをほかの治療方法とともに活用することで、より効率的に上肢機能を改善させる治療を実施できます。
●IVESは歩行練習にも活用可能
IVESには「センサートリガーモード」という設定ができます。
踵にセンサーを装着して、ヒールオフをセンサーが感知して、前脛骨筋へ電気刺激を与えることができます。
そのため、運動麻痺による下腿三頭筋の痙性を抑制しながら、歩行練習をすることができます。
疼痛緩和には超音波と電気刺激療法の複合治療機器がおすすめ
整形外科や整骨院で疼痛を緩和する場合、電気刺激療法や超音波などの物理療法を使用します。
OGウエルネスのフィジシステムは、バッテリーで稼働することができ、在宅やスポーツ現場など電源がない場所でも、電気刺激療法や超音波、両方を同時に行うコンビネーション治療を実施できます。
そこで、訪問リハビリでも活用できる機能や活用方法について紹介します。
●ADLやIADL練習前の疼痛緩和が効果的にできる
訪問リハビリでも疼痛があるため、実施したい練習が難しい場合も少なくありません。
実際、整形外科や整骨院で超音波や低周波治療に通っているという利用者さんもいるでしょう。
フィジシステムはそのような利用者さんに、訪問リハビリの場面で超音波や低周波の治療をすることができるため、整形外科などに行かなくても疼痛緩和を図ることができます。
フィジシステムでは、電気刺激と超音波、そして両方の治療を同時にするコンビネーション療法という3つの治療が実施できます。
また、各治療法は以下のような多彩なプロトコルが設定されています。
治療の種類 | 可能なプロトコル |
---|---|
低周波 | ・41通りの治療プロトコル ・高電圧、ロシアンカレント、4極干渉、微弱電流、TENS、ガルバニック電流、ジアジナミー電流、感応電流の9種類の電流波形が可能 ・五十肩、慢性腰痛、変形性膝関節症、ふくらはぎの血行促進 など在宅で遭遇しやすいプロトコルが搭載 |
超音波 | ・75通りの治療プロトコル ・坐骨神経痛、手根管症候群、変形性膝関節症、下腿三頭筋の進呈性促進など豊富な設定が可能 |
コンビネーション | ・線維筋痛症における圧痛点の特定と圧痛点の治療の2種類のプロトコル |
そのため、利用者さんにあった疼痛緩和の治療を選択することができ、運動時に生じる疼痛を軽減すれば、より質の高いリハビリを提供することができます。
●急性期の炎症や組織損傷の治癒促進で超音波を活用
超音波の特徴は急性期で炎症があるような状態でも、非温熱作用による消炎鎮痛効果や組織修復の促進が期待できます。
訪問リハビリでは、急性期の炎症症状がある場合、可能な治療が極端に少なくなってしまいます。
そのような場合でも、超音波の非温熱作用を活用すれば、利用者さんの状態改善のために必要な治療を提供できます。
●ハンズフリーでの治療が可能な「Status」を活用すればほかの治療も同時に可能
フィジシステムのオプションとして、ハンズフリーで超音波が実施できる「Status」があります。
超音波のプローブをリハビリ職が持つ場合、ほかの治療をするのが難しくなります。
しかし、ハンズフリーになることで、超音波をしながらほかの部位の治療ができ、より効率的なリハビリが可能です。
ドクターメドマーで浮腫の軽減をしながら運動をしよう
訪問リハビリでは、下肢の浮腫が見られる利用者さんが多いですが、直接に介入する時間がない場合も少なくありません。
そこで、おすすめなのがドクターメドマーを活用する方法です。
ドクターメドマーはカフで上下肢を広く包み込み、空気によるマッサージをすることで、たまった血液やリンパ液を徐々に心臓へと戻す物理療法機器です。
上肢用と下肢用があり、どちらも持ち運びが可能なサイズです。
●上肢のメドマーをしながら下肢の筋力エクササイズ
脳卒中の麻痺の影響などで上肢を動かせずに循環不良となり、浮腫が見られるケースがあります。
そのような場合、浮腫の軽減をするために上肢メドマーが活用できます。
上肢のメドマーをしている間に、下肢の筋力強化運動やストレッチをすれば、効率的な治療ができます。
●下肢のメドマーをしながらIADLや手指の練習
下肢のメドマーを実施している間は、上肢のROMや運動療法、手指の巧緻性トレーニングをすることができます。
座位であれば、テーブルを使用して調理や洗濯物畳み、作品作りなどのIADLも可能です。
セラピーパテやペグボードの器具を活用すれば、効率よく巧緻動作の練習をすることができます。
物療機器をフル活用して限られた時間で最大限の結果を出そう!
訪問リハビリでは、活動や社会参加に向けて、実践的なリハビリが必要とされます。
しかし、少しでも麻痺や疼痛、浮腫といった身体機能の改善を求める利用者さんも少なくありません。
また、身体機能の改善が、動作の改善や活動量、意欲の向上につながる場合もあります。
そのために、物療機器を施設の中でだけでなく、在宅でも活用していくことが、効率的・効果的な方法の1つです。
限られた介入時間の中で最大限の結果を出すためにも、物理療法の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
OGウエルネス アイビス GD-611/612(2019年12月3日引用)
OGウエルネス フィジシステム CT-7(2019年12月3日引用)
OGウエルネス ドクターメドマー DM-6000-S1/S2(2019年12月3日引用)
二瓶太志,他:脳卒中後重症上肢麻痺に対する新しい治療戦略.脳神経外科速報27(9):929-936,2017.
福田貴洸, 他:促通反復療法と IVES の併用療法(2 回/週,訪問リハビリテーション)が有効 だった重度片麻痺上肢の一例.第52回日本理学療法学術大会 抄録集,2017.
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級