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パワーアシストスーツやマッスルスーツの活用で、施設での介護もラクラク

仕事で腰など体を痛めやすいことは、介護職員にとって悩みの種です。
この現状を救うべく、持ち上げる力を補助する「パワーアシストスーツ」や「マッスルスーツ」が登場しています。
どのような製品でどれだけの効果があるか、この記事で解説していきます。

日々の業務の大きな助けとなるアシストスーツを現場に導入するには

介護職員が介護業務に当たる際の課題

介護職員が介護業務に当たる際の課題

介護職員が介護業務に当たる際の課題には、そもそも力仕事が多く重労働であるという点が挙げられます。
さらに介護職は人手不足の職種であることから、誰でも働きやすい環境を整え、より多くの方が働いてもらえる工夫が必要という点も課題です。
それぞれについて、詳しく解説していきます。

●介護の現場は体への負担が大きく、特に腰を痛めやすい

介護労働安定センターは「令和元年度 介護労働実態調査結果」の中で、介護労働者が抱える労働条件の悩み等を公表しています。
その結果によると、3割の方が「身体的負担が大きい」ことを挙げている点は注目すべきといえます。
これは人手不足や賃金の低さに次いで3番目であり、労働環境を改善すべき主なポイントとなっています。

なかでも「腰痛で悩む介護スタッフを守るために…。介護施設で取り組む腰痛対策」記事で挙げている通り、腰を痛める方が多くなっています。
独立行政法人労働者健康安全機構は、2018年3月に介護職員の腰痛について、以下の通り公表しています。

腰痛のレベル 比率
腰痛を伴うことはなかった 10.6%
腰痛を伴うことはあったが、仕事に支障を来すことはなかった 60.3%
腰痛のため仕事に支障を来したこともあったが、欠勤(休職)はしなかった 26.4%
腰痛のため、欠勤(休職)をしたことがある 3.3%

引用:独立行政法人 労働者健康安全機構 第3期労災疾病等医学研究「社会福祉施設の介護職職員における腰痛の実態調査、画像診断と予防対策に係る研究・開発、普及」研究報告書【腰痛】pp.2-3.

実に9割近い介護職員が、腰痛を訴えているわけです。
もし職員が腰痛により次々と休職したら、施設の運営が危ぶまれる自体となりかねません。
職員の健康を守るためにも、腰痛を防ぐための環境改善が求められます。

●高齢者でも、介護の現場で活躍してもらう必要がある

介護職は、人手不足が深刻な職種の1つです。
「令和元年度 介護労働実態調査結果」によると、介護職員が不足していると回答した施設は69.7%にのぼっています。
また不況時においても介護職の求人倍率は高いままであり、人手不足が続いています。
一例として2020年8月の有効求人倍率は新型コロナウイルスの影響から1.04倍にとどまる一方で、介護サービスは3.21倍と高い倍率です。

このため20代から70歳を超える方まで、幅広い方が貴重な戦力として活躍しています。
特にさきの「介護労働実態調査結果」によると、介護労働者のうち60代以上が占める割合は22.4%におよびます。
これは労働者のうち、40歳未満が占める割合に匹敵する数字です。

また60代以上の労働者数も2015年の15,352人から2019年は19,711人と、4年間で28%増加しています。
従って若手だけでなく、高齢者も快適に働ける仕組み作りが求められています。

介護業務を楽にする手段として、パワーアシストスーツが有効

介護業務を楽にする手段として、パワーアシストスーツが有効

介護業務を楽に行うには、パワーアシストスーツやマッスルスーツの活用が有効です。
これにより介護職員の腰を守れることはもちろん、安心して働けることによるメリットも見逃せません。
そのポイントを3つに分けて、解説していきます。

●少ない力で持ち上げられるとともに、腰への負担も軽減する

腰への負担を軽減できることは、パワーアシストスーツが持つ大きな特徴の1つです。
パワーアシストスーツは、人が持ち上げる力をサポートする働きをします。
また体の動きをサポートすることで、腰など体への負担も軽減します。

介護職員は高齢者の抱きかかえなど、何かと腰への負担が大きいもの。
パワーアシストスーツを使うと今までよりも少ない力で業務を行えるため腰痛を防ぎ、余裕を持って介護業務を遂行できるようになります。

●「介護は重労働」という課題を解決できれば、応募者数の増加も期待できる

不況時でも介護職の求人倍率が高く推移している原因の1つに、重労働であるという点が挙げられます。
これにより意欲があっても、大きな力を出せない方や腰を痛めやすい方は応募に二の足を踏んでしまう可能性があります。

パワーアシストスーツによりこの課題をクリアできれば、意欲を持ちながら大きな力を出せない方も応募できるようになります。
介護施設の側も体力を気にせず、より良い人材を採用できることはメリットの1つです。

●介護される側にとっても、「職員に介護されている」という安心感が得られる

パワーアシストスーツを活用するメリットには、入所者に安心感を与えられるという点も挙げられます。
これは、ロボットなどの機械が直接介護を行うこととの大きな違いです。

ロボットを使えば介護職員の代わりになりますが、入所者はどうしても不安になるものです。
一方でパワーアシストスーツは、介護職員が着用した上で介護を行います。
入所者の身体に触れるのは介護職員であるため、いつも通り「職員に介護されている」という安心感を得られることがメリットとなります。

代表的なパワーアシストスーツやマッスルスーツを紹介

代表的なパワーアシストスーツやマッスルスーツを紹介

パワーアシストスーツはCYBERDYNE(サイバーダイン)「HAL」やイノフィス「マッスルスーツ」などを皮切りに、複数のメーカーから発売されています。
ここでは代表的なパワーアシストスーツを取り上げ、それぞれのメリットを解説していきます。

●サイバーダイン「HAL 腰タイプ 介護支援用」

歩行支援ロボットなどを開発するサイバーダインでは、介護従事者向けの「HAL 腰タイプ 介護支援用」も発売しています。
腰と足で固定するタイプであり、数分で装着できる簡便さが魅力です。

楠元は2015年にHALを導入開始した鹿児島県の介護施設「アルテンハイム加世田」において、以下の成果を報告しています。

  • ○機器の重量は3kg程度で重さを感じない。一方で腰への負担を25~40%軽減する効果がある
  • 2~3分程度で装着可能。装着したままほかの業務も行える
  • ○介助に2人必要だったケースでも、1人で安全に介助できるようになった
  • ○人員に余裕ができたため、歩行訓練等の自立介護支援を強化できた

最新型の「介護・自立支援用」モデルでは以下の機能も加わっており、より使いやすい製品となっています。

  • ○モード切り替え機能により、介護する側と介護される側のどちらにも対応可能
  • ○防塵・防水機能を搭載。負担の大きい入浴介助にも利用できる
  • 装着は最短10秒で可能

●イノフィス「マッスルスーツ」

「マッスルスーツ」は、2013年に株式会社イノフィスから発売開始されました。
着用は背負う要領で行い、肩と腰で固定します。
圧縮空気を活用し、主に腰を補助することが特徴の製品です。

マッスルスーツは複数の介護施設において、移乗介助や入浴介助、おむつ交換などの場面で導入されています。
利用する介護職員からは、以下の評価を得ています。

  • 腰痛持ちの方でも、楽に介助業務をこなせる
  • ○おむつ交換に代表される、中腰での反復作業で効果がある
  • 「腰を痛めないか」という不安から解放される

2019年11月に発売開始された「マッスルスーツEvery」は、136,000円(税込)と安価で購入できるようになりました。
一方で本体の重量は3.8kgであり、25.5重量キログラムの補助力があります。
このため「作業が楽になる。もっと早く欲しかった」といった、高い評価を得ています。

介護職員の労働環境改善と健康を守るためにも、導入の検討を

パワーアシストスーツやマッスルスーツの活用により、介護施設の労働環境は改善し、職員も腰を痛めにくくなっています。
職員が楽に介護できるようになることは、職場と入所者を守るためにも重要です。
介護職員が腰を痛めて休職し、代わりの方を採用するコストを考えれば、本記事で紹介した製品を導入するほうが安上がりといえます。
職場にまだ導入されていない場合は、導入に向けて検討されることをお勧めします。

参考:
全国商工出版サービス: ロボット/介護 社会福祉法人みなの福祉会/埼玉県皆野町 パワーアシストスーツが、組織改革に一石を投じる. 商工会59巻8号: 26-28, 2018.
山本圭治郎: 装着型パワーアシストスーツ・ハンドの開発. 地域ケアリング18巻1号: 19-24, 2016.
オージー技研 介護職員を腰痛から守る!知っておきたい介助のコツ4つ ベッド上介助編(2020年10月18日引用)
オージー技研 腰痛で悩む介護スタッフを守るために…。介護施設で取り組む腰痛対策(2020年10月18日引用)
オージー技研 介護職は精神的な疾患の労災請求件数がトップ!仕事を続けるための気持ちの持ち方や体のケア(2020年10月18日引用)
オージー技研 介護現場の深刻な人手不足の実態とは?経営に役立つ対策を解説!(2020年10月18日引用)
独立行政法人 労働者健康安全機構 第3期労災疾病等医学研究「社会福祉施設の介護職職員における腰痛の実態調査、画像診断と予防対策に係る研究・開発、普及」研究報告書【腰痛】(2020年10月18日引用)
公益財団法人 介護労働安定センター 令和元年度「介護労働実態調査」の結果(2020年10月18日引用)
公益財団法人 介護労働安定センター 介護労働の現状について(2020年10月18日引用)
厚生労働省 一般職業紹介状況(令和2年8月分)について(2020年10月18日引用)
厚生労働省 一般職業紹介状況(令和2年8月分)について 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(除パート)) (2020年10月18日引用)
NTTコムウェア 介護者の身体的負担を軽減するパワードスーツも登場(2020年10月20日引用)
レオパレス21 少子高齢化対策の希望の星は「パワーアシストスーツ」?市場が拡大!高齢者の補助や介護など労働力不足の課題解決へ(2020年10月20日引用)
日経BP パワーアシストスーツ、作業現場の“救世主”に(2020年10月20日引用)
CYBERDYNE HAL腰タイプ介護支援用(2020年10月20日引用)
CYBERDYNE HAL腰タイプ 特設サイト(2020年10月20日引用)
CYBERDYNE 新製品 HAL腰タイプ「介護・自立支援用」を8月に販売開始(2020年10月20日引用)
楠元寛之 介護職のイメージチェンジを目指して~HAL介護支援用ロボットの導入~(2020年10月20日引用)
CYBERDYNE 重介護ゼロ社会の実現に向けて!HAL腰タイプ介護・自立支援用(2020年10月20日引用)
公益社団法人かながわ福祉サービス振興会 ロボットスーツHAL 介護支援用 腰タイプ(CB02) (2020年10月20日引用)
エネルギア・コミュニケーションズ HAL 腰タイプ介護・自立支援用(2020年10月20日引用)
イノフィス 製品情報(2020年10月20日引用)
イノフィス マッスルスーツエブリィ 製品情報サイト(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 健祥会 様(徳島県徳島市)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 あますみ園 様(福岡県北九州市)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 うねめの里 様(福島県郡山市)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 セントラル大田 様(東京都大田区)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 新とみ 様(東京都中央区)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 ひだまり苑 様(秋田県大潟村)(2020年10月20日引用)
PALTEK 採用事例 砧ホーム 様(東京都世田谷区)(2020年10月20日引用)
PALTEK マッスルスーツ Every(2020年10月20日引用)
ウェルクス 介護ロボットONLINE 21名のスタッフで2台をフル活用!マッスルスーツの導入成功事例(友愛十字会・砧ホーム)(2020年10月20日引用)
イノフィス 【マッスルスーツ導入事例】砧ホーム【介護施設】(2020年10月20日引用)
コトバンク 重量キログラム(2020年10月22日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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