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介護DBやVISIT、CHASE。介護施設で活用が求められる理由を解説

介護の分野では以前から使われていたデータベース「介護DB」に加えて、「VISIT」と「CHASE」も使われています。
必要となった背景には、科学的介護があります。
本記事では各データベースの説明と求められる背景について、解説します。

介護DB VISIT CHASE それぞれの活用法を解説

介護分野でデータベースの活用が求められる3つの理由

新人でもベテランでも一定のサービスを提供するための情報共有

介護の分野においてもデータベースの活用が求められる背景には、3つの理由があります。
いずれも、より良い介護を実現するために必要な項目です。
それぞれの理由について、解説していきましょう。

●個々の経験だけでなく、エビデンスに基づいた「科学的介護」が必要

介護においても研究が進み、利用者の状態に応じてどのようなサービスが効果的か、情報が蓄積されてきています。
このような時代では、個々の経験が必ずしもベストな結果を生むとは限りません。
むしろエビデンスに基づいた「科学的介護」を行うことで、より良い介護や生活状況の改善に結びつきやすくなります。
経験の浅い方や新しい施設においても、利用者が満足ゆく介護をしやすくなることはメリットといえるでしょう。

●介護の向上のため、第三者からのフィードバックが重要

介護を行う上でどのように進めるべきかは、施設ごとに蓄積されている組織知も多いことでしょう。
それでも、ほかの施設とくらべて劣っている項目は発生します。
施設で働く方はなぜ違いが出るか、自らの力だけではなかなか気づきにくいもの。

厚生労働省が運用している「VISIT」や「CHASE」を活用することで、より良い介護に向けたフィードバックを受けられます。
これにより、介護の質の向上に結びつけることが可能です。

●2021年度に介護報酬が改定。より多くの収入を得るための条件に

介護施設を運営するためには、収入となる介護報酬も重要なポイントです。
2021年度の介護報酬改定で、VISITやCHASEといったデータベースの活用により、介護報酬を増やせる項目が多く示されています。
代表的な項目を、以下の表に示しました。

項目 介護報酬の増加分 VISIT CHASE
栄養マネジメント強化加算 11単位/日
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算 33単位/月
自立支援促進加算 300単位/月
かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ) 140単位(CHASEの利用により、100単位から240単位に増加する)
褥瘡マネジメント加算 3~13単位/月
排せつ支援加算 10~20単位/月

個々の加算分は多額でなくても、多数にのぼると大きな収入の違いとなりますからおろそかにはできません。

介護施設で活用が求められる3つのデータベース

介護保険総合データベース VISIT CHASE

科学的介護を実現するため、厚生労働省は介護施設に対し、以下に挙げる3つのデータベースを活用するよう推奨しています。

  • ○介護DB
  • ○VISIT
  • ○CHASE

それぞれのデータベースについて、特徴や用途を確認していきましょう。

●介護DB(介護保険総合データベース)

介護DBには、以下に挙げる情報が格納されています。

  • ○介護レセプトに関する情報
  • ○要介護認定情報

介護DBは介護保険に関する情報は格納されているものの、リハビリや高齢者の状態に関する細かい情報は格納されていません。
このため介護DBだけで利用者の実態を詳しく把握することは、難しいと考えられます。

●VISIT

VISITは、リハビリの情報を収集するデータベースです。
2017年度から通所・訪問リハビリテーション事業所を対象に運用が開始され、2020年3月末時点で、631事業所が参加。
2021年の時点では、すべての事業者に対して活用が推奨されています。

VISITには、以下の項目が格納されています。

  • ○興味・関心チェックシート
  • ○リハビリテーション計画書
  • ○リハビリテーション会議録
  • ○プロセス管理票
  • ○生活行為向上リハビリテーション実施計画

上記のデータを入力して提出すると、厚生労働省からフィードバックが受けられることも特徴の1つです。

●CHASE

CHASEは、高齢者の状態やケアの内容等を記録するデータベースです。
VISITを補完するものとして位置付けられ、2020年度から運用が開始されました。

格納されている項目は多岐にわたりますが、代表的な項目には以下のものが挙げられます。

  • ○性別、生年月日、同居家族等
  • ○身長、体重
  • ○既往歴、服薬情報
  • ○認知症の既往歴
  • ○褥瘡の有無
  • ○栄養補給法、提供栄養量、主食・副食の摂取量
  • ○食事の留意事項、嚥下状況

いずれも、適切な介護に役立つ情報です。

●2021年度から、VISITとCHASEは「LIFE」として一体運用されている

ここまで解説してきた3つのデータベースのうち、VISITとCHASEについては2021年4月から「LIFE」として一体運用されます。
LIFEとは、「科学的介護情報システム」の略です。

利用する際は、事前にLIFE公式サイトで利用申請を行った後、IDとパスワードが記載されたはがきの到着を待つ必要があります。
ただしCHASEを利用していた場合は、そのID・パスワードをそのまま利用できます。
またVISITだけを利用していた場合は、「アカウント引継ぎ」操作を行うことで利用できます。
詳しくはLIFE公式サイトにある、導入手順書をご参照ください。

データベースを活用した介護で心がけたい4つのポイント

患者さんの大切な情報を守るために セキュリティ対策は万全に

データベースを活用した介護を実施する際には、単に効率化や介護報酬のアップだけに目を向けていてはいけません。
さまざまな観点で、押さえておきたいポイントがあります。
ここからは4つのポイントを取り上げ、重要な理由を詳しく解説していきます。

●補助金も制度化されている。IT化を早めに進めることをお勧め

介護DBやLIFEを活用する場合は、介護施設のIT化が必要です。
厚生労働省は以下の要領で、地域医療介護総合確保基金を活用した補助金の制度を設けています。

  • ○介護ソフト、タブレットやスマートフォン等に加えて、Wi-Fi機器や設置費、業務効率化に資するソフトも対象
  • ○施設の規模に応じ、最高260万円(職員が31人以上の場合)の補助が受けられる
  • ○LIFEの活用やサービス提供票の連携を行っている施設は、補助率が50%以上から75%以上にアップ

ここで補助金は国が求める「介護施設のIT化」を進める目的で設けられた予算ですから、期限があることに留意が必要です。
もし国が「IT化の目的は達成された」と考えた場合、以後の予算はつきません。
その場合は、以下のデメリットをこうむりかねません。

  • ○ITへの投資を行っても、国からの補助金が受けられない
  • ○受け取れる介護報酬は、IT化を進めた場合とくらべて低くなる(施設の収入が減る)

どこかの時点でIT化を進める必要があるならば、できるだけ支出は少なく、収入は多くしたいもの。
IT化を早く進めることで一時的に経費が増加するものの、数年後までのトータルで見ると収支の改善が期待されます。

●大切な情報を守るためにも、セキュリティ対策は万全に

LIFEの活用を契機に、一層のIT化を進める介護施設も多いことでしょう。
ここでセキュリティ対策そのものに不備があったり、職員のなかにセキュリティ対策をおろそかにする方がいたりすると、どうなるでしょうか。
外部から侵入されてしまい、重要なデータが改ざんされたり、持ち出されたりしかねません。

このため、セキュリティ対策を万全にすることが求められます。
職員にも定期的にセキュリティ研修やチェックを行い、被害を未然に防ぎましょう。

セキュリティ対策については、以下の記事も参考にしてください。

○クリニックでもできるセキュリティ対策!これだけはやっておこう
○介護施設でWi-Fiを導入する方法。Wi-Fiならではのポイントを解説します

●法令改正など、制度の改定情報を常にチェックしよう

介護DBやLIFEへの入力項目は、法令改正により追加・変更となる可能性があります。
このため「対応したからOK」と考えず、常に法令改正の動向をウォッチすることが求められます。
もしシステム的な対応が必要な場合は、早めの対処が安心です。

●「人と向き合う仕事」という点を忘れずに

データを活用した「科学的介護」が進むと、職員はタブレット端末やスマートフォンを常時持ち歩くようになるでしょう。
利用者ごとに必要な介護内容が自動的に表示され、その通りに対処すれば良い時代になるかもしれません。

しかしどれだけIT技術の恩恵を受けたとしても、介護は代表的な「人と向き合う仕事」であることを忘れてはいけません。
データを存分に活用しつつ、利用者に対して温かく、できるだけ希望に沿う姿勢を持ち続けることが重要です。
また利用者や家族に対して納得してもらえるよう、説明を工夫する姿勢も求められます。

LIFE(VISIT・CHASE)の活用で、効果的な介護と収入増を実現可能

介護DBに加えてLIFEを活用することにより、確かな知見に基づいた介護を実現できます。
ほかの施設との違いに気づくことで介護の質をレベルアップできる
ことも、メリットに挙げられます。
もちろん収入がアップすることも、重要なポイントです。

介護施設のIT化には補助金がありますが、いつまでも制度が続くとは限りません。
早めにIT化を実現し、科学的介護の実践と収入増につなげることをお勧めします。

参考:
厚生労働省 令和3年度介護報酬改定の主な事項について pp.21-32.(2021年4月18日引用)
厚生労働省 科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順例及び様式例の提示について(2021年4月18日引用)
厚生労働省 LIFE(VISIT・CHASE)による科学的介護の推進(イメージ)(2021年4月18日引用)
厚生労働省 令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進)pp.35-45.(2021年4月18日引用)
公益社団法人全国老人福祉施設協議会 LIFEの活用(2021年4月18日引用)
厚生労働省 LIFE公式サイト(2021年4月18日引用)
厚生労働省 LIFE科学的介護情報システム導入手順書 pp.12-50.(2021年4月18日引用)
QLCシステム 【令和3年度報酬改定】「CHASE」が科学的介護情報システム「LIFE」に(2021年4月18日引用)
厚生労働省 地域医療介護総合確保基金を活用したICTの導入支援(2021年4月18日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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