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住民は認知症患者のみ・オランダの革新的な村ホグウェイ(Hogewey)から学べること

認知症ケアの有り様は、現在世界のどの社会においても常に改善を要している課題です。
今回の記事では、オランダ北部にある認知症村・ホグウェイ(Hogewey・2009年オープン)の取り組みをご紹介します。
ヨーロッパでも2つとないそのユニークな認知症ケアは、日本の認知症ケアの現場にとっても、学べる点が数多くありそうです。

オランダの認知症村・ホグウェイ(Hogewey)とは

ホグウェイはオランダ北部・アムステルダムから車で約30分の場所に位置し、認知症患者のみが居住する小さな「認知症村」です。
2009年のオープン以来、その革新的な取り組みが注目を集め、世界的に高い評価を受けてきました。
村には23棟の住居建物のほか、劇場やスーパー、外来クリニック、美容院、カフェやレストランなど生活に必要な施設がそろっています。
さらに、共通の趣味やバックグラウンドをもつ患者同士がともに暮らせるよう、施設は7つの異なるコミュニティに分かれています。
コミュニティはそれぞれの生活スタイルに合うインテリアで整えられており、住民が「我が家」と感じられるよう工夫されています。
ホグウェイの施設のドアには鍵がかけられておらず、住民は好きなときにいつでも外に出られます。
公園や庭を含むすべての屋外スペースは施設内になっているため、住民が自由に歩き回っても常に安全性が保たれています。
たとえ施設内で迷ってしまってもスタッフが家まで送り届けてくれますし、スーパーでお財布を忘れたり同じ商品を大量に購入しても、あとでスタッフが対応してくれます。
このようなさまざまな工夫により、住民は個人としての尊厳を失うことなく、ホグウェイにおけるコミュニティの一員として社会生活を継続できるのです。

●2人のオランダ人建築家による考案

ホグウェイの構想・創立を手がけたのは、オランダのティルブルグ出身の建築家・フランク・ヴァン・ディレン(Frank van Dillen)とマイケル・ボル(Michael Bol)の2人です。
2人はともにDVA(Dementia Village Advisors)という組織を立ち上げ、ホグウェイはそのプロジェクトの一環として手がけられました。
彼らはティルブルグにある同じ建築学校を卒業しており、共同で建築会社も経営しています。
建築家としてキャリアをスタートさせた2人をDVAの活動へ駆り立てたのは、それぞれの家庭における経験でした。
フランクの息子は生まれつき耳が聞こえないハンディキャップを抱えており、マイケルの祖母はアルツハイマー患者でした。
彼らの活動の原動力は、認知症患者が人生を楽しみ・醍醐味を味わいつつ、家族・介護スタッフ・医療関係者とともに安心して暮らせる環境を提供したいという強い思いです。

ホグウェイの環境が維持できる理由:「健康生成論」に基づいたケア

認知症患者の尊厳の維持と生活における自由度については、安全性の懸念に加えスタッフ不足の影響もあり、特に両立が難しい点です。
それにも関わらず、主に重度の認知症患者を対象としたホグウェイでは、住民が各コミュニティの中で個々の尊厳を保ちつつ自由な生活を送ることができます。
村の取材記事には住民がそれぞれの生活を楽しんでいる様子が描かれており、読めば認知症患者とその生活に対する概念が覆されるでしょう。
果たしてなぜホグウェイではこのような理想的な環境を保てるのでしょうか

●健康生成論とは

その答えの鍵は、ホグウェイがモットーとして掲げている「健康生成論(英名:salutogenesis)」にあると考えられます。
1979年、イスラエルの医療社会学者・アントノフスキーによって提唱された健康生成論は、生活習慣など人々が健康を獲得するための健康因子(salutary factor)に注目しているのが特徴です。
これは病気の原因・要因等の危険因子(risk factor)に注目し、それらの除去で健康の回復を目指す往来の「疾病生成論(pathogenesis)」とは対をなす理論です。
ホグウェイの個人の意思尊重を重視した認知症ケアの有り様は、まさにこの健康生成論を体現しているともいえるでしょう。

ホグウェイの取り組みから学べること

ホグウェイの取り組みのなかで最も特長的なのは、認知症という病気と患者に対しポジティブな姿勢を崩さない点です。
認知症ケアの向上を妨げている要因のひとつとして、社会における認知症患者への偏ったイメージがあります。
先述の「危険因子」のように患者を扱い、認知症の「困った」症状をいかに削減していくかという点に認知症ケアの焦点が当てられているようです。
一方、ホグウェイのケアでは認知症患者(住民)の意思と日常生活を送る能力を信じ、スタッフや医療関係者の連帯で安全性は確保しつつ、あくまでも患者(住民)の生活を「見守る」スタンスが保たれています
ドイツやスイスなどオランダ近隣の国からは、既に教育のため多くのスタッフがホグウェイへ派遣されています。
文化の違いや資金面の問題は課題として残りますが、日本からもスタッフ派遣の機会を設けることは有効な手段と考えられます。
ホグウェイ流の認知症ケアを無理のない形で日本社会へ取り入れることができれば、日本社会における認知症ケアの質の向上はもちろん、認知症と患者に対する概念の変革も期待できるでしょう。

まとめ

ここまでオランダの認知症村・ホグウェイについて、施設の概要と取り組み、「健康生成論」に基づいたケアの様子をご紹介しました。
またその取り組みから学べる点として、認知症と患者に向けられる「ポジティブな姿勢」を挙げました。
認知症患者(住民)への「信頼」、そして彼らに敬意を払いその生活を「見守る」姿勢が、現在のホグウェイを唯一無二の存在にしているといえます。
生き生きと日常生活を送るホグウェイの住民の様子は、今後の日本および世界の認知症ケアにおいて、明るい道しるべとなってくれるはずです。

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参考:
“Dutch Village Offers Dignified Care for Dementia Sufferers”(2018年1月30日引用)
Dementia Village Advisors ウェブサイト(2018年1月30日引用)
Hogeweyk ウェブサイト(2018年1月30日引用)
「なぜ健康でいられるのか?ー健康生成論」(2018年2月1日引用)
「健康生成論に基づいた『健康に生き抜く力』の概念に関する研究ー概念モデル抽出のための文献検討ー」(2018年2月1日引用)

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