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これがイギリス流!日本とこんなに違う介護サービス。現場が取り入れるべき介護とは

イギリスは、介護ケアが充実している国として知られています。
今回はイギリスの介護施設で働いていた筆者が、イギリスと日本における介護ケアの違いについてご紹介していきたいと思います。

筆者がイギリスで働いていた介護施設を紹介

まずは、筆者がイギリスで働いていた施設についてご紹介します。
日本の介護施設とは違った部分も多いため、新鮮に感じられるかもしれません。

●建物の仕組み

筆者がイギリスで働いていたのは、通常のケアホームと認知症専門のグループホームが隣接した形の施設でした。
イギリスでは新築の建物を目にすることが少なく、古い建物を修理・改造しながら使用していくのが普通です。
そのため小規模の介護施設や医療機関も、年季の入った家を利用していることが多く、筆者が働いていた施設もビクトリアン様式の家を改造した建物でした。

通常のケアホームのエリアは、地下に洗濯・アイロンを行うランドリーエリア、一階はキッチン・食堂・リビングルーム、二階・三階は利用者さんそれぞれの個室・そのほか浴室などの共用設備になっていました。

一方、認知症専門のグループホームのエリアは一階のみ。
鍵のかかったドアを開けると、共用のリビングルーム・ダイニングルーム・スタッフが簡単な朝食やお茶を準備する小さなキッチンがあります。
奥の廊下の両脇には浴室・シャワー室・お手洗い、その向こうに利用者さんの個室が並んでいるという形でした。

●ケアの様子

介護スタッフは、通常のケアホーム・認知症専門のグループホームのエリアに分かれて配置されます。
筆者は日本のデイサービス・グループホームで働いていた頃、認知症を抱えた利用者さんと触れ合うことが多かったので、認知症専門のグループホームを希望しそこの専属スタッフとして働いていました。

通常のケアホームの利用者さんは要介護度が高く、ほぼ全員が生活のすべてにおいてサポートを必要としていました。
そのため利用者さんのベッドの横には呼び出し用のボタンが設置されており、それを押すと介護スタッフ・看護師に知らせがいくようになっていました。

イギリスの介護ケアでは、要介護度が高い利用者さんに対して移動の際「hoist(ホイスト)」と呼ばれる、吊り上げ式の補助器具を使用します。

安全な利用者さんの移動、そしてスタッフの体にも負担がかからないように、という目的で使われることが多いものですが、使用まえにしっかり使い方を習得する必要があります。

ケアホームのエリアでは、看護師や介護スタッフが利用者さんの様子を伺いやすいよう、個室のドアは常に開け放たれた状態でした。
一方、認知症専門のグループホームの利用者さんは、認知機能に問題があるものの身体機能には問題がなく、生活の大部分を自力で行えたため、プライバシーを尊重して個室のドアは常に閉まっている状態でした。

イギリスと日本の介護施設(グループホーム)はここが違う!

筆者の経験上、イギリスと日本のグループホームでは異なるポイントがあり、それは大きく分けて「スタッフの役割分担制度」「レクリエーション」「食事内容」の3つといえます。
それぞれ順番に見ていきましょう。

●スタッフの役割分担制度

スタッフが介護および家事などの役割を兼任する日本のグループホームとは異なり、イギリスではスタッフの専門性に合わせて、介護・調理・洗濯・掃除・看護などそれぞれの分野ごとに配置されます。
筆者は介護スタッフとして勤務していたので、介護以外は簡単な朝食(紅茶とトースト、シリアルなど)作りとキッチンから運ばれてくる食事の配膳を受け持つ程度でした。

また日本のグループホームでは日々の服薬管理を介護スタッフが担当するのが普通です。
しかしイギリスのグループホームでは通常、一日のシフトに看護師が必ず入っており、利用者さんの服薬管理を担当します。
このスタッフ間の役割分担によって、スタッフそれぞれが専門の業務に集中できるので、日本のグループホームよりも全体のスケジュールが効率良く循環していたように感じました。

●レクリエーション

イギリスのグループホームのレクリエーションの内容は、合唱・ボール遊び・体操・ダンス・編み物・施設周辺の散歩までさまざまでした。

しかし、レクリエーションの時間帯や内容は固定されておらず、その日の利用者さんの様子に合わせて臨機応変に、スタッフ一人ひとりが自主的に行っていく形でした。
そのため、イギリスのグループホームでのスタッフと利用者さんの関係は、日本のそれよりも個人的かつ自然で和やかなものだったように感じます。

そんななか、認知症がかなり進み、自分がどこにいるのかもわからなくなっている状態の方がお二人ほどいらっしゃいました。
常に混乱している状態で心も体も落ち着かず、いつもつらそうでした。

お二人ともスタッフが声をかけたり、アクティビティを進めてもあまり積極的な参加が見られなかったのですが、あるときスタッフがさりげなく勧めた編み物に突然興味を示し、手に取るなり没頭し始めたのです。
その後、お二人は以前よりも落ち着いた生活を送っているように見受けられ、個人的にホッとしたのを覚えています。

●食事内容

グループホームの食事内容には、正直最初は驚かされました。
イギリスの伝統的・一般的な食事といえば、フィッシュ&チップス、牛肉を使ったコテージパイ、ソーセージ&マッシュポテトなどかなり味が濃い料理ばかり。
スープも乳製品を用いたクリーミーなものが多く、若者でも体調が万全でないと胃がもたれてしまいます。

また、イギリス式の食事のあとにはデザートがつきもの。
デザートも果物のケーキやクランブル&カスタードクリームなど、これまたこってりしています。
イギリスのグループホームではこれらの食事が昼食と夕食、二食ずつ毎日続くのです。メインの料理は常に二種類あり、調理スタッフが毎日利用者さんの好みのメニューを聞きにやって来ますが、大抵どちらも先に挙げたようなヘビーな料理でした。

これら3つのポイントはどれにおいても、「認知症ケアはこうでなければならない」というような決まりの枠が緩く、ちょうど良い加減に力が抜けていたように思います。

ゆとりが持てない日本の介護、心に余裕を持つイギリスの介護

ここまでご紹介してきたなかで、気づかれた読者の方もいるかもしれませんが、イギリス流介護の良いところは介護スタッフの心に比較的余裕があるという点です。
スタッフが心に余裕を持つことで利用者さんの要望にも落ち着いて対応することができ、結果同じケアでもより良質なものを提供できます。

先に紹介したスタッフの役割分担によって、イギリスの認知症専門のグループホームではスタッフのスケジュールに余裕が生まれ、お茶の時間には利用者さんと一緒にスタッフもお茶とビスケットを楽しむことができます。
ビスケットの缶をそれぞれに回しながら利用者さんとあれこれ談笑する時間は、利用者さんのみならずスタッフの心も和めてくれ、結果ホーム全体に良い空気の循環が生まれていると感じました。

まとめ

ここまでイギリスと日本における介護ケアの違いについて、例を挙げながらご紹介してきました。

イギリスでは介護分野でも介護スタッフの専門性が認められており、日本のように身の回りのことは何でもするのではなく、掃除は掃除スタッフが行い、介護スタッフは介護をメインとして行うことができる環境であり、それが当たり前とされています。
日本ではあらかじめ決まったマニュアルとスケジュールにもとづいて介護プランが進行しますが、イギリスのような柔軟性を見習うべきところがあるかもしれません。

今回は、イギリスの施設の良い点に絞ってご紹介しましたが、イギリスの制度がベストだとはもちろんいい切れません。
日本に限らずイギリスのケアホーム・グループホームでも改善の余地はまだまだあるでしょう。
そんななか、異なる国の介護者同士が集まり、介護ケアの向上について知恵を寄せ合う機会があれば、介護ケアの質はおしなべて格段に上がると予想できます。
最先端の技術やテクノロジーだけではない、違った形のグローバリゼーションが今私たちの社会に必要なのではないでしょうか。

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