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高価な機器がなくても運動ができる!介護現場でセラバンドを活用する方法

介護現場で高価なリハビリ機器を購入するのは簡単なことではありません。
そんなとき、手軽に購入できるオススメの道具がセラバンドです。
しかし、セラバンドのなにがいいのか、どのように使うのかを具体的に知っている方は少ないのではないでしょうか?
今回は、介護現場ですぐに導入できる、セラバンドのメリットや使用方法を紹介します。

セラバンドを知っていますか?簡単に負荷がかけられるセラバンドの特徴

まずは、セラバンドがどのような道具なのか特徴を紹介します。
セラバンドはゴムのように伸縮するバンドで、その伸縮性を利用して、筋肉に負荷をかけた運動が可能です。
伸縮力は8段階あり、もっとも伸縮力の弱いバンドはタン(黄褐色)、もっとも伸縮力の強いバンドは金色というように、段階により色分けされています。
そのため、利用者さんの状態に合わせて細かく負荷の調整ができ、一度自分の使ったバンドの色を覚えておけば、すぐにちょうどいい強さのバンドを使用することができます。
事業所で購入する場合は、1ロール5.4mまたは46mとまとめて購入することができ、好みの長さにカットして使用することが可能です。
短くした場合は、バンドが伸びにくくなるため負荷が強くなり、長くした場合は逆に負荷が弱くなります。
基本的な使用方法はバンドの端を手で持ち、自分の身体やほかの場所にくくりつけて使用します。
使用上の注意点には以下のようなものが挙げられます。

  • ●皮膚の状態を観察して、傷や感染箇所があるところにはバンドを巻かないようにする
  • ●痛みが生じる場合は運動を中止する
  • ●バンドが裂けていたり、穴が空いている場合は急に切れる可能性があるため交換する
  • ●爪などのとがったものが当たると裂ける可能性があるため注意する

また、どのバンドを使用するかは、利用者さんが「ややきつい」と自覚する強さ(自覚的運動強度)を目安にしましょう。
荒井ら(2015)によると、自覚的運動強度は特別な機器がなくても、要支援・要介護者に対して、適切な負荷の運動を行うための目安として有効であるとされています。
そのため、運動中の様子を観察して利用者さんのコメントをしっかりと聞きながら、バンドの種類を選びましょう。

なぜおすすめなの?高齢者にセラバンドを使用するメリットを紹介

数あるリハビリ器具のなかでも、セラバンドをオススメする理由はいくつかあります。
そこで、セラバンドのメリットを文献による報告を交えながら紹介します。

●マシンを使わないトレーニングでも筋力向上の効果がある

身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドラインによると、マシンを使わない筋力トレーニングが推奨グレードA(行うように勧められる強い科学的根拠がある)とされています。
もちろん、マシンを使わないトレーニングのなかに、セラバンドのような伸縮性のあるバンドの使用も含まれています。
以上のように、セラバンドによる運動は、高齢者の筋力を向上するために有効な運動であると科学的にも証明されています。

●強すぎる運動は逆効果!?負荷の調整を細かく行うメリット

高齢者は心臓や呼吸器などさまざまな部分の障害を抱えていることが少なくありません。
そのため、強い負荷の運動は症状を悪化させるリスクがあります。
その点、8段階と細かく負荷の調整ができるセラバンドは、高齢者の運動にオススメの器具なのです。
また、Csapoら(2015)によると、高齢者に対しては負荷の低い運動でも、頻度をしっかりと行えば、十分なトレーニング効果があるとしています。
つまり自覚的運動強度を活用し、無理のない範囲の負荷を設定してセラバンドを活用すれば、十分効果のある運動が実践できるといえるのです。

●値段が手頃で、お手軽サイズ

リハビリ機器にくらべて、安く購入でき、持ち運びも便利なため、事業所に導入しやすいです。
また、安価であり場所をとらないことから、自主トレーニングの道具として利用者さんが直接購入することも可能です。
筆者の働く事業所でも、事業所での使用をきっかけに自主トレにつながっている利用者さんが多くいらっしゃいますので、詳しい導入事例を次の項目で紹介していきます。

理学療法士が教える介護現場での活用方法

介護現場では転倒リスクが低く、自主トレーニングにつながりやすい座位でのトレーニングがおすすめです。
筆者が事業所で実践している運動としては、次のような運動があります。

1)下肢の挙上運動

椅子の脚と足首にセラバンドをくくって、膝を伸ばすように下肢を挙上します。
太ももの表の筋肉を鍛える運動です。

2)脚を開く運動

両脚を閉じた状態で、太ももにバンドを縛ります。
ゆっくりと脚を開いたり閉じたりして、お尻から脚の外側の筋肉を鍛えます。

3)足踏み運動

両脚の太ももをバンドで縛った状態から、足踏みを行います。
脚の付け根の筋肉が鍛えられます。

これらの運動は車椅子を利用されている方でも実施できるため、多くの介護現場で実践が可能です。
筆者の事業所では、セラバンドを活用してもらうための工夫として、以下のようなことを実践しています。

  • ●運動を実施するにあたっての注意点を書いた、写真付きの説明書を作成
  • ●負荷量によってバンドの硬さが異なる点を活用し、バンドの硬さ別にラベリングしたボックスに収納
  • ●それぞれの利用者さんごとにオススメのバンドの硬さを設定

これにより、利用者さんが空いた時間に自分に合ったバンドを箱からだし、セラバンドの使用方法を確認しながら積極的に運動を行うようになりました。
こうした工夫をプラスすることで、自主的にトレーニングを行う利用者さんが増えるなど、自主性の向上にもつながっています。
さらに、運動回数を重ねるごとにステップアップ(硬いバンドを使えるようになる)が図れるため、利用者さんの運動に対するモチベーション向上にもつながった、という事例もあるなど、工夫次第でさまざまな活用方法があります。

まとめ

高いリハビリ機器でなければ運動の効果が得られない、というわけではありません。
手軽に活用できる道具でも、その効果や使い方をしっかりと理解していれば、有効なトレーニングを行うことができます。
高価なリハビリ機器の導入を検討する際にもその参考として、まずは知っておくべき運動のポイントや効果を気軽に体感できるセラバンドを、事業所に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考:
身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン(2018年2月6日引用)
荒井友章,杉浦令人, 他:要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案.理学療法科学30(2): 187-192, 2015.
Csapo R, Alegre LM:Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly:A meta-analysis.Scand J Med Sci Sports26(9):995-1006,2016

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