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施設内での感染を防ぐためには、手袋装着が必須!「スタンダードプリコーション」の基本をおさらい

介護が必要な方は、健康な方にくらべて身体の抵抗力が弱いため、肺炎や尿路感染などに感染しやすくなります。
だからこそ、施設内における感染予防対策は重要であり、職員一人ひとりが感染予防を意識することが大切となります。
そこで今回は、施設で行う感染予防について「スタンダードプリコーション」から考えていきます。

「もったいない」という考えは捨てる

スタンダードプリコーションって?

施設内における感染予防を考えたときにベースとしたい考え方、それが「スタンダードプリコーション」です。
この考えは、「感染症の有り・無しには関係なく、すべての血液や排泄物、体液や粘膜、傷のある皮膚は感染性のあるものとして扱う」というものです。
体液や粘膜とは、介護施設内では汗以外の唾液や口の中といった部分が当てはまります。
この考えにおいて重要な点、それは「感染症の有無に関係ない」という部分です。
感染症の有無を調べるためには、医療機関にて検査を行う必要があります。
また、検査をしたとしても結果が出るまで時間がかかってしまうことから、感染症と確認した後から対応していては、感染拡大を防ぐことはできません。
そこで、感染症の有無に関係なく、すべての方を対象に感染症の対策を行うことが重要となります。
介護施設においては、利用者さんの体内から外に出るものは、汗以外すべて感染源とみなして対応する、ということであり、それが、スタンダードプリコーションという考え方なのです。

基本は「受け取らない」こと、そして「渡さない」こと

利用者さんの体内から外に出るものは、汗以外すべて感染源とみなす。
この考えに従って感染対策を行う基本は、「受け取らないこと」そして「渡さないこと」の二つになります。
では、どうすればこの「受け取らないこと」そして「渡さないこと」が実行できるのでしょうか。
施設においてぜひ行いたい対策を2つ、ご紹介します。

●手袋の着用頻度を増やす

排泄物や体液、粘膜、傷のある皮膚に触れる際は手袋を。

まず基本としたいのが、手袋の着用です。
先ほどの考えにならい、「排泄物や体液、粘膜、傷のある皮膚に触れる際は手袋をする」ことを徹底します。
オムツ交換をする際には手袋をしている、という施設でも、食後の口腔ケアや乾燥した皮膚へ軟膏をぬる際などは、手袋をせず直接してしまってはいませんか?
感染症の有無に限らず、まずはこの考え方に習い、利用者さんへケアを行う際は基本的に手袋を必ず着用したうえで行うよう、心がけてみましょう。

●マスクの着用は行いたい。けれど…

介護職員は全員マスク着用を徹底

利用者さんの中にくしゃみや咳が出ている方がいた場合、「感染源を渡さない」という観点から利用者さんにマスク着用をお願いしたいところです。
しかし、介護施設へ入居されている方にマスク着用をお願いすることは、かなり難しいのが現状です。
マスクは本来、鼻と口をしっかりマスク全体で覆う必要がありますが、息苦しさやマスクの内部が蒸れてしまうことを不快に感じ、マスクを外してしまったり、アゴの下などに移動させてしまうことが多くなります。
くしゃみや咳をたっぷり含んだマスクを机などに置きっぱなしにしてしまい、それを別の利用者さんが使おうとしてしまうことも考えられます。
こうしたリスクを避けるために、介護職員は全員マスク着用を徹底するとともに、対象となる利用者さんについては、マスク以外の方法、たとえばくしゃみや咳が多く出ている間はお部屋にて安静にしていただくようにする、あるいは症状が治まるまで食事の時間などを少しずらし、ほかの利用者さんへの感染を防ぐなど、新たな対策を考えることが大切となります。

もったいないという考えを捨てよう!

感染を予防する、という考え方から広まったスタンダードプリコーションですが、職員のなかには「もったいない」という考えから、手袋やマスクを使い回す方がいらっしゃいます。
しかしこの考えでは、あくまで「1人につき1枚」が鉄則であり、手袋は1人使い終わったら、新たに手袋を用意することが必要です。
「もったいない」という気持ちを持つこと自体は、無駄な経費を抑えるためには大切な考えですが、手袋やマスクの使い回しが新たな利用者さんへの感染を呼び、結果としてより大きな損害を与えかねません。
将来の大きなリスクを回避するための費用として、感染予防対策に要する費用は惜しまずに対応していただけたらと思います。

まとめ

医療の現場において、以前は手袋をすることは患者さんに対して失礼だという理由から、オムツ交換時であっても手袋をしてはいけない、と指導されていた時期がありました。
そして今でも、職員が手袋やマスクを使うことに対し「失礼だ」と感じてしまうご家族はいらっしゃいます。
そのため、感染予防を行う際には事前にご家族へ「感染予防のために、全利用者さんを対象に行っていることである」ということを説明することが大切です。

参考:
森下幸子:超入門 在宅で生かせる感染対策:医療と介護Next:2015年1巻3号:pp62-63
森下幸子:超入門 在宅で生かせる感染対策:医療と介護Next:2015年1巻4号:pp70-71
大阪医科大学保健管理室 スタンダードプリコーション(標準予防策)(2018年3月6日引用)

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