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海外の介護現場をお手本に!日本の介護施設で実践したいスタッフの離職防止策

日本の介護現場においては、人手不足・離職といった問題が叫ばれ続けています。
介護福祉士の養成校でも定員割れになる学校がでてきており、介護を担う人材の確保は急務であるといえます。
ただ、海外では介護従事者が心にゆとりを持ち、ライフワークバランスを保ちながらゆったりと働くことを実現できているケースも少なくありません。
今回は、デンマーク・イギリスの実態から、介護職が働きやすくなる環境を探り、離職防止策として実践できることをお伝えしていきます。

福祉先進国のデンマーク 同じ職種の仲間を守る意識が高い

福祉を学ぶためにデンマークへ留学した経験のある森本康平氏によると、日本とくらべてデンマークでは「同じ職種の仲間を守る意識」が圧倒的に高かったといいます。
デンマークでは職種ごとに成立している労働組合が、もともと強い力を持っていました。
それは介護職においても例外ではなく、労働組合によって離職を減らすためのさまざまな取り組みが行われてきました。
具体的には、介護用のリフトを取り入れたり、待遇を向上させたりなど、職員たちが働きやすくなるための努力を続けてきたのです。
福祉先進国といわれるデンマークでは、介護分野に充当できる予算が多いという側面もありますが、現場がしばしば直面する課題を解決するためのアクションを起こしているといえます。
森本氏は、「日本のように、一人の介護職が10人の利用者さんを見る必要があるといった状況は、デンマークではありえなかった」と話します。
介護という仕事はどの国においても共通して、心身ともに負担が大きくなってしまいがちです。
国・労働組合といった単位で動くことも不可欠ですが、施設単位で実施できることは積極的に取り入れていきたいところです。
なお、森本氏には「デンマークの精神保健」についても、日本との違いを解説していただいています。
興味のある方はこちらの記事(【インタビュー】デンマーク流・フォルケホイスコーレに留学して学んだ精神保健サービスの魅力)もぜひご覧ください。

イギリスの介護現場から考える「補助用具」と「分業」の必要性

イギリスの施設で勤務した経験を持つ方に聞くと、イギリスでも必要に応じて「hoist(ホイスト)」という、つり上げ式の補助用具が導入されているといいます。
日本の介護現場においては、移乗介助などで体に負担がかかり、腰痛を引き起こす方も少なくありません。
筆者は日本の介護施設で勤務していましたが、常に腰痛には悩まされていましたし、同僚のスタッフでも同じような悩みを抱えている人は少なくありませんでした。
従業員の身体的負担を減らすためのツールが充実すれば、より働きやすい環境になると感じます。
また、グループホームに関して、日本の場合はスタッフが介護や掃除、調理などをすべて兼任して引き受けることが多いです。
イギリスのグループホームでは、介護スタッフは介護だけを担当し、それ以外は専門のスタッフに分業されているのだそうです。
こうした体制によって「心に余裕を持って働く」ことを実現することができ、それは同時に、「利用者によりよいケアを提供する」ことに直結するのです。
日本の介護職は、負担が過剰になっていることも多いため、補助用具の導入・分業によって、働きやすさを実現したいところです。
イギリスの介護現場については、こちらの記事(これがイギリス流!施設の役割分担が全然違う!?日本の現場が取り入れるべき介護のあり方)でより詳しく解説しています。

海外の事例から学ぶ!日本の介護現場が取り入れたい離職防止策

デンマーク・イギリスともに、介護現場で働く人の負担が過剰にならないよう、さまざまな観点から対策をとっていることがわかりました。
今回ご紹介した2つのエピソードには、次のような対応策が含まれていました。

  • ●介護用リフトなどの用具を導入する
  • ●待遇を向上させる
  • ●専門性による役割分担を行う

もちろん国の予算にも違いがあるため、日本でもすべて同じように導入できるというわけではありません。
しかし、少なくとも現場の労働環境を改善するという意識を持ち、できる対策から始めていくことが必要になります。
介護施設に予算があればリフトを導入してみることも負担軽減につながりますし、給与・休暇などの待遇を見直すことも有効です。
すでに入浴介助専門のスタッフを動員している施設もあると思いますが、こうした人員補充・分業に関わる取り組みも効果的です。
ただ、現場でどのような対策を必要としているかは、ケースバイケースといえます。
一般企業においても、ヒアリングやアンケート調査によって現場のニーズを分析し、労務トラブルや離職を防ぐための試みを行っています。
これは、経営者・管理職の立場では把握しきれない現場の悩みがあることも少なくないため、こうしたアクションを起こしてニーズを拾っていく必要があるからです。
介護施設でも同様に、定期的に現場のニーズを調査・分析することで、おのずと解決策が見えてくるでしょう。
慣れたスタッフが離職してしまうことは介護施設にとっても打撃となるため、国内外の成功例を参考に、できる対策から始めてみてはいかがでしょうか?

まとめ

日本では介護現場における離職が問題視されていますが、海外ではうまく「働きやすさ」を実現している国も少なくありません。
ただ、なんの対策もせずに良い循環が生じているのではなく、必要な用具の導入・業務の分担など、働きやすさにつながるような取り組みを積極的に行っているからこそ、職員がゆとりを持って働けるのだといえます。
まずは介護施設の状況・ニーズを把握し、施設単位でできることがあれば実践していきたいところです。

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