介護・高齢者施設が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

医療従事者向け 介護プラス

話し合うことから始まる、アドバンス・ケア・プランニング

アドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)は、患者さんの意思決定を医療・ケアチームが支援するプロセスです。
2018年、医療・ケアチームに介護従事者も含むことが明確化され、ACPは病院だけではなく介護施設や在宅においても取り組みが求められています。

もしもの時の話し合い

Advance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング、ACP)は、1995年頃欧米から発展した考え方です。
日本では阿部らが「将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の治療・ケア・療養に関する意向、代理意思決定者などについて患者・家族、医療者があらかじめ話し合うプロセス」と定義しています。
分かりやすく言うと、もしもの時の話し合いを事前にしておこうということです。
米国では、健康な段階の人もACPアプローチの対象としていますが、日本では終末期にある人へのアプローチを中心に取り組みが開始されています。

アドバンス・ディレクティブ(ADs)はACPの一部である

ACPについて勉強すると、必ず関連用語としてアドバンス・ディレクティブ(以下ADs)を耳にします。
ADsは事前指示書のことで、自らが意思表示できなくなった場合に備えて自身の意向を示しておくものです。
ADsの内容は以下の2つですが、遺言状を想像してもらえば分かりやすいかもしれません。

  • ○リビング・ウィル(living will)
  • ○代理人指示

●リビング・ウィルは、終末期医療の意思表示

どんな医療処置を望むか、または望まないか。
心肺停止状態になったときに蘇生をしないというDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)の指示もリビング・ウィルの一部です。(蘇生しても回復する可能性がない場合に限定)

●代理人指示は、本人の代わりに意思決定を行う人を決めておくこと

代理人に指名された人は、本人ならこう考えるだろうと推定し、判断しなければなりません。

●ADsの問題点

ADsは一人でも作成できるものです。
その場合、本人以外にADsの真意が伝わりにくいという側面がありました。

  • ○ADsを示した時点と現在の気持ちに変化はないか
  • ○確かな情報(医師の見解など)をもとに判断されたものか
  • ○医療者や代理人に、本人がなぜそのような判断に至ったかの経緯(根拠や背景)が分からない

この問題を解消するために誕生したのがACPです。
つまりADsはACPに含まれるものと考えれば分かりやすいでしょう。

ACPのポイントは、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うこと

筆者の父は20年近く前に亡くなりました。
日本ではACPの概念がない頃です。
末期がんだった父と、看護師である筆者の間では「延命治療は行わない。できる限り自宅で過ごしたい」という父の意思を共有できていました。
ちょうど介護保険制度がスタートしたばかりでしたから、がん患者が自宅で死ぬこと自体ハードルの高い時代です。
父の意識がなくなり、死期が近づくと、父の最期を巡って対立が起きてしまいました。
「入院させないなんてかわいそう」
「なにかほかに治療はないのか」
ACPのプロセスを経ていれば、防ぐことができたかもしれないと思います。
筆者のケースでは、ADsはあったものの、ACPが行われておらず、父の意思決定を周囲と共有できていなかったということが問題でした。
ACPの主旨は、家族だけではなく、医療やケアに関わるスタッフとともに話し合うこと、気持ちが変わったり、状況が変わったりすれば繰り返し話し合うこと、そのプロセスが大切であること、です。
ADsは家族や医療・ケアチームと価値観や死生観などを共有しながら行う「ACPの結果として作成されるもの」であることが望ましいのです。

本人もチームの一員であるという考え方

医療現場でよく聞かれる「患者さん中心の医療」は、患者さんを中心にして周りから医療チームが支えているイメージでした。
ACPでは「本人も医療・ケアチームの一員」であり、本人の意思をもとに話し合いがすすめられます。

●ACP普及にむけて国も動き出した

2007年、厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定し、患者本人の意思を尊重した医療を提供することの重要性を示しました。
そして今年(2018年3月14日)、改訂を踏まえて「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」と名称を変更しました。
改訂のポイントは以下の通りです。

  • ○ガイドラインを在宅医療・介護の現場で活用できるように見直した(医療・ケアチームの対象に介護従事者も含むことを明確化)
  • ACPの取り組みの重要性を強調(話し合いを繰り返し、都度文書にまとめ、共有することの重要性)
  • 代理人指定の重要性(単身世帯増加に伴い、家族を家族等に変更)

●ACPの課題

改訂に先立って実施された調査では、ACPについてよく知っていると答えたのは一般国民で4.0%、介護職員で5.9%でした。
また、看護師20.9%、医師21.8%と医療職であってもACPを知っているのは2割ほどという結果でした。
上記のガイドラインのなかでACPの重要性を強調したとしても、認知されていない状態では意味がありません。
まずはACPの認知度を向上させる活動が急務です。

まずは話し合う場をつくってみよう

これからやってくる高齢多死社会を考えれば、ACPは在宅や介護の現場にこそ必要なプロセスになるかもしれません。
ACPに取り組む際、プロセスを遂行しようと気負うのではなく、その人が自分らしく生きるためにサポートするのだということを忘れないようにしたいものです。
まずはみんなで話し合う場をつくることから始めてみれば良いのではないでしょうか。

参考:
阿部泰之,木澤義之:アドバンス・ケア・プランニングと臨床倫理.看護実践にいかすエンド・オブ・ライフケア,日本看護協会出版,2014,pp.38.
厚生労働省 「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について 2018年.(2018年6月25日引用)
厚生労働省 人生の最終段階における医療に関する意識調査 2018年.(2018年6月25日引用)

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)