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ヒトの課題

腰痛で悩む介護スタッフを守るために…。介護施設で取り組む腰痛対策

介護人材の不足が叫ばれる中、離職を防ぐことが何よりも重要な対策です。
しかし、体への負担がかかる介護業務で腰痛を理由に離職や休職をしてしまうスタッフもいます。
今回は、貴重な介護スタッフを失わないために介護施設で実践できる腰痛対策をご紹介します。

腰を守ろう

こんなに危険!介護現場に潜む腰痛のリスク

介護現場において腰痛は職業病として深刻な問題になっています。
なぜ介護現場では腰痛が発生しやすいのでしょうか?腰痛のリスクを伴う仕事は数多くありますが、介護現場では次のような動作が必要になるため腰痛が発生しやすくなります。

  • ◯抱える介助(入浴介助、トイレ介助など)
  • ◯ひねる介助(移乗介助、食事介助など)
  • ◯中腰の介助(オムツ介助、シーツ交換など)

それぞれの原因別に細かく見ていくと、さらに腰痛が発生しやすい仕事であることがわかります。
原因別に腰痛リスクを見ていきましょう。

◯抱える介助(入浴介助、トイレ介助など)

厚生労働省が定める腰痛予防対策指針では、職場で抱える重量の目安として男性は体重の40%以下、女性は男性の抱える重量の60%以下とされています。
例えば、体重60kgの男性は24kg以下、体重50kgの女性は12kg以下が目安になります。
実際の現場ではどうでしょうか?全介助に近い方を介助しようと思ったら、抱える重量の目安を簡単に超えてしまいます。そのため、介護現場で日々実践している抱える介助は、非常に腰痛のリスクが高いことがわかります。

◯ひねる介助(移乗介助、食事介助など)

ひねり動作が繰り返されることも腰への負担を増加させる原因となります。
介護現場では移乗介助などで瞬間的にひねる動作を行うだけでなく、持続的にひねり姿勢を保つ場面もあります。

例えば、食事介助を思い出してみてください。周囲に気を配りながら、食事介助を行っていると、ついつい体をひねって介助を行っていることはないでしょうか?このように、ひねる動作や姿勢も介護現場では多く見られ、腰痛の一因になっています。

◯中腰の介助(オムツ介助、シーツ交換など)

様々な職業で見られる中腰姿勢の継続も腰痛の大きな原因として挙げることができます。
中腰の姿勢は立っている姿勢に比べ、背骨と背骨の間にある椎間板にかかる負担が1.5倍になります。椎間板への負担が持続的にかかると、椎間板の変性が生じて腰痛を引き起こします。
介護現場では多くの場面で中腰姿勢をとります。そのため、椎間板への負担が生じやすく、腰痛のリスクが高まってしまうのです。

腰痛を予防するために行うべき基本の対策

腰痛を予防するために行うべき基本の対策

腰痛の原因が多く潜む介護現場において、基本的な腰痛の対策は職場環境の調整と介護方法の改善です。
抱える介助を少なくするために、リフトを筆頭に移乗用の福祉用具を使用することが挙げられます。また、普通型の車椅子では抱える動作が多くなるため、アームサポートを跳ね上げ式にすることも有効です。

もちろん、それらの福祉用具を有効活用するためには、適切な介護用具を選定して、効率的に使用する方法を学ぶ必要があります。
例えば、移乗介助では座位をどのくらい保てるかで使用する道具は大きく異なります。自分で立位をとれない方でも、次のような基準で介助方法の選択が可能です。
背もたれなしでの座位が難しければ、スリングを利用したリフトの使用が望ましいですが、座位が安定していればトランスファーボードでの移乗介助が可能です。
また、座位でお尻を動かして横移動できれば、トランスファーボードを使用することによって自力で移動も可能となります。

また、ひねりや中腰姿勢を防ぐためには、自分の体の位置や体の使い方に注意を向けてみましょう。
腰だけをひねるだけでなく、しっかり体全体で介助方向を向く、体をかがめないように気をつけるなど、介助時の体の使い方に気をつけましょう。

とりわけ、多くの介助場面で見られる腰を曲げた中腰の姿勢は、腰に大きな負担がかかります。そのため、パワーポジションと呼ばれる姿勢をとることを意識しましょう。

パワーポジションは、重量挙げの選手がバーベルを上げる姿勢を思い浮かべていただくとわかりやすいです。腰を曲げるのではなく、膝を曲げ重心を落とし、しっかりと骨盤を起こした姿勢です。介助時すぐにできるように、日頃から行ってみましょう。

リフトなんて高くて買えない!安くてオススメの福祉用具

「福祉用具をそろえたいのは山々だけど、高くてなかなか購入できない!」
という現場の声も少なくありません。
しかし、前述に紹介した介護を実践するためには、少しでも用具を充実させておくことが必要です。
そこで、安くてオススメの福祉用具を紹介していきたいと思います。

座れれば移乗はこれで!トランスファーボード

先ほども紹介しましたが、座位が安定していれば、立位が難しくてもトランスファーボードを使用すれば移乗にかかる負担は格段に少なくなります。価格も1万円台から販売されていますので、リフトなど高価な福祉用具の購入がなかなか難しい場合でも購入しやすいです。

介助量が多く二人介助が必要という方でも、座位を安定させるスタッフと移乗介助をするスタッフとで役割分担を行えば腰の負担を減らして移乗介助ができます。

ベッド上での介助にはこれ!スライディングシート

ベッド上での介助にはこれ!スライディングシート

スライディングシートは、ベッド上での体位変換や移動時や、車椅子上での座位修正に使用できます。そのため、体をひねったり、抱えたりという介助による腰の負担が少なくなります。価格はシートの大きさによって異なりますが、1万円以下の商品も多くあります。
シートには大小のサイズがありますので、場面にあった大きさを選択するようにしましょう。
例えば、全介助の方をベッド上で体位変換するのであれば、大きめのシートを使用し、車椅子上の姿勢を変えるだけであれば、小さめのシートの方が使い易いです。

持ち運び簡単!介助用グローブ

さらに安くてコンパクトな福祉用具が介助用グローブです。褥瘡予防のために体の圧を抜く時に使用される道具ですが、座り直しやベッド上の姿勢を直したり、体位変換したりする際に使用できます。
使い捨てタイプと継続使用タイプがありますが、価格は5,000円以下で、持ち運びも便利ですので、導入しやすい用具です。

以上のような福祉用具を使用していくだけでも、蓄積されていく腰への負担を軽減することができます。
また、これらの用具を使用して介護スタッフの腰痛負担軽減ができれば、リフトなどの高価な福祉用具購入のきっかけになるケースもあります。是非、活用してみましょう!

自分の体は自分で守る!腰痛予防の体操をしよう

腰痛を予防するために介護方法の改善や福祉用具の使用で工夫を行っても、徐々に腰への負担は蓄積していきます。そこで、必要なのが腰痛を予防するための体操です。
とりわけ、重いものを抱えたり、中腰の姿勢が多かったりする介護業務では、椎間板にかかるストレスが蓄積されていきます。そのストレスをなくすためには、腰を反らせる体操を行う必要があります。
この体操の良いところは、簡単にいつでもできる点にあります。

腰痛予防のために、あまり多くの種類や難しい方法でストレッチを行ってもなかなか継続できません。まずは少し空いた時間があれば、体をゆっくり反らせるストレッチを行うように心がけて、腰痛が発生する前に腰の負担を減らすようにすることが重要なのです。
もし、余裕があれば、日頃からジョギングなどの有酸素運動を行ったり、柔軟性を高めるストレッチを行ったりすることで、腰痛になりにくい体作りを実現していきましょう。

介護ロボットの導入もあるが、まずは腰痛を予防するという意識を

国レベルで介護職の離職防止対策や介護機器(主に介護ロボット)の導入が促されており、以前に比べて格段に腰痛予防を行うために必要な環境が整っています。

しかし、現場では高額な福祉用具の導入が難しい場合も多いです。そのため、できる対策から始めていきながら、腰痛予防を図り、質の高いケアを提供できる快適な介護施設を目指しましょう。

参考資料
介助にいかすバイオメカニクス.医学書院

参考リンク
東京大学 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 これだけ体操
松平 浩他.腰痛に対する運動療法のニューコンセプト.理学療法学.vol43.suppl.No3.pp109-112
公益財団法人テクノエイド協会 福祉用具シリーズvol15 腰を痛めない介護・看護

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