看護職と気軽に話せない?コミュニケーションエラー防止に、介護職は3つのツールを使って対応してみましょう
「看護師に話しかけにくい」と感じる介護職の方は多いでしょう。
しかし、不十分なコミュニケーションはエラー(間違いや失敗)を発生させる危険なものです。
本記事ではエラー防止に効果的で、介護職の方が簡単に使えるツールを3つご紹介します。
不十分なコミュニケーションが引き起こすエラー
介護施設では、介護職と看護職が中心となって利用者さんのケアにあたります。
介護職と看護職は、協働することでより力を発揮できる関係性のはずですが、実際にはうまく連携できていないケースもあるのではないでしょうか。
理由としては資格の違いはもちろんですが、どちらかがアプローチすれば解消できるような遠慮や誤解が原因のことも多いものです。
(介護職と看護職の関係性については、こちらの記事「介護士と距離がある」と感じる看護師ほど、積極的に介護士と会話するべき!、連携を取ってくれない介護施設の看護師へ、施設運営者や介護士はどう対応すればよい?で深く解説しています)
●効果的なコミュニケーションを考える
コミュニケーションとは、情報やメッセージの伝達とその過程のことです。
しかし、コミュニケーションはもともと不確実なもので、伝えかた、受け取りかたで趣旨が全く違ってしまいます。
下記に不十分なコミュニケーションによって起こり得る誤り(コミュニケーションエラー)を挙げてみます。
- ○言い間違え
- ○聞き間違え
- ○思い込み
- ○あいまいな伝達
- ○間違った解釈
- ○伝達されない
最低限しか話さない、聞き返さない、確認しないという慢性的な対話不足はエラーを引き起こしやすくなります。
介護施設において、これらのコミュニケーションエラーが事故に発展するのを避けるためには、介護職からの働きかけが重要です。
今回ご紹介する3つのコミュニケーションツールは、主に医療現場で使われているものですが、簡単でかつコミュニケーションエラー防止に役立つものです。
介護職の方もすぐに活用できますから、ぜひ試してみてください。
必ず再確認を!チェックバック
事故防止対策として「復唱」を取り入れている施設も多いでしょう。
まずは、復唱の例を見てみましょう。
- 看護師A:利用者Cさん、3日間排便がありません。夕食後プルセニド(下剤)を2錠内服させてください。
- 介護士B:わかりました、利用者Cさんに夕食後プルセニド2錠ですね。
確かに復唱を実行することで、「わかりました」と返答するだけよりもコミュニケーションエラーを減少させる効果があります。
しかし、このコミュニケーションをみると介護士Bの復唱に対し看護師Aは「正しい」とも「間違っている」とも反応していません。
そこで復唱をさらに強化するために、1つめのツール「チェックバック」を試してみましょう。
チェックバックは以下の3ステップから成り立っています。
●チェックバック
- 1.メッセージを伝える
- 2.メッセージを受けた人が確認したことを返す
- 3.メッセージが伝わったことを確認する
先ほどのコミュニケーションにチェックバックを取り入れてみます。
- 看護師A:利用者Cさん、3日間排便がありません。夕食後プルセニド2錠内服させてください。
- 介護士B:わかりました。繰り返します、利用者Cさんに夕食後プルセニド2錠で間違いありませんか。(チェックバック)
- 看護師A:そうです、よろしくお願いします。
これで看護師A、介護士Bともに確実にメッセージが伝わったことを確認し、エラーを防止することができます。
介護施設の事故防止対策としてチェックバックを義務化すれば、介護職から看護職への復唱確認もしやすくなるのではないでしょうか。
もう一度提案してみて!2チャレンジルールとCUS(カス)
利用者さんと最も長い時間接しているのは介護職です。
看護職の「なにかおかしい」という直感は当たっていることが多いといわれますが、介護職の「いつもと違う」も同様です。
筆者は訪問看護師ですが、ヘルパーさんが「いつもと違う」と報告してきたときには細心の注意を払うようにしています。
その後の状態変化につながる場合が多いからです。
ですから、介護職の方々は看護職に伝えたいと思ったことは遠慮せずに伝えてください。
うまく伝わっていないかも?と感じたときには、2つめのツール「2チャレンジルール」と、3つめのツール「CUS(カス)」を試してみてください。
●2チャレンジルール
少なくとも2回は提案してみましょう。
●CUS(カス)
- C(Concerned):心配です!
- U(Uncomfortable):不安です!
- S(Safety issue):安全上の問題です!
2チャレンジルールとCUS(カス)を使った具体的なコミュニケーションをみてみます。
- 介護士B:(利用者Dさんが咳をしている)Dさん、苦しそうですが大丈夫ですか?
- 利用者D:大丈夫だよ。肺が悪いから時々咳が出るんだよ。
- 介護士B:でも、最近は落ち着いていましたよね。
介護士Bは看護師Aに相談。
- 介護士B:利用者のDさんですが、咳がひどいです。
- 看護師A:DさんはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)があり、時々咳をしていますよね?
- 介護士B:はい、でも今日はいつもと違って咳が治まらず苦しそうです。(2チャレンジルール)
- 看護師A:そうですか。明日医師に診てもらいましょうか?
- 介護士B:咳が治まらず、安静にしていても苦しそうです。顔色も悪いので心配です。(CUS)
- 看護師A:わかりました。すぐにご様子を見にいきます。必要なら医師に診察してもらいましょう。
自身が「いつもと違う」と感じたなら諦めずに2回は繰り返しましょう。
それでも伝わらないなら、聞いてくれないと相手を非難するのではなく、「私」を主語に「心配だ」「不安だ」と伝えます。
相手を尊重しつつ主張することで、効果的なコミュニケーションがとりやすくなります。
コミュニケーションエラーを防止するのもコミュニケーションである
ご紹介したツールからも分かるように、コミュニケーションエラーを防止する手段もやはりコミュニケーションです。
厚生労働省が策定した「安全な医療を提供するための10の要点」のなかに「部門の壁を乗り越えて 意見かわせる 職場をつくろう」があります。
他職種間でも意見の交換がしやすい、オープンで風通しの良い施設作りが、利用者さんの安全を守ることにつながるのです。
参考:
東京慈恵会医科大学附属病院医療安全管理部(編):チームステップス[日本版]医療安全‐チームで取り組むヒューマンエラー対策,メジカルビュー社,2012.
厚生労働省 安全な医療を提供するための10の要点(2018年7月20日引用)