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高齢者に多い不整脈がある?介護職が知っておきたい心房細動の基本知識

心房細動は不整脈のなかでも有病率が高く、その病名をよく耳にすることがあるでしょう。
介護施設勤務の方にとっても、自立支援・重度化予防の観点から、正しい知識を持つことは大切です。
心房細動はどのような病気なのか、なぜ介護施設でも病気の管理が必要なのかについて解説します。

心房細動は心臓のけいれん発作!なぜ治療が必要なのか?

まず最初に、心房細動とはどんな不整脈なのか、心房細動が起こると体にどんな影響があるのかについて解説します。

●心臓のけいれんによって全身に十分な血液が運べなくなる

通常、心臓が血液を送り出す際には心房と心室が1回ずつ収縮しますが、心房細動では1分間に350〜600回も心房がけいれんします。
このけいれんしている状態を心房細動と呼び(心房が細かく動く)、その影響で心臓から全身へ十分な血液が運ばれなくなります。
心臓が十分な血液を送れない状態を総称して心不全と呼びますが、心房細動は心不全を起こす原因の1つです。
つまり、心房細動を治療する目的の1つは、心不全を予防することであるといえます。

●心房細動による動悸や息切れが日常生活に影響をあたえる

心房細動によって頻脈(脈が速くなる)が起こると、動悸や息切れなどの症状が出現します。
心房細動は、突発的に起こる発作性心房細動と、長年持続している持続性心房細動にわけられます。
発作に関しては、食後の安静時や就寝中などに起こる場合と、家事や散歩などの運動時に起こる場合があります。
動悸や息切れのためにゆっくり休養することができない、動いたときに息が切れて苦しいなどの症状が続くと、活動量や活動意欲の低下につながるため注意が必要です。

●心房細動は脳梗塞につながる怖い病気

「心臓と脳梗塞が関係あるの?」と思うかもしれませんが、実は脳梗塞の原因の1つは心房細動によるものです。
脳卒中治療ガイドライン(2009)によると、心房細動がある方は、そうでない方たちにくらべて2〜7倍脳梗塞を起こしやすいとされています。
心房細動では、心房の入口から出口までスムーズに血液が運ばれないため、血液のよどみが発生し、そのよどみによって血栓が形成されます。
この血栓が脳の血管に詰まって起こる脳梗塞は心原性脳塞栓症と呼ばれ、比較的太い血管に詰まってしまうため危険です。
心房細動を治療する2つ目の目的は、脳梗塞を予防することといっても過言ではないでしょう。

気になる治療は?脈のコントロールと血液をサラサラにすることが重要!

ここでは、一般的な治療手段である薬物治療について、不整脈のコントロールと抗凝固治療の2つを紹介します。

●脈の速さとリズムをコントロールする

脈が速い状態が続くと心臓の負担が増加するため、脈をコントロールすることが重要になります。
具体的な治療としては、薬を使って心室に伝わる刺激を少なくする内服治療と、心臓の中に入れたカテーテルで不整脈の発生部位を焼く治療や、電気ショックで心房の震えを止める治療にわけられます。
後者の治療に関しては、薬での治療が困難な場合や、血圧が下がる・めまいがするなど体の状態が不安定な場合に選択されます。
普段耳にする「不整脈の薬」とは、心拍数を下げる効果があることが多く、かかりつけ医から不整脈の薬が処方されている場合、心房細動の内服治療である可能性があります。

●血栓ができないように血液をサラサラにする

心房細動の治療では、血栓が作られることを防ぐために、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬が必ず併用されます
ワーファリンという薬の名を聞いたことがある方は多いかもしれませんが、この薬はその代表格ともいえます。
しかし、脳梗塞を予防する効果がある反面、抗凝固薬には危険な落とし穴があります。
それは、血をサラサラにする=血が止まりにくいというリスクです。
ちょっとした打ち身でも大きな内出血をきたしたり、鼻血が止まらないという例もあるほどです。
抗凝固薬を内服されている方を介護する際には、これらの点について十分注意する必要があります

有病率は意外と高い?今後は介護現場での管理が重要になる

ここまで、心房細動とはどういう病気かについて解説しましたが、実際の介護現場では「そこまで多くないのでは?」という声があがるかもしれません。
気になる心房細動の有病率について以下にご紹介します。

●高齢化率上昇にともない有病率も増加している

日本循環器学会が2003年に実施した疫学調査によると、有病率は80歳以上の男性で4.43%、女性では2.19%であるとされています。
また、高齢者の有病率が上昇している背景には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が一因とも考えられています。
高齢化率上昇にともない生活習慣病患者が増えると、心房細動の有病率はさらに上昇することが予想されます。
脳梗塞を発症すると要介護状態となる恐れが非常に高く、利用者さんのADLやQOLが大幅に低下します。
自立支援と重度化予防を目標に掲げる介護業分野においても、高齢者の心房細動をどう管理していくかは重要な課題であるといえるでしょう。

●介護施設でも心房細動の有無をチェックしよう

定員30人のデイサービスを例にあげると、前述した疫学調査の結果からは最低1人以上は心房細動がある利用者さんがいることになります。
実際は、女性の利用者が大半を占める施設が多いかもしれません。
80歳以上の女性の有病率は2.19%ですので、それでも約40人に1人は心房細動がある可能性があります。
そのため、病態や治療について正しい知識を持っておくことは重要です。
また、利用者さんの健康状態を考える上でも、心房細動の有無をチェックしておくことは有用であるといえます。
以下に、介護施設でも実施可能なチェック項目をご紹介します。

  • ◯基本情報提供書の既往欄
  • ◯医療機関からのサマリー
  • ◯かかりつけ医からの処方箋
  • ◯本人・家族からの聞き取り
  • ◯脈が不規則または飛んでいないか
  • ◯安静時や運動時に動悸の訴えがないか

処方箋の内容や脈に関しては、施設内の看護師に確認をするなどして、事業所のスタッフ全員で利用者さんのリスク管理をすることが望ましいでしょう。

介護施設での管理が健康な生活への第一歩!

心房細動は日常生活に支障をきたすだけではなく、心不全や脳梗塞につながる怖い病気です。
介護分野においては、自立支援・重度化予防が目標に掲げられているため、病気の予防も重要な業務であるといえます。
心房細動に関する基本知識を習得することで、1人でも多くの利用者さんが毎日元気に過ごせる介護施設になるようにしましょう。

参考:
日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2009.(2018年7月14日引用)
青沼和隆:心房細動に対する最近の考え方.日本内科学会雑誌.104巻3号.2014.(2018年7月14日引用)

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