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高齢者に多い誤嚥性肺炎、発症の原因は加齢?分かりやすく解説します

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は高齢者に多い病気です。
免疫力が低下した高齢者では、誤嚥性肺炎は重症化しやすく、命に関わることも少なくありません。
本記事では介護職員の方に向けて、誤嚥性肺炎発症の原因と介護の現場で注意すべきポイントを解説します。予防についてはこちらの記事(誤嚥性肺炎を予防するには?~嚥下訓練と口腔ケアの予防効果~)をご参照ください。

高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎

厚生労働省によると、2018年現在肺炎は死因の第3位となっています。
注目すべきは肺炎患者のうち、約9割を75歳以上の高齢者が占めていることです。
また、高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥と関係しているという研究結果(寺本ら)もあり、高齢者にとって誤嚥性肺炎は、もっとも身近で怖い病気といえるでしょう。

● 「嚥下」の意味、「誤嚥」と「誤飲」の違い

まず言葉の意味を整理しておきましょう。
口の中のものを飲み下すことを「嚥下(えんげ)」といい、誤って嚥下することを「誤嚥(ごえん)」といいます。
混同されがちな「誤飲(ごいん)」との違いも併せて覚えておいてください。

誤嚥 飲食物が食道ではなく気管に入ってしまうこと
誤飲 飲食物以外のものを誤って飲み込むこと

つまり、誤嚥性肺炎は「飲食物が食道ではなく気管に入ってしまった」ために起こる肺炎のことを指しています。
小さいお子さんがタバコや硬貨を飲み込んでしまった場合は「誤飲」であり「誤嚥」とはいいません。

嚥下機能が低下すると誤嚥しやすくなる

誤嚥性肺炎の原因に、嚥下機能の低下があります。
なぜ嚥下機能が低下するのか?を知るには、はじめに摂食・嚥下のプロセスを知る必要があります。

●摂食・嚥下のプロセス

以下の「摂食・嚥下の5期」をご覧ください。

先行期 食べ物であることを認知する
準備期 食べ物を嚥下に適した状態にする
口腔期 食べ物を(舌の運動などで)口腔※1から咽頭に送る
咽頭期 食べ物を嚥下反射で咽頭※2から食道へ送る
食道期 食べ物を食道の蠕動(ぜんどう)運動※3で胃へ運ぶ

※1口腔:口の中、口からのどまでの間
※2咽頭:のど
※3蠕動運動:消化管(食道や胃、大腸など)が伸びたり縮んだりして食べ物を送る動きのこと 

このうち、嚥下は口腔期・咽頭期・食道期の3期から成り立っていますが、なかでも嚥下にとって重要なのが咽頭期です。
咽頭(のど)は、食べ物が口腔から食道へ運ばれるための通路であるだけではなく、呼吸するときの空気の通路(気道)でもあるからです。
そのため咽頭期では、嚥下の際に以下の2つのことが同時に行われています。

  1. 1.食べ物を口腔から食道に運ぶ
  2. 2.食べ物が鼻や気管に入らないようにフタをして防御する

しかし、加齢に伴いこの仕組みに必要な筋肉量は減少し、うまく働かなくなります。
これが嚥下機能の低下です。
嚥下機能が低下すると、食べ物をすべて食道に送り込めずに咽頭に残ってしまったり、鼻や気管をしっかり塞ぐことができずに隙間から食べ物が入り込んでしまったりします。

介護の現場では、

  • ○食事中に鼻水が増える
  • ○頻繁にむせる

などの症状があれば、嚥下機能の低下を疑いましょう。

●のど仏の位置は、嚥下に問題があるか否かを判断するポイント

加齢による筋力量の変化は個人差が大きく、高齢でも嚥下機能にほとんど問題がない方もいらっしゃいます。
外見で嚥下機能の低下を判断するポイントをご紹介しましょう。
高齢者の「のど仏」の位置と、あなたの「のど仏」の位置をくらべてみてください。
高齢者のほうが低い位置にありませんか?
のど仏を支える筋力が低下すると、のど仏の位置は下がってしまいます。
のど仏を触りながらごっくんと飲み込んでみると、飲み込むときにのど仏が持ち上がるのが分かるでしょう。
嚥下に問題のない方では、のど仏が持ち上がるときに食道への入り口が開き、鼻や気管への入り口が塞がれます。
のど仏が低い位置にあると、嚥下時にのど仏の持ち上がりが不十分になり、鼻や気管を塞ぐ機能も不完全となって誤嚥が起こるのです。

介護の現場では

  • ○のど仏が低い位置にある

利用者さんは特に、誤嚥しやすいので注意が必要です。
介護の場面で実践したい具体的な誤嚥予防策については、こちらの記事でご紹介しています。

口腔内の汚れと誤嚥性肺炎の関係

誤嚥性肺炎のもうひとつの原因に、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)があります。
不顕性誤嚥とは、睡眠中などに唾液を少しずつ誤嚥することをいいます。
不顕性誤嚥で問題になるのが、口腔内の細菌も一緒に誤嚥してしまうことです。
不顕性誤嚥は健常者でも起きていると考えられていますが、口腔内の細菌量や誤嚥量が少ないこと、咳反射で吐き出せていることなどから肺炎には至りません。
しかし高齢者では

  • ○歯磨きが不十分で、口腔内の細菌量が多い
  • ○唾液量が少なく、細菌を洗い流すことができない
  • ○咳反射が弱く、誤嚥の量が多い
  • ○免疫力が低下している

などの理由から不顕性誤嚥でも肺炎を起こしてしまいます。

●自分で歯磨きできているから大丈夫?

利用者さんが身の回りのことを自力で行えていると、歯磨きもできていると思って安心してしまいがちです。
そのために、口腔内の状態を悪化させてしまうことも少なくありません。
高齢者は口腔内が乾燥していることが多く、歯ブラシで磨くだけでは不十分です。
自力で歯磨きをしている方でも、舌を出してもらうと乾燥して舌苔がびっしりついていることもよくあります。

介護の現場では以下に注意が必要です。

  • ○口の中が乾燥している、ねばねばしている
  • ○舌が汚れている
  • ○水分摂取量が少ない

もちろん、現在は口の中がきれいな方も定期的に観察して、適切なケアをサポートしていきましょう。

胃食道逆流、病気や薬が原因のことも

逆流性食道炎を起こす胃食道逆流(胃の内容物が食道に逆流すること)も誤嚥性肺炎の原因になり得ます。
逆流したものを誤嚥することで、誤嚥性肺炎を発症することがあるのです。
また、脳梗塞の後遺症、パーキンソン病などの病気や、内服している薬がもとで嚥下機能の低下、口腔内乾燥が助長されることがあります。
このような背景のある利用者さんは、誤嚥の高リスク状態であることは間違いありません。
加えて、麻痺(まひ)のある方、寝たきりの方、口から食事ができない方などでは誤嚥性肺炎発症のリスクも高くなります。

高齢者は症状が出にくい

誤嚥性肺炎の原因には加齢が大きく関与し、加齢により体の機能が低下することで誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。
また、肺炎は高熱が出るという通説は高齢者には当てはまりません。
免疫機能が低下した高齢者では、高熱が出にくく、微熱程度のこともあるからです。
症状が出にくい高齢者だからこそ、介護職員は誤嚥性肺炎の知識を持ち、小さな変化を見逃さないことが大切です。
誤嚥性肺炎の予防についてはこちらの記事でくわしく解説していますので、併せてお読みください。

参考:
寺本信嗣:誤嚥性肺炎 オーバービュー.日本胸部臨床68(9):795‐808,2009.
厚生労働省 第2回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 2016年.(2018年9月13日引用)

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