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誤嚥性肺炎を予防するには?~嚥下訓練と口腔ケアの予防効果~

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因についてはこちらの記事で解説しました。
それでは、誤嚥性肺炎を予防するために介護施設では何をすれば良いのでしょうか。
本記事では、誤嚥性肺炎予防のために介護職員ができることをお話しします。

誤嚥のリスクが高いと誤嚥性肺炎のリスクも高い、という誤解

口から食道へ入るべき飲食物や唾液、あるいは胃液が誤って気管に流れ込んでしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。
誤嚥するときに飲食物や唾液とともに口腔内の細菌も一緒に気管内へ流れ込み、誤嚥性肺炎が起こります。
しかし、誤嚥した人全員が肺炎になるわけではありません。
たとえば、以下のようなときは肺炎にはなりにくいです。

  • ○誤嚥の量が少ない
  • ○細菌数が少なく、肺への刺激が軽度だった
  • ○咳き込んで吐き出すことができる
  • ○免疫力が高い

高齢者では以下のような誤嚥しやすい特徴があり、誤嚥性肺炎を発症しやすい状態にあるといえます。

  • ○嚥下機能が低下しており誤嚥しやすい
  • ○咳き込む反射が弱く吐き出せない
  • ○口腔内が乾燥しやすく細菌数が多い
  • ○免疫力が低下している

それなら、誤嚥リスク=誤嚥性肺炎リスクではないか、と疑問を持たれる方もいるでしょう。
確かに誤嚥リスクを完全に取り除くことは難しいのですが、誤嚥性肺炎を予防することは可能です。

話す・笑うことも嚥下訓練

厚生労働省の調査によると、介護施設に入所している高齢者の楽しみの第1位は食事となっています。
高齢者にとって口からものを食べることは、楽しみや栄養補給だけではなく、要介護状態になるのを予防し、QOLの維持・向上につながる行為でもあります。
しかし、ヒトの体は使わなければ機能が低下していきます。
歩かなければ歩けなくなりますし、話さなければ声は小さくなります。
「ものを食べる」行為に関係する機能も同じです。
嚥下するときに使う筋力を維持し、機能を低下させないために嚥下訓練を行いましょう。
もちろん一番の嚥下訓練は、口からものを食べることです。

●食事前には嚥下体操でウォーミングアップを!

運動前と同様に、食事前にもウォーミングアップをしましょう。
誤嚥は「ひとくちめ」に一番起こりやすいことが分かっています。
このひとくちめの誤嚥を予防するためにも、食事前の嚥下体操は効果があります。
首や肩を動かす、口の開閉、舌の出し入れ、頬を膨らませる・すぼめる、声を出す。
嚥下体操といっても難しく考える必要はありません。
食事をするときに使う部位を動かせば良いのです。
筆者は訪問看護師ですが、利用者さんのなかには食事前に嚥下体操を兼ねてカラオケを歌う方がいらっしゃいます。
介護施設ならば、食事前に一曲歌うなども良いですね。
こちらの記事にも具体例が紹介されていますので参考になさってください。
嚥下機能の低下は女性にくらべ男性に起こりやすいのですが、これは女性のほうが男性よりもよくおしゃべりをするために筋力を維持できているのではないか?と考えられています。
よく話す、笑うだけでも十分に効果があるのです。

●嚥下機能は個人差が大きい

高齢者は一律に嚥下機能が低下するのかといえば、そうではありません。

  1. 1.嚥下機能が少しずつ低下(加齢など)
  2. 2.嚥下機能が急激に低下(脳血管障害など)
  3. 3.嚥下機能には問題ないが食べられない(心因性など)

介護施設では慢性期にある利用者さんがほとんどだと考えられますので、2のタイプは少なく、多くは1のタイプでしょう。
嚥下機能が少しずつ低下するといっても、体力や筋力には個人差があります。
嚥下体操以外にも、利用者さんに合わせて食事姿勢、食事形態、介助方法などの工夫が必要です。

具体的な対応例については、こちらの記事を併せてご覧ください。

口腔ケアはエビデンスのある誤嚥性肺炎予防策

不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)が原因の誤嚥性肺炎では、口腔内の細菌数が多いほどリスクが高まります。
しかし、口腔ケアは本当に誤嚥性肺炎予防に効果があるのでしょうか。
このことを検証した米山らの研究をご紹介しましょう。
米山らは特別養護老人ホームにおいて、入所者を「口腔ケアを積極的に行う群」と「通常の口腔ケアを行う群」とに分けて咽頭細菌数の変化を検証しました。
この研究によると、通常の口腔ケアを行った群では2カ月目から総細菌数が上昇しましたが、積極的な口腔ケアを行った群では総細菌数は徐々に減少し、5カ月目には口腔ケア開始前の10分の1まで減少しています。
また、うがいだけの群では細菌数の減少効果に限界があったことから、誤嚥性肺炎に対する予防効果を高めるには、器具を使用した口腔ケアの有用性が示唆されています。
さらに、米山らは1年半にわたり口腔ケアを実施して発熱との関係を考察していますが、口腔ケア実施期間中は発熱日数の減少した者が多く、口腔ケア中止期間中は発熱日数の増加した者が多くなったと報告しています。
これらのことから、積極的な口腔ケアの実施は誤嚥性肺炎予防に効果があり、介護施設において高齢者の口腔ケアは大変重要であると考えられます。
高齢者は、自立している方でも歯磨きが不十分なことがあります。
また、唾液の量が減少しているので、細菌が洗い流されず、繁殖しやすくなります。
さらに、口から食べることができない方や食べる量の少ない方では、咀嚼によって得られる自浄作用が働きません。
自力で歯磨きができる方にも、正しい口腔ケアの方法を指導し、定期的にチェックするなどのサポートが望ましいでしょう。
困難例(片麻痺がある人の口腔ケア)のケア方法、口腔ケアの効果を高めるアイテムについてはこちらの記事をご参照ください。
片麻痺がある人の口腔ケア方法は?観察項目・介助のコツを解説します
高齢者には電動歯ブラシがおすすめ!介護もラクになる便利なアイテム

誤嚥性肺炎予防(口腔ケア・嚥下訓練)には介護施設全体で取り組もう

誤嚥性肺炎を予防するには、介護職員全員が知識を持ち、施設全体で取り組むことが大切です。
嚥下訓練や口腔ケア方法を専門家を招いて施設全体で学び、施設独自の嚥下体操や口腔ケアマニュアルを作成してみてはいかがでしょうか。
その取り組みは誤嚥性肺炎予防につながるに違いありません。

参考:
厚生労働省 高齢者にとっての「食べること」の意義 平成24年3月.(2018年9月18日引用)
米山武義,鴨田博司:口腔ケアと誤嚥性肺炎予防.老年歯科医学,第16巻,第1号,2001.

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