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  • 橘ゆみ

    公開日: 2018年12月26日
  • ヒトの課題

いつの間にかできる傷、スキンテア(皮膚裂傷)を予防するために実践したい5つのこと

優しくケアしているのに、利用者さんの皮膚にいつの間にか傷ができていた…という経験はありませんか?
このように、脆くなった皮膚に起こる傷はスキンテア(皮膚裂傷)のひとつです。
スキンテアは発生してから対処するのではなく、予防することが大切です。

いつの間にかできる傷、スキンテア(皮膚裂傷)

スキンテアとは?

スキンテア(Skin Tear:皮膚裂傷)とは、摩擦やずれによって皮膚が損傷(裂けたり、剥がれたり)することをいいます。
(スキンテア以外のスキントラブルについては「なかなか治らないおむつかぶれ。IAD(失禁関連皮膚炎)予防のポイント」「高齢者によくあるスキントラブル”発赤” その発赤、緊急性はある?ない?」の記事をご覧ください)
スキンテアは高齢者特有の脆くなった皮膚に起こりやすく、強い痛みを生じてQOLを低下させ、ともすれば介護職員による虐待ではないか?という誤解を生むこともあります。
海外では20年以上前からスキンテアの概念があり、ガイドラインも整備されていましたが、日本では現在もスキンテアという言葉すら知らない人が多く、処置方法や予防策についても十分認知されているとはいえません。
しかし、2018年の診療報酬改定において褥瘡(じょくそう)の危険因子評価にスキンテアが組み込まれました。
具体的には、入院時に皮膚の脆弱性(スキンテアの保有・既往)についてのアセスメントが必要になったのです。
スキンテアは、超高齢化社会の日本において重要な問題であることは明白であり、単なる傷という認識ではなく、発生機序を理解して予防に取り組むべき病態であるといえるでしょう。

スキンテアはどんな皮膚に起こりやすい?

スキンテアはどんな皮膚に起こりやすい?

スキンテアが起こりやすい「脆い皮膚」には、以下のような要因が考えられます。(スキンテアの予防と管理より)

加齢(75歳以上)
過度に日光を浴びている(農作業やレジャーなど)
長期間の服薬(ステロイド薬・抗凝固剤)
抗がん剤治療歴
放射線治療歴
透析治療歴
低栄養(食欲不振・低下)
皮膚が乾燥し、かさかさしている(脱水傾向)
紫斑(しはん)が多くある
浮腫(むくみ)がある
水泡(みずぶくれ)がある

このなかでひとつでも当てはまればスキンテアのリスク状態であると判断します。
上記の危険因子があり、さらに

  • ○転びやすい
  • ○物にぶつかることが多い
  • ○要介護状態である(介護者のケアを受けている)

のいずれかに当てはまるならばハイリスクと考えましょう。
危険因子をみていただくと分かりますが、介護施設に入所しているほとんどの方がハイリスク群であるといっても過言ではありません。

スキンテア予防、5つの対策

スキンテア予防、5つの対策

はじめにもお話ししたように、スキンテアは予防が大切です。
特に高齢者はスキンテアの危険因子をいくつも抱えていることが多く、発生率は高くなります。
一度スキンテアを起こすと繰り返し再発することが多いため、予防の意義は大きいといえます。
スキンテアの予防策を5つの項目についてまとめました。

保護 ○衣類の工夫
・長袖・長ズボンの着用
・アームカバーやレッグカバーの使用
・ボタンやファスナーのないもの
・きつい衣服は避ける
環境 ○環境整備
・ぶつけやすい場所、家具の角へカバーをつける
栄養 ○低栄養や脱水の有無を評価し、あれば栄養状態改善、水分補給
○食欲不振や体重減少があれば医師に相談
介助方法 ○引きずらない・引っ張らない・掴まない
・体位変換はスライディングシート(ビニール袋でも代用できる)を使用する
・腕や足を持ち上げるときは握る・掴む動作はせず、下から支える
スキンケア ○洗浄
・洗浄剤はよく泡立てて、優しく洗う
・乾燥が強いときは洗浄剤は使用しない
・水圧は低く
・洗浄剤の成分が残らないようによく洗い流す
○保湿
・低刺激で伸びの良い保湿剤を1日数回塗布する(特に入浴後)

上記の予防策を実施した上で、1日1回は利用者さんの全身をチェック(特に上肢・下肢)し、内出血などの打撲痕を発見したら、なぜ起きたのか考えましょう。
ほとんどは上記の5つのなかに答えがあるはずです。
予防、評価、強化を繰り返すことで、スキンテアの発生率を低下させることができます。

それでもスキンテアが発生してしまったら?

予防策を講じてもスキンテアが発生してしまったら、以下の手順で応急処置を実施し、医師または看護師に相談してください。

  1. 1.圧迫して止血する
  2. 2.流水で洗い流す
  3. 3.ワセリンなどを塗布し、ガーゼ保護

出血が止まったら、弱いシャワーで汚れや血液の塊を除去します。
剥がれた皮膚が残っている場合は、皮弁をもとの位置に戻すことで治癒が促進されるのですが、無理に戻そうとはしないでください。
まずはワセリンなどで皮膚の潤いを保つことのほうが大切です。
皮膚を乾燥させない(浸潤を保つ)ことは、皮膚が欠損してしまったタイプのスキンテア保護の場合も同様です。
(浸潤の効果についてはこちらの記事が参考になります)
ガーゼをあてる際は、皮膚に直接テープで留めず、包帯やネットを使いましょう。
「スキンテアは皮膚の潤いを保つ工夫を施し、医療者に相談する」
家族指導でも伝えていきたいことです。

スキンテアを周知することが課題

高齢化に伴い、在宅介護が増加することを考えると、スキンテアの知識は一般の方にこそ必要なものです。
医療や介護に従事する人は、スキンテアに関する正しい知識を習得し、介護者に指導していかなければなりません。
スキンテアを完全に予防することは困難だからこそ、誰もが日常的にできる予防策と、起きてしまったときの対処法を知っておくことが大切なのです。

参考:
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(編):ベストプラクティス スキンテア(皮膚裂傷)の予防と管理.照林社,東京,2015.

  • 執筆者

    橘ゆみ

  • 訪問看護師の橘ゆみです。国立病院附属看護学校卒。
    日赤病院、総合病院にて手術室、小児、NICU、ICU、循環器科、脳神経外科等に勤務。
    病棟主任、看護学生の臨地実習指導者として充実した日々を過ごしました。
    結婚・出産・子育てとライフスタイルにあわせて働きかたを変え、現在は訪問看護師をしています。
    高齢化が進む日本において介護や介護予防は大変重要な分野です。
    分かりにくい介護保険制度をできるだけ分かりやすく、また介護に関する有意義な情報をお伝えしていきたいと思います。
    保有資格:看護師免許、臨地実習指導者

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