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介護スタッフとうまく連携するために理学療法士・作業療法士が知っておきたいポイント

近年、理学療法士や作業療法士が介護施設で働くことが増え、介護スタッフとうまく連携できるリハビリ専門職の重要性が高まっています。
とりわけ、新人スタッフや病院やクリニック一筋で働いてきた理学療法士や作業療法士は連携に戸惑うことも少なくありません。
そこで、介護スタッフとうまくコミュニケーションを図り、連携を深めるコツを紹介します。

“介護スタッフとPTとOTと”

介護スタッフとの連携を始める第一歩は相手を知ること

連携をうまく進められない理由として、介護スタッフの仕事内容や専門性をよく知らずに、リハビリに関して指示や依頼ばかりするという点が挙げられます。
そこでまずは、介護スタッフにリハビリ職から歩み寄ることから始めましょう。

●介護の業務の流れを知れば報連相がスムーズに

介護施設では、24時間365日絶え間なく生活を支援する介護スタッフの存在があり、その業務は多忙なものです。
しかし、そんな中でもとりわけ忙しい時間帯や比較的ゆとりのある時間帯など流れがあります。
もし、忙しい時間帯にコミュニケーションを図ろうとしてもうまくいきません。
そこで、業務の流れを知り、コミュニケーションを図りやすい時間帯を把握することが重要です。
また、役職によっても業務の内容が変わりますので、役職ごとに声をかけやすいタイミングを把握するのもおすすめです。
また、入所施設では夜勤帯などリハビリ職が不在時の業務を把握しておくのも必要です。
筆者が新人のころ夜間のポジショニングの依頼を、介護スタッフにしてもうまく実施してもらえませんでした。
そこで、夜勤帯に一緒に出勤して、ポジショニングを調整してもらいやすいタイミングを聞きながら、一緒に考えてうまくいった経験があります。
一緒に夜勤をするまではしないでよいかもしれませんが、どのような業務の流れかを知ることは重要です。

“介護施設の1日の流れを把握しよう”

●介護のプロフェッショナルという敬意を忘れずに

介護スタッフは「介護のプロフェッショナル」です。
入浴やトイレ介助などからもわかるように、理学療法士や作業療法士よりも、利用者さんの日常生活に深く、長く関わる専門職です。
リハビリ職が気づいていないような生活動作や利用者さんの気持ち、体の変化に気づいている場合も多くあります。
そのため、決して上から目線になるのではなく、しっかりと介護の専門職であるという敬意を忘れないようにしましょう。

“上から目線の会話?敬意を持って会話◯”

●スタッフの得意分野や人柄が知れれば◎

スタッフそれぞれの得意や人柄を知ることで、連携が図りやすくなります。
すぐにすべてを把握するのは難しいですが、リハビリで利用者さんと接するのと同様に、介護スタッフに関しても、「その人を理解する」という視点で関わることはリハビリ職なら可能なはずです。

  • 「トイレでの動作に関しては〇〇さんに聞こう」
  • 「行動・心理症状の有無については〇〇さんに聞こう」
  • 「〇〇さんはリハビリのレクリエーションが好きなので協力してもらおう」

というようにスタッフに合わせたコミュニケーションが可能になります。

介護スタッフとのコミュニケーションで実践したい7つのポイント

介護スタッフとコミュニケーションをとるための、具体的な工夫ポイントを紹介します。

1.専門用語はわかりやすく

リハビリ職が使う専門用語が連携の妨げとなることも、少なくありません。
理学療法士であれば、「ハムストリング」、「内旋」など解剖学や運動学の用語を出したり、筋緊張のメカニズムを解説したりしても介護スタッフはピンときません。
そのため、「太ももの裏の筋肉」、「内側に脚を捻る」など介護スタッフと共通で理解できる内容で伝えましょう。

“専門用語はすべて通じると思ったら大間違い”

2.伝えるより先に聞く

リハビリ職からの依頼をする前に、介護スタッフからの情報を聞くことで、お互いの意見を尊重して、同じ方向性を向くことができます。
たとえば、日中のシーティングについて変更をする場合、いきなり変更依頼を出すのではなく、以下のように質問から始めましょう。

  • (リハビリ職)「最近、〇〇さんの姿勢で崩れている様子はないですか?」
  • (介護スタッフ)「左に傾いているように見えます」
  • (リハビリ職)「確かにそうですね。シーティングの調整をしますので、引き続き様子を観察してみてください」

というようにすると、一方通行にならず、双方向のコミュニケーションが図れ、多職種での連携がとれやすくなります。

“現状を把握してから伝えた方がうまくいくよ”

3.話しかけるタイミングやスタッフを考える

前の項目で紹介したように、介護業務の流れやスタッフの特徴を知って、話しかけるタイミングやスタッフを考えることは、コミュニケーションをスムーズにするポイントの1つです。

“忙しい時はイラッときちゃうのでタイミングを考えて”

4.伝えるときは目的や効果も明確に

リハビリに関する依頼を伝えるときに、具体的な目的や効果も一緒に伝えるようにしましょう。
たとえば、ポジショニングについて依頼するときには、

  • 「仙骨部の皮膚が薄く、栄養も取れていないため褥瘡ができやすい状態」
  • 「一度、褥瘡ができると進行しやすく、活動が制限されたり、感染症の原因となる」
  • 「皮膚の薄い部分の圧を逃すためにポジショニングが必要」

というように具体的に伝えると、介護スタッフもしっかり目的を持って取り組みやすくなります。

“曖昧な内容はダメ。目的もしっかり教えて”

5.実施した結果を必ず伝える

介護スタッフと連携して行った取り組みの結果がどうなったかをしっかり伝えるようにしましょう。

  • 「毎日、介護スタッフに〇〇さんの立ち上がり練習をしてもらった結果、杖歩行が安定してきました」

など、しっかりフィードバックまで行うことで、より介護スタッフも連携に対する意識を高めてもらえます。

“フィードバックはとっても重要”

6.視覚的な情報も活用する

言葉で伝えてもわからないことは、写真や図を活用しましょう。
また、掲示場所をリハビリ職だけで決めるのではなく、どこに貼れば目につくかを介護スタッフに聞いて掲示しましょう。

“目から入ってくる情報は記憶に残りやすいよ”

7.ささいなことでも声をかける

意外と重要なのがささいなことでも声をかけるという視点です。
もちろん、頻繁に雑談をするのは業務の妨げになりますが、一言でもいいので何か声をかけると親近感を持ってもらえる場合もあります。
特に、感謝の気持ちを伝えることはとても大事です。

  • 「トイレの介助に一緒に入ってもらって助かりました」
  • 「リハビリの時間に手伝ってもらいありがとうございます」

などささいなことでも感謝の気持ちを伝えましょう。

“ありがとうって言ってもらえると気持ちいいよね”

リハビリの役割を伝えるために勉強会を開催しよう

連携を深めようとする場合、勉強会を開催することがおすすめです。
勉強会を通して、コミュニケーションを図ることができるのはもちろん、リハビリ職としての考え方や視点を伝えることができ、日頃の連携がスムーズになります。
そこで、勉強会を開催する場合に注意したいポイントを紹介します。

●短い時間から始める

忙しい業務のあとなどに長い勉強会をしても、一方通行になりかねません。
まずは、「ミーティングの中の15分間」「朝礼の10分間」など短い時間から始めましょう。

●業務に生かせる内容を入れる

介護スタッフが業務に生かせる内容がおすすめです。
腰痛予防の福祉用具の使い方や介助方法などでは、利用者さんだけでなくスタッフにもメリットがありおすすめです。
また、体をケアする体操(例:これだけ体操など)も介護スタッフが興味を持ちやすいです。

●リハビリの考え方を部分的に伝える

介護スタッフと一緒に関わって効果的だった取り組みや症例を、リハビリの視点で伝えることで、リハビリの考え方を介護スタッフと共有することができます。
そして、「リハビリはリハビリ職だけでするのではなく、多職種で力を合わせてこそ大きな効果を生む」ということが伝わることが重要になります。

介護スタッフと連携を深めてリハビリの効果を最大限に高めよう

介護分野ではリハビリ職が利用者さんと関わるのは限られた時間です。
一方、介護スタッフは非常に長い時間利用者さんと関わります。
そのため、介護スタッフとうまく連携を図り、一緒にリハビリに取り組んでいくことで、リハビリの効果を最大限に高めることができます。
お互い専門職として尊重しあい、信頼関係をしっかり築くためにコミュニケーションを工夫しながら、多職種連携でより良いリハビリを実践しましょう。

  • 執筆者

    蔵本雄二

  • 整形外科クリニックや介護保険施設などで理学療法として従事してきました。
    現在は県下でも有名な地域包括ケアシステムを実践している法人で理学療法士として勤務しています。
    そのため、施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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