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増える自然災害へどう対処する?高齢者施設での防災対策の必要性

毎年のように起きる自然災害に対して、高齢者施設では防災対策が必要となりました。
災害で一番困ることは建物の倒壊やライフラインが切断されることです。
災害時に、できる限り入所者を保護できるよう平時から防災対策を整えておきましょう。

高齢者施設での防災対策

災害が起きる前に防災対策が必要

2016年9月に、厚生労働省より介護保険施設等に利用者の安全確保及び非常災害時の体制整備の強化徹底についての通知が出されました。
その通知には、市町村から発令される避難準備情報や避難勧告等は確実に把握すること、非常災害計画の策定と避難訓練など、防災対策の強化徹底を施設が行うように勧め、自治体への点検を促しています。
災害時に備えるために高齢者施設では、避難確保計画や非常災害対策計画を策定しています。

●避難確保計画と非常災害対策計画を作成する

避難確保計画と非常災害対策計画を作成する

避難確保計画は、浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定内にある市町村が作成する地域防災計画に記載されている配慮が必要な社会福祉施設等で作成する計画のことで、作成した避難確保計画は市町村に提出します。

一方、非常災害対策計画は、介護保険サービスを受ける全施設や事業所(訪問系サービスは除く)で作成が義務付けられています
介護保険サービスを受けている施設では、非常災害対策計画と避難確保計画の両方の策定が必要ですが、非常災害対策計画の中に「避難確保を図るための施設の整備」と「防災教育及び訓練の実施」を盛り込むことで避難確保計画を作成したとみなされます。

1)避難確保計画に必要な内容

  • ○計画の目的
  • ○計画の適用範囲
  • ○防災体制
  • ○情報収集及び伝達
  • ○避難の誘導
  • 避難確保を図るための施設の整備
  • 防災教育及び訓練の実施
  • ○自衛水防組織の業務(自衛水防組織を設置する場合に限る)

2)非常災害対策計画に必要な内容

  • ○介護保険実施等の立地条件
  • ○災害に関する情報の入手方法
  • ○災害時の連絡先及び通信手段の確認
  • ○避難を開始する時期、判断基準
  • ○避難場所
  • ○避難経路
  • ○避難方法
  • ○災害時の人員体制・指揮系統
  • ○関係機関との連携体制

●建物の耐震化や防火対策

建物の耐震化や防火対策

1982年以前に竣工した建物は耐震性が弱い建物もあるので、耐震診断を基に補強工事等をしておくことで建物の倒壊の危険性が低くなります。
また、建物内にあるタンスやロッカーなどを金具で取り付けることや照明器具などを鎖等で取り付け、落下を防ぐ工夫が必要です。
地震等の災害時に発生しやすい火災の防火対策として、薬品や可燃物等は落下しないようにして火の気がない場所に保管しましょう。
各階の消化器の設置場所や期限を確認して、避難訓練の際には消化器の扱い方を職員全員に周知します。
自動火災報知機を設置し、火災のときに作動するように定期的な点検が必要です。
施設の屋外についても、看板が落下しないか、剥離した壁がないかなど点検をし、修理をしておきましょう。

●食品や日用品の備蓄、蓄電池の準備等

食品や日用品の備蓄、蓄電池の準備等

災害時はライフラインが止まって、食料や水などが購入できない事態になります。
ライフラインの復旧は一般に3日ほどですが、1週間以上かかる場合もあります。
最低3日分の備蓄品リストを作って、備蓄してあるか、賞味期限や消費期限が切れていないかをチェックしておきます。

備蓄品リスト例(7日分)

種類 備蓄品 数量 保管場所 備考
食品 2ℓ1本/人×7 倉庫
お茶 2ℓ1本/人×7 倉庫
カップ麺 食品棚
缶詰 食品棚
乾パンや缶詰のパン 食品棚
お菓子 ステーション
レトルト介護食 食品棚
レトルト食品 食品棚
フリーズドライ食品 食品棚
医薬品 消毒液や包帯、ガーゼ等 人数分 薬品庫
解熱薬 人数分 薬品庫
下剤 人数分 薬品庫
風邪薬など 人数分 薬品庫
衛生品 紙おむつ 倉庫
パット 倉庫
紙パンツ 倉庫
おしりふき、
ウエットティッシュ
倉庫
トイレットペーパー 倉庫
ティッシュペーパー 倉庫
入歯洗浄剤 倉庫
歯ブラシと歯磨き粉 倉庫
その他 紙コップや紙皿 3食×7日/人 倉庫
箸やスプーン、フォーク 3食×7日/人 倉庫
タオル 倉庫
乾電池 倉庫
ゴミ袋 倉庫
カセットコンロ 火の気がない場所
カセットボンベ 火の気がない場所
ラップやアルミホイル 倉庫
非常用電灯 すぐに出せる場所
寒い時期 毛布 人数分 寝具置き場
携帯カイロ 人数分 すぐに出せる場所
石油ストーブ 火の気のない場所

災害時のマニュアル

災害時のマニュアル

●警報や注意報が出たらハザードマップでリスク確認

注意報や警報が出たら、すぐにハザードマップを用いて地震や津波、土砂崩れ、水害などのリスクを職員間で速やかに検討し、避難経路や避難場所を確認します。

●備蓄した品物の確認

ライフラインが停止する可能性を考えて、すぐに必要な非常用電灯や日用品類、食品類等を準備します。
ナースコールに対応しているPHSはフル充電しておきましょう。
医療機器を使っている人には非常用自家発電機が必要です。
断水する可能性も考えて、ポリタンク等に水をためて、水分摂取が行えるだけの水やお茶などが備蓄されているかを確認します。
また、ガスが停止することを考えて、カセットコンロやカセットガスを使った簡単な調理で入居者の食事ができるように準備します。
地震や冠水で自宅に住めない高齢者は、高齢者施設が受け入れます。
熊本地震では、南阿蘇のある施設が自宅が倒壊した高齢者のためにカーテンで仕切りをつけて居室を作り、入居者プラスアルファの高齢者を受け入れていました。
そのような場合のために、備蓄する品物は多めに準備することに越したことはありません。

●災害時の避難誘導の職員の配置

災害が発生する前に、避難誘導や家族への対応、被害状況の確認など、ケア以外に対応することが発生します。
連絡して出勤者と出勤できる代替職員で災害対応の配置を決めます。

●入居者と職員の安否を確認する

災害時には入居者が不安定になり、容体が急変する場合もあります。
入居者の安否状況を確認して、適切な対応を行います。
同時に、連絡網で各職員の安否確認も行い、今後の出勤体制も再考します。

●避難誘導

施設に亀裂が入って倒壊の恐れがある場合は、ほかの施設や避難場所へ誘導しなくてはなりません。
一般の人が避難している体育館では、認知症がある方や病気を抱えている高齢者には一緒に過ごすことが難しいので、受け入れ可能な施設へばらばらに入居者を誘導することになるかもしれません。
避難経路を確認して、避難訓練を日頃から行い、災害時に速やかに避難できるよう対応する必要があります。

●地域やボランティアの助けによる災害後の入居者の心身のケア

被災した高齢者が急に施設に入れられたため、精神的にかなり不安定になっている入居者の方もいます。
慣れた施設の入居者であっても、ライフラインが止まり真っ暗な中を過ごさなくてはならないので、体調を崩してしまう入居者もいます。
被災するのは入居者だけでなく、職員も被災します。
災害時には職員の数が減るため、地域の人やボランティアの手を借りることも必要でしょう。
そのような場合の心身のケアには、DMAT(災害派遣医療チーム)の要請も行われています。

高齢者施設で災害が起きても対応できる備えが必要

高齢者施設で災害が起きても対応できる備えが必要

災害はいつ起きるかわかりません。
平常時に、ハザードマップより地形上のリスクを把握して避難訓練を行いましょう。
ライフラインが止まっても対処できるような備蓄も大切です。
各自治体から出されているマニュアルを基に、災害が起きても対処できるように備えをしておきましょう。

参考:
厚生労働省 介護保険施設等における利用者の安全確保及び非常災害時の体制整備の強化・徹底について.(2019年10月13日引用)
全国有料老人ホーム協会 行政からのお知らせ.(2019年10月13日引用)
石川県 高齢者施設における防災計画作成指針について.(2019年10月13日引用)
福岡県 高齢者福祉施設等 防災計画策定マニュアル.(2019年10月13日引用)
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 災害マニュアル作成の手引き.(2019年10月13日引用)

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