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介護のバウチャー制度の現状と導入のメリット&デメリット

諸外国で取り入れられているバウチャー制度は、介護保険が創設された当時から検討がなされてきました。
バウチャー制度を取り入れることで、介護サービスが受けにくい低所得者も受けやすくなります。
1998年の規制緩和推進3か年計画で、介護手続きの支払いの多様化により、それぞれの自治体でバウチャー方式の導入が可能となりました。

介護のバウチャー制度メリット&デメリット

バウチャー制度とは?

バウチャーとは、一般にクーポン券や回数券を意味する英語で、高齢者介護だけでなく学校教育や子育て、住宅などいろいろな分野で検討されています。
介護のバウチャー制度では介護認定された個人に対して国や自治体が補助金を出し、それを利用して介護サービスを受けられる制度です。
自治体では、利用券(クーポン券やICカード)で支給されることが一般的で、利用者は状況に応じて必要なサービスを選んで受ける(現物給付)ことができます。

障害福祉サービスでは、バウチャーとして重度心身障害者の方に対して、ガソリン券やタクシー券が交付されています。

●バウチャー制度の特徴

バウチャー制度の特徴

バウチャー制度の特徴として、選択できること、使途が限られていること、ほかの人は利用できないことが挙げられます。

1)選択できること

利用者個人が訪問介護サービスなどの介護保険サービス、住宅改修費や福祉用具購入費など、指定されたサービスの中で、自分が必要なサービスを選択できます。
たとえば、在宅で暮らしている介護認定を受けた高齢者が、自分の家に手すりをつけることと段差を解消する住宅改修をする場合、利用券を使うと次の流れになります。

  • ○ケアマネジャーまたは住宅改修の工事業者が自治体の窓口に住宅改修の申請をする
  • ○審査に通れば住宅改修をする
  • ○利用者が利用券(バウチャー)を工事業者に渡し、残りの工事代金を支払う(利用券がない場合は全額の工事費用を支払う必要がある)
  • ○工事業者は自治体に申請すると、利用券の代金が自治体から支払われる

※介護保険では、住宅改修の支給限度額は要介護度に関係なく20万円までです。
それを超えた額は自己負担です。
これは、住宅改修の償還払いの例です。

2)使途が限られていること

利用券は現金と同じような使い方はできません。
介護バウチャーの場合、介護保険に関わるサービスの利用に限られているので、食料品や日用品などに使うことはできません。

3)ほかの人は利用できない

利用券は、利用者本人しか使うことができず、ほかの人に譲渡はできません。
もし譲渡できるなら、それを売却する人がいるかもしれません。

バウチャー制度導入のメリットとデメリット

バウチャー制度の導入は各自治体に任されています。
この制度のメリットとデメリットを見てみましょう。

●バウチャー制度のメリット

バウチャー制度のメリット

この制度の3つのメリットについて説明します。

1)必要に応じたサービスの選択

バウチャー制度のメリットは、バウチャーを利用して自分に必要なサービスを選択できることです。
そして、収入が低い人も満足したサービスを現物給付で受けられます。

2)自治体の財政支出を削減できる

利用券を配布する人は、利用券がなくては介護サービスを利用できない収入が低い人に限れば、全世帯に利用券を配布するより財政支出を削減できます。

3)バウチャー制度によって競争が生まれサービスの質が向上する

利用者が施設サービスを自由に選べることで必要に応じたサービスが受けられます。
すると、事業者間に競争が生まれるため、サービスの質が向上します。

●バウチャー制度のデメリット

バウチャーの交付は、配布する基準を決めることが難しく、多くの人に配布すると財政支出が膨らむ恐れがあります。
また、バウチャー制度の導入には、人によってニーズが異なるため、交付する対象を絞ることが難しいという課題があります。
バウチャー方式は不正利用対策が必要ですが、利用券の使途を限定しすぎると、交付しても利用しにくいものになってしまいます。

バウチャー制度の現状とモデル事業としての自治体の例

現在、バウチャー制度を実施している自治体の現状やバウチャー制度のモデル事業に取り組んだ自治体例を紹介します。

●バウチャー制度の現状

バウチャー制度の現状

厚生労働省の2018年度介護保険事務調査の集計によると、バウチャー制度を利用している自治体の数は全国で9つしかなく、全体の0.6%のみです。
前年度と比較すると、4自治体がバウチャー制度を取りやめています。
介護保険が創設された当時は、不正受給をなくすためにも全ての自治体での導入が必要ではないかと検討されていましたが、実際に導入している自治体はわずかです。
実施している自治体の数が少ないのは、複雑な介護保険の業務以外に事務作業が増えることやバウチャー方式のデメリットがあるためと考えられます。
住宅改修や福祉用具購入は基本的には償還払いですが、受領委任払いを認めている自治体も増えています。
償還払いとは、かかった費用を利用者が全額支払い、後に自治体から利用者に9割(7、8割)が戻ってくる支払い方法です。
受領委任払いとは、利用者は1割(2、3割)しか事業者に支払う必要がなく、残りの費用は自治体から直接事業者に支払われる方法です。

●バウチャー制度の自治体の例

1)モデル事業として1998年にバウチャー方式を取り入れた自治体

東京都が主体となり、1998年に東久留米市と田無市では、バウチャー制度のモデル事業としてホームヘルパーなどのサービスを受けられる基準該当サービスが行われました。
モデル事業では自治体が介護利用券を前もって交付することで、要介護認定者が介護サービスを少ない負担で受けられることを目的としていました。
当初は、介護サービスを民間非営利団体から受けるには、介護サービスの利用分を全額利用者が負担しなくてはなりませんでした。
そのため、交付された利用券を民間営利団体に渡すことで、1割負担でサービスが受けられ、民間非営利団体は自治体から介護サービス費用の9割を受け取ることができました。
バウチャー方式は、利用者の負担を軽減することで、民間の非営利団体を積極的に活用できるようにすることが目的でした。
現在は、ほぼ1割負担で介護サービスを受けられるため、利用券は住宅改修や福祉用具購入などの償還払いに利用されています。

バウチャー制度導入ですべての人が介護サービスを選択できる

バウチャー制度導入ですべての人が介護サービスを選択できる

バウチャー方式の課題は多いですが、低収入の利用者もさまざまな介護サービスを受けられるというメリットも見過ごせません。
利用券で施設の空き部屋をショートステイに利用できたり、訪問介護サービスやデイサービスを自由に選べたりすると、バウチャー方式が利用価値の高いものとなるでしょう。

参考:
介護保険最新情報Vol.739.(2019年10月28日引用)
介護保険の利用券(バウチャー)方式のモデル事業.(2019年10月28日引用)
政策効果分析レポート.(2019年10月28日引用)

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