介護職は精神的な疾患の労災請求件数がトップ!仕事を続けるための気持ちの持ち方や体のケア
介護職は、うつ病などの精神的な疾患を引き起こす人が多いという結果が出ています。
精神的な疾患を引き起こす原因や、精神的な疾患にならないように仕事を続けるためのモチベーションの保ち方を筆者の経験を交えてご紹介したいと思います。
介護職の精神的な疾患の労災請求件数
厚生労働省が2018年10月に発表した「過労白書」では、2018年の精神的な疾患の労災請求件数では、社会保険・社会福祉・介護事業の請求件数がトップです。
- 1)社会保険・社会福祉・介護事業 192件 自殺6件
- 2)医療業 127件 自殺9件
- 3)道路貨物運送業 89件 自殺7件
- 4)総合工事業 68件 自殺16件
- 5)情報サービス業 65件 自殺10件
仕事のストレスなどでうつ病を発症し、労災を請求した精神障害の件数が2014年までの5年間で2倍にも増え、労災に認定された件数は3倍にも上っています。
す。
業種別の支給決定件数は、社会保険・社会福祉・介護事業と医療業が35件で、道路貨物事業の37件についで2位に多い件数です。
介護職が精神的な疾患に陥る原因
介護職は離職率が高く、一度辞めるとその後は介護職につかないケースも多いです。
介護職が精神障害に陥ってしまう要因はさまざまです。
●労働条件や仕事の悩み
介護労働センターの2018年の介護労働実態調査の結果で、労働条件や仕事の悩みに挙げられる項目は次の通りです(複数回答)。
- 1)人手が足りない 54.2%
- 2)仕事の内容のわりに賃金が低い 39.1%
- 3)有休休暇が取りにくい 31.5%
- 4)身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)30.2%
- 5)精神的にきつい 26.3%
- 6)業務に対する社会的評価が低い 24.9%
- 7)休暇が取りにくい 23.2%
- 8)夜間や深夜時間帯に何か起きるのではないかと不安がある 16.5%
特に、介護業界は深刻な人手不足のため、限られた人数で職員を配置しなくてはなりません。
その上、介護報酬という枠の中で人件費を捻出しなくてはならないので、多くの職員を雇うと経営が赤字になる可能性があります。
少ない職員で仕事を行うため、職員一人にかかる負担が大きく、ストレスを抱える職員が多いのです。
●介護の仕事を離職した理由
- 1)職場の人間関係に問題があったため 22.7%
- 2)結婚・妊娠・出産・育児のため 20.3%
- 3)他に良い仕事、職場があったため 17.6%
- 4)法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 16.5%
- 5)収入が少なかったため 16.4%
- 6)自分の将来の見込みが立たなかったため 16.3%
職場での人間関係の悩みでは、施設系、訪問系、通所系と分けて調査を行っています。
実際に離職した理由では、人間関係がトップで、施設や事業所の考え方に不満を持っている人や収入面での悩みなどが挙げられています。
特に、施設系では1日中同じメンバーで仕事をするので、人間関係が難しいとストレスを受けやすくなります。
介護実態労働センター「介護労働の実態」によると、労働者が前職を辞めた理由は職場の人間関係がトップです。
その中でも「部下の指導が厳しい」では、入所系31.7%、訪問系16.6%、通所系21.0%です。
また、「自分と合わない上司や同僚がいる」では、入所系27.8%、訪問系16.9%、通所系22.0%です。
どの項目でも人間関係の悩みで離職している人が多いのは施設系です。
閉鎖された社会で、同じ顔ぶれといつも付き合うため、合わない場合はかなりのストレスになるようです。
それだけでなく、介護の仕事は、体力のいる仕事で腰痛や膝を傷めるなど肉体的にもきつい仕事です。
そのため、介護の仕事は精神的、肉体的にもストレスがピークになりうつ病などの精神疾患になりやすいのです。
仕事を続けるための気持ちの持ち方や体のケア
最初は介護の仕事に意欲を燃やしていた人も多いかもしれません。
利用者のことを考えて一生懸命仕事をしてきた人ほど、燃え尽き症候群となってうつ病を発症する率が高いのです。
●仕事を続けるためにモチベーションを下げない秘訣
筆者は在宅介護現場で長年仕事をしてきましたが、一人で現場で仕事をするため、悩みを抱え込むことが多く、次第にモチベーションが下がってしまいました。
利用者からの要求が増すことや物取られ妄想で精神的にうつ状態に陥りました。
同じように精神的な疾患で悩む方に、介護の仕事ができるようになったコツをお伝えしたいと思います。
1)仕事は仕事、プライべートはプライベートと割り切る
福祉の学校を出てすぐに仕事についた人は、介護の仕事に理想を持って就職したと思います。
しかし、現実は毎日の業務をこなすだけで精いっぱいの状態で、疲れてぐったりしてしまうことが多いでしょう。
また、利用者とゆっくりコミュニケーションを取りたい、入浴をゆっくりとさせてあげたい、一人ひとりに十分に接したいと思っても施設では難しい状況に直面してがっかりするかもしれません。
一生懸命しすぎて燃え尽き症候群になり、うつ病を発症した人も多いです。
家に帰ったら気持ちを切り替えて、自分の好きな時間を過ごしましょう。
仕事は仕事と割り切ることも仕事を続けられるコツです。
2)人間関係の悩みは上司や同僚に相談する
一人ひとりは考え方が異なり、自分にとって合わない人と一緒に仕事をすることもあります。
人間関係が悪化して、我慢しているとストレスで精神疾患を引き起こすことがあります。
つらい状況なら、自分一人で抱え込まずに上司に相談してみましょう。
それでも改善されないなら、働きやすい現場への転職も視野に入れる必要があるかもしれません。
3)パワハラやセクハラに悩む場合
また、介護の職場ではパワハラ件数が増えています。
利用者や家族からのパワハラやセクハラを受けた場合は、上司にありのままを伝えましょう。
訪問介護ならほかの職員に変更することができます。
上司はケアマネと相談して、利用者や家族と話し合って対処します。
上司からのパワハラやセクハラなどに悩んでいるなら、各都道府県労働局の労働相談センターが窓口として受け付けています。
労働相談センター窓口 各都道府県労働局の労働相談センター(祝祭日、年末年始をのぞく平日8:30~17:15) https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/ |
4)将来のスキルアップの場と考える
介護職への処遇改善は徐々に上がっており、基本給以外にさまざまな手当が支給されています。
同じ職場で10年以上働いている介護職員や、新任教育を担当している介護職員には手厚い処遇改善金が出されます。
また、実務経験を積むと介護福祉士や社会福祉士の資格を取得できるので、スキルアップして給料もアップすることが可能です。
●日々の体のケアや心のケアは大切
介護現場では腰や膝を痛めて現場を去る人が多いです。
腰を痛める前に、日々のケアを行い、自分の体を守りましょう。
今、精神的な疾患に陥っているなら、休職して精神的に安定させることが先決です。
状況によっては労災を請求できるので、下記の「精神障害の労災認定」のURLを参考に申請してください。
1)コルセット装着で腰を守る
施設では、大勢の入所者のオムツ交換やトイレ介助、入浴介助、離床介助など腰を使う場面が多いです。
新人で経験が少ない人は腰痛用のコルセットをつけないで介護をする人がいますが、腰痛がない人でもコルセットを装着することをおすすめします。
筆者は60代で若い人と同じように施設の介護現場で仕事をしているので、必ずコルセットをつけて仕事をしています。
おかげで、腰痛で苦しむことはありません。
2)睡眠を十分に取る
夜勤で睡眠不足だと、業務に抜けがあったり、ミスをしたりすることがあります。
睡眠は心身ともに休めるために大切です。
ゆったりとリラックスして入浴し、睡眠を十分に取って、リフレッシュして仕事にのぞみましょう。
3)朝の運動で体を動きやすくする
朝は特に体が硬くなっています。
そのまま仕事に入ると、体が思うように動かず、故障につながりかねません。
現在、筆者は自宅から10分の距離にある職場までウォーキングをして出勤しています。
ウォーキングをすることで体があたたまり動きやすくなります。
ラジオ体操もすべての運動が入っているので効果的です。
また、精神的な疾患に陥っている方におすすめしたいのは朝の瞑想です。
瞑想は精神的なストレスを軽減し、集中して仕事に取り組むことができるようになります。
日々のケアと休息を十分取りながら介護の仕事をしよう
2025年には75歳以上の後期高齢者が全体の1/4になると予想されています。
反面、介護職員が34万人も不足しているといわれています。
介護士の仕事は心身ともに健康でないと続けられる仕事ではありませんが、社会への貢献度が高い仕事です。
まず休息を十分に取って、毎日の疲れが残らないように体もケアしながら、介護の仕事を続けましょう。
介護現場の環境改善には、次の記事も参考になさってください。
介護現場での燃え尽きを防ぐ~離職を減らすマネジメント
介護職員同士の人間関係での離職対策~離職を減らすための人事考課制度の活用
介護スタッフの定着に実効性がある業務改善
2019年10月に介護報酬改定!技能や経験ある介護職員に朗報
参考:
厚生労働省「精神障害の労災認定」.(2019年12月19日引用)
厚生労働省 公表資料 H30別添資料 「精神障害の労災補償状況」.(2019年12月19日引用)
日本経済新聞 「介護職員の精神疾患、労災申請5年で倍 厚労省集計」.(2019年12月19日引用)
介護労働安定センター 介護労働の現状について.(2019年12月19日引用)
介護労働安定センター 平成30年度「介護労働実態調査」の結果.(2019年12月19日引用)