訪問介護や訪問看護の訪問ルートはシステム化で簡単に!さまざまなメリットが得られる
高まる訪問介護や訪問看護のニーズにこたえるためには、効率的な訪問ルートの作成が重要です。
利用者・事業者双方に最適なルートの作成には、ITの活用が欠かせません。
本記事では手作業で作成する限界を述べた後、ITを用いるメリットを解説します。
訪問ルートを組む際の課題
利用者宅に訪問するルートを決める作業は複雑であり、なかなか難しいものです。
「頭痛の種」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは訪問ルートを決める作業が難しい理由について、3つの課題を取り上げ解説していきます。
●できるだけ多くの箇所を訪問するには、移動時間の節約がカギ
訪問ルートを組む際には、1日、あるいは限られた時間内でできるだけ多くの件数を割り当てたいものです。
1日の訪問数を増やすことで事業者の収入も増え、安定した経営に寄与できます。
もっとも、1日当たりに訪問できる件数や人数は多くありません。
訪問先に多くの利用者がいる場合は短時間でも多くの方に対する対応ができますが、このようなケースが毎回あるとは限りません。
実際には「移動して利用者の対応を行い、また移動」といったことを繰り返すケースも多いでしょう。
1件でも訪問数を増やすためには、移動時間の節約が重要です。
よく考えないでルートを組むと「やたら移動が多いのに訪問件数が少ない」事態になりかねないため、訪問ルートの作成には工夫が求められます。
●訪問頻度や時間、訪問者は、できるだけ利用者のニーズに合わせたい
訪問する頻度や時間は、利用者の希望にできるだけ合わせることも重要なポイントです。
特に訪問介護では、以下のように1日に複数回の訪問が必要となるケースもあります。
- ○食事作りや食事の介助
- ○排泄の介助
- ○服薬確認
これらの介護は、毎日一定の時刻に訪問して行うことがベストです。
曜日によって訪問ルートが変わる場合でも、「今日は昼食が10時、明日は15時」などのように、極端に時間を変えることは望ましくありません。
加えて利用者とのコミュニケーションも重要となるため、利用者が必要とするスキルや、相性がよいスタッフを重点的に割り当てる必要もあるでしょう。
このようにルート作成にあたっては、個々の利用者のニーズにこたえることも求められます。
●訪問先の数が増えると順序の選択肢も急増。手作業で最適のルートを見つけにくい
1日に訪問する数が増えると、順序の選択肢も以下のように急増します。
訪問先の数 | 訪問ルートの選択肢の最大数 |
---|---|
1 | 1通り |
2 | 2通り |
3 | 6通り |
4 | 24通り |
5 | 120通り |
6 | 720通り |
7 | 5,040通り |
8 | 40,320通り |
9 | 362,880通り |
10 | 3,628,800通り |
参考:トライグループ 5分でわかる!順列とは?
トライグループ 5分でわかる!順列の計算2(nの階乗=n!)
たとえば1日3箇所の訪問なら最大でも6通りですから、十分に検討できるという方も多いでしょう。
しかし4箇所に増えるだけで、選択肢は24通りに急増します。
5箇所、6箇所ともなれば、手作業ですべてのケースを検討することは難しくなるでしょう。
もっとも訪問箇所が多い場合でも、スムーズに移動できるルートが見えてくる場合もあります。
しかし実際には時間の制約により、異なるエリア同士を頻繁に往復することが必要な場合など、最適な訪問ルートの作成に苦慮するケースも少なくありません。
訪問ルートの作成を自動化すると、簡単にベストのルートを見つけられる
訪問ルートの作成は、ITサービスを活用し自動化することがおすすめです。
最適なルートを短時間で簡単に見つけられますから、以下に挙げる4つの効果が期待できます。
- ○収入の増加
- ○経費の削減
- ○訪問件数の増加
- ○利用者の満足度が向上する
ここではなぜ自動化することがおすすめなのか、3つの理由を取り上げ解説していきます。
●訪問ルートの作成をコンピュータに任せ、訪問ルートの作成時間を短縮
あなたが24通りの訪問ルートから最適なものを選ぶ業務を命じられた場合、面倒に感じる方は多いでしょう。
これが720通りに増えると、「もう選べない」という方がほとんどと思います。
このように訪問先が4~5箇所に増えると、すべてのケースを検討し最適なルートを見つけることは難しくなります。
実務でも毎月手作業で訪問ルートの作成を行うことは大きな負担であり、毎月30時間以上を要するケースもあります。
一方で大量の組み合わせから最適なルートを見つけ出すことは、コンピュータの得意分野の1つです。
1日10箇所訪問しなければならない場合でも、すべてのケースを検討し最善の回答を短時間で提示。
必要な条件を入力するだけで簡単にベストのルートを確認できますから、もう悩む必要はありません。
訪問ルートの作成にかけていた時間も削減でき、その分を訪問件数の増加など、サービス向上にあてられることは大きなメリットです。
●移動時間も費用も節約でき、より多くの利用者宅へ訪問できる
最適な訪問ルートは、移動時間や距離が最小となる場合も多いです。
多くの場合は費用も節約できますから、経費削減にも貢献できます。
このため以下のように、より多くの時間を利用者のために提供できます。
- ○今まで訪問回数や対応時間を抑えていた利用者に対しても、必要な時間を割り当てられる
- ○より多くの利用者に対して、サービスを提供できる
これらを同じスタッフの数で対応できるわけですから、収入は増加し利用者の満足度も向上と、一石二鳥の効果が期待できます。
●利用者のニーズにマッチした、質の高いサービスを提供できる
訪問ルートをシステム化することで、「多くの方にサービスを提供する」「訪問回数を増やす」といった量だけでなく、質の向上も期待できます。
それは、以下のメリットが得られるためです。
- ○利用者が必要とするスキルを持つ方を、割り当てやすくなる
- ○利用者と相性がよい方を割り当てやすくなる
ITを活用すればさまざまな条件を設定しても、短時間で最適なルートを提示してくれます。
これにより利用者の多様なニーズにこたえることができ、質の高いサービスの提供につなげることができます。
訪問ルート作成システムの例
ITを活用した訪問ルート作成システムは実用化されており、今後も新しいサービスの登場が期待されます。
ここでは現在提供中のサービスと、実証実験が行われたサービスを1件ずつ取り上げ、解説していきます。
●ZESTが提供するサービス
ZESTは株式会社ゼストが提供する、訪問スケジュール作成サービスです。
以下のポイントを踏まえた訪問スケジュールを、瞬時に作成できます。
- ○利用者の要望や訪問曜日・訪問時刻の指定
- ○移動手段
- ○勤務スケジュール
- ○スタッフごとのスキル
たとえば「利用者ごとに訪問希望回数や曜日が異なり、それが毎月変わる」といった状況でも、スピーディーに対応しスケジュールを作成できます。
利用する事業者のなかには、以下のメリットが得られた事例もあります。
- ○毎月30時間以上かけていた訪問スケジュールとシフト作成時間が、4分の1に減少
- ○移動が効率化され、1人当たりの訪問件数が1件増加
- ○急なスケジュール変更にもすぐに対応できる
●伊藤忠テクノソリューションズとウェルモの実証実験
伊藤忠テクノソリューションズとウェルモは2019年5月から6月にかけて、AI(人工知能)を活用して訪問介護のヘルパーを最適に配置する、AIを活用したシステムの実証実験を行いました。
このシステムは、60以上の項目を考慮した上で訪問ルートやヘルパーのシフトを決定することが特徴です。
以下の項目は、その一例です。
- ○訪問を希望する曜日や時間
- ○ケア内容
- ○利用者の性別や性格
- ○ヘルパーとの相性や面識の有無
- ○訪問の優先度
- ○移動時間
- ○ヘルパーの勤務時間や、休暇の希望
- ○ヘルパーのスキル
このシステムが実用化されるとより多くの訪問が可能となることはもちろん、利用者の満足度も高まります。
これにより事業者の評判がアップすることや、経営の改善も期待できます。
訪問ルートの作成をシステム化することは、費用対効果の高い投資
訪問ルートの作成をシステム化することで、作成する時間と労力を省けることはもちろん、スタッフの効率的な移動も実現できます。
移動の無駄を省くことでスケジュールに余裕ができ、利用者に合ったスタッフを適材適所で割り当てやすくなります。
また利用者と接する時間や訪問件数を増やせることで、利用者の満足度と収入の増加を両立することも可能です。
システム化には費用がかかりますが、費用対効果の高い投資といえるでしょう。
参考:
医療法人SIRIUS いしが在宅ケアクリニック 特集 訪問診療医1日密着 石賀丈士先生(2020年7月25日引用)
メディヴァ 3.3 訪問診療のスケジュールの立て方と月間の収入目安(2020年7月25日引用)
ダイヤモンド 月100回の訪問介護は「異常」ではなく「模範」とすべき(2020年7月25日引用)
やさしい手 訪問介護のご利用事例(2020年7月25日引用)
トライグループ 5分でわかる!順列とは?(2020年7月25日引用)
トライグループ 5分でわかる!順列の計算2(nの階乗=n!)(2020年7月25日引用)
ゼスト トップページ(2020年7月26日引用)
ゼスト 事例紹介 シフト作成時間が4分の1に削減した上に、追加訪問が可能に。~医療生協ケアステーション うらしん様 「ZEST」導入事例~(2020年7月26日引用)
伊藤忠テクノソリューションズ CTCとウェルモ、最適化AIエンジンによる訪問介護のルート生成について実証実験を実施(2020年7月26日引用)
マイナビ CTCなど、最適化AIエンジンによる訪問介護のルート生成(2020年7月26日引用)
関連情報:
リハビリ・介護施設の施設基準や診療報酬・介護報酬(2023年4月30日引用)
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執筆者
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千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ
浦濱八代美 さん
2020年8月9日 9:29 PM
どんな急変がありますか色々あります?