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ケアマネも遭遇する8050問題!高齢の親と中高年ひきこもりの相談支援

高齢の親と中高年ひきこもりの子の「8050問題」。
ケアマネジャーやヘルパーが訪問先で中高年ひきこもりの存在に気づき相談を受けることもあり、対応方法や連携窓口の把握が重要です。
行政と民間の窓口、相談支援の際に気を付けるポイントを紹介します。

8050問題、どう対応する?

8050問題とは

8050問題とは

8050(はちまる・ごうまる)問題とは、80代の親が50代の子の生活を支える問題です。
1980~90年代に「ひきこもり」だった若者が、約30年経ち40代~50代を迎え、その親も70代~80代です。
長期のひきこもりで社会から孤立したり、親の年金を頼る暮らしで生活困窮していることが課題となっています。

なかには高齢の親に介護が必要となり親子の生命が危機にさらされるケースがあります。
2018年1月には札幌市で親子の衰弱死が発覚する悲惨な事件が起き、親が亡くなっても子が誰にも連絡できず死体遺棄容疑で逮捕される事件も相次ぎました。

内閣府が2018年12月に初めて中高年を対象とした全国調査を実施したところ、自宅に半年を超えてひきこもる40~64歳全国に推計約61万人という結果でした。
そのうち7割以上が男性で、いわゆる「こどおじ」(実家の子供部屋に住む中年男性)の一部にもひきこもりがあると考えられます。
同調査により、若い層より中高年のひきこもりのほうが多いと明らかになり、近年困窮の相談で窓口に訪れる高齢親が増加しています。
今後も長期高齢化や未婚率上昇により、8050問題の親子はさらに増加していくとみられ、孤立防止や困窮への対策が急がれます。

国の取り組み・自治体の相談窓口

国の取り組み・自治体の相談窓口

この8050問題に対する国の取り組み、自治体ではどのような窓口が対応できるのかをご紹介します。

●厚生労働省

8050問題への対応拡充も目的に、2020年6月に改正社会福祉法が成立しました。
8050問題には「ひきこもり」「介護」「生活困窮者」といった多分野にまたがる課題解決が必要で、窓口をたらいまわしにされる問題がありました。
この改正社会福祉法が2021年4月に施行されると、市区町村の8050問題にワンストップで包括的に対応できる体制作りや財政面を国が支援します。
相談機関では「断らない相談」の整備が求められ、現在の地域包括支援センターの機能を「断らない相談」の拠点とするなどの対応が検討されています。
これにより、1つの窓口で8050問題への複合的支援を受けられることになります。

●自治体の相談窓口

自治体では専門分野に応じて中高年ひきこもりへの対応を受けることができます。
2021年度以降はさらに包括的な「断らない相談窓口」が設置されますが、その基となる分野別の相談窓口を確認しておきましょう。

1)地域包括支援センター(市区町村)

介護保険を利用していない人も含めてすべての高齢者についての相談支援を行います。
8050問題に該当する親子についても、高齢の親が抱える課題への対応という視点から相談を受け、子に必要な支援について専門機関に連携してくれる場合があります。
介護以外の福祉系サービスや精神科など医療機関にも詳しいので、特にひきこもる子に精神疾患や障害の可能性が考えられるケースでは頼りになる機関です。
親の成年後見制度利用が必要な場合の支援も行います。

2)ひきこもり地域支援センター(全国に配置)

都道府県をエリア別で管轄しひきこもり支援を行います。
ひきこもり対応の実績とノウハウを持つNPO医療法人などが運営し、電話や来所相談、必要に応じてメール相談への対応や、訪問支援を行うところもあります。
相談内容によって医療・福祉・教育・労働の適切な機関に支援を働きかけます。

3)精神保健福祉センター(都道府県)

各都道府県に設置されており、精神疾患がある方やその家族への支援を行っています。
電話相談や面談、家族の会を開催しています。

4)生活困窮者支援窓口・自立相談支援センター等(市区町村)

生活保護受給を受けていない段階の人の自立に向けた相談・就労することを前提とした住居確保給付金の支給の相談にのります。
※ただし後で述べますが、中高年ひきこもりは最初から就労を目標にしないことが支援の鍵なので、困窮が差し迫ったケースは生活保護の窓口や高齢福祉の窓口にも相談しましょう。

5)インターネット「ひきこもりサポートネット」(東京都)

東京都ではインターネットでひきこもりの相談ができるシステムがあります。
電話や来所を必要としないので、本人からでもアクセスしやすいのが特徴です。

民間のネットワーク

民間のネットワーク

8050問題の対応は行政だけでは限界があり、民間を含めた支援ネットワークが各地で発足しています。

●8050ネットワーク

8050問題に取り組む組織として「全国家族・市民の会エスポワール 8050問題ネットワーク」(京都・兵庫・奈良・愛知などの7団体が参加)が発足しています。
ほかに「かごしま8050ネットワーク」(鹿児島県内の産学官民・医療・教育関係者が参加)も結成されています。
勉強会や当事者の早期発見、電話・訪問相談、居場所づくりや支援者の育成も行います。

全国家族市民の会エスポワール(8050全国ネットワーク)
かごしま8050ネットワーク

●KHJ全国ひきこもり家族会連合会

全国の当事者家族会と連携し、ひきこもりの子や家族同士をつなげる孤立防止や行政への働きかけを実施しています。
ひきこもり支援の研修・調査・情報誌発行・厚労省のシンポジウムへの協力も行います。
ひきこもる本人や親だけでなく、相談先や居場所のない兄弟姉妹の集いも開催しています。

KHJ全国ひきこもり家族会連合会

相談支援のポイント

相談支援のポイント

8050問題への対応には若者への支援と違った対応ポイントがあります。
万一SOSをキャッチした場合は、以下を念頭に相談支援にあたりましょう。

1)高齢親の支援を誠実に行うことが、子の「社会への信頼」を取り戻すことに

高齢者の家庭で中高年ひきこもりを確認したら、焦らずまずは高齢の親への支援を誠実に行っていきましょう。
ひきこもっている人は、見なくても家庭内で起きることを敏感に察知しています。
ケアマネジャーやヘルパーの立場では、まずは高齢の親へ精一杯の支援をすることを第一にしましょう。
それによりひきこもりの子がもう一度「頼れば応えてくれる人がいる」と感じられることが、子への支援にもつながります。

2)精神疾患や障害による症状や困り感がないかチェック

ひきこもる原因はさまざまですが、なかにはなんらかの精神疾患(統合失調症や気分障害など)や障害(知的障害・発達障害など)が背景にあるケースもあります。
訪問時に子の様子を親から聞くことがあれば、そういう症状や困り感がないかエピソードの中からチェックしておきましょう。
すると万一親の状況が悪化して子が孤立しそうなときに精神科や障害支援の専門スタッフが支援・介入する理由になることがあります。
いつでも専門機関に情報提供できるよう、時系列・箇条書きで記録にまとめておきましょう(診断書やサービス利用意見書の作成に役立つ場合があります)。

3)子には就労を求めず、まずは「一人でも生活を継続できるための支援」を

中高年で長期にひきこもる方へは就労をゴールとしないスタンスの支援が重要です。
親の心身が悪化すれば、就労以前に親子ともに「命の危機」にさらされるからです。
まずは「一人でも生活を継続できる」ように、親がいなくてもいろんなサービスや支援とつながることを目標に設定します。
親の状況が良くない喫緊のケースでは早急に地域包括支援センターに連携し、行政窓口につないでもらい生活保護や障害年金受給などで子の生活基盤を確保します。
(生活保護は持ち家でも受給できる場合があります。)
ほかにも、地域の配食サービスで食事の確保を行うなど、若者のひきこもりより踏み込んだ支援が必要です。
また全く他人を受け入れない場合は、いつでも支援を開始できるよう、専門機関と情報を共有し、本人と支援機関がゆるく「つながっている」状態を作っておきましょう。

4)来所や電話相談だけでなく「メール」などオンラインで相談できる手段を

福祉サービスの利用相談では「対面」や「電話」が基本ですが、これからの時代はメールやチャットサービスで相談できる仕組みを用意することも大切です。
近年スマホの普及により家庭に固定電話を設置しないケースの増加により、電話をかけることに強い抵抗感を感じる若者が増えています。
また発達障害者などは状況の説明や、電話で耳から理解したり初対面の人と話すのが難しい人もいます。
メールやチャットなら相談しやすい場合もあるので、今後事業拡大を計画する際には特にオンラインツールでの相談システムも構築しておきましょう。

5)当事者の代わりに相談窓口の「アポ取り」まで行う

8050問題の当事者は過去に支援機関に相談し、たらいまわしにされた経験で気力喪失しており、再び相談に行くことに抵抗感を持っていることもあります。
支援者は代わりに窓口に電話し、相談のアポイントを取るところまで行う必要があります。
また連携した先のスタッフが訪問するときには同席してフォローするということが大切です。

【まとめ】緊急性を判断し確実に連携先につなげ支援チームを作ろう

8050問題は若者のひきこもりより具体的で多面的な生活支援を必要とします。
ケアマネやヘルパーが訪問先でSOSに気づいた場合は、親の同意を取って可能な限り支援窓口につなげ、急を要する場合は緊急性を確実に伝えることが重要となります。
そのままにしていると9060問題へ移行し、さらに介入が困難となるので、少しずつでも前進できるよう連携先を増やし、多分野のチームとして対応していきましょう。

参考:
日本経済新聞 中高年ひきこもり61万人 内閣府が初調査(2020年10月16日引用)
内閣府 令和元年版 子供・若者白書 特集2 長期化するひきこもりの実態(2020年10月16日引用)
NHK ハートネット 「8050問題」とは?求められる多様な支援(2020年10月16日引用)
東洋経済 8050問題「親亡き後の死体遺棄事件」を生む悲惨 中高年引きこもりは支援から取りこぼされる(2020年10月16日引用)
時事ドットコム 介護財源、活用可能に 「8050問題」相談-厚労省 (2020年10月16日引用)

  • 執筆者

    湖上ゆうこ

  • 大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。

    保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士

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