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職場で折れない心をつくるには?レジリエンス(回復力)の高め方をわかりやすく説明

近年注目されている「レジリエンス」。
いわゆる「打たれ強さ」、困難にあってもしなやかに回復する力のことです。
コロナ禍でも課題多き状況を乗り越えるため、この力が求められています。
多忙な介護福祉の現場でレジリエンスを高める方法を説明します。

困難に立ち向かう不屈の精神レジリエンスの高め方

レジリエンスとは?

レジリエンスとは?

レジリエンスはもともと物理・工学用語で、直訳は「回復力」「反発力」。
心理学や精神医学では「立ち直る力」「精神的回復力」「弾力性」などと訳されます。

東京学芸大学の藤野博教授の言葉を借りるとレジリエンスとは「心の『強さ』というより『しなやかさ』というべきもの。なにがあってもびくともしないタフさではなく、つらい経験をしてへこんだり落ち込んだりしても、気持ちを立て直せること」とイメージできます。

ほかにビジネスや防災分野で「リスクからの回復力の高い組織づくり」、「災害から立ち直る力の強い地域づくり」という意味で使われることもあります。

臨床心理学のレジリエンス研究の先駆者は、20世紀半ばのミネソタ大学名誉教授ノーマン・ガ―メジーです。

彼は統合失調症の親の子が、親と生活しても同じ病にかからないのは「ある種の再起力」の役割が大きいと発見しました。

以後レジリエンス研究が盛んになり、ホロコーストの強制収容を生き抜いた人の性質、スラム街で育った若者が発揮するレジリエンスなどが研究されています。

これらの研究の結果、レジリエンスは生まれながらに備わる人がいるだけでなく、後から強化できると考えられるようになっています。

また松田・南・北垣の3氏によって行われた2018年発表の研究ではレジリエンスが高い介護人材は職場にとどまろうとする傾向があるとの結果も出ています。

特に現代は不確実で不安定な社会情勢・地球環境・経済状況にあり、困難にしなやかに対応できる人材の育成、教育・障害児療育の世界でレジリエンスが注目されています。

「レジリエンスの高い人」の3つの特徴

「レジリエンスの高い人」の3つの特徴

ではレジリエンスが高い、回復力の高い人にはどのような特徴があるのでしょうか。
研究者によって見解はさまざまですが、ここでは我が国の著名なレジリエンス尺度小塩・中谷・金子・長峰(2002)の「精神的回復力尺度」で挙げられる、レジリエンスの3要素について、わかりやすい言葉で解説します。

●新奇性追求

新しいことに興味関心を持ち、未知の分野にも挑戦しようとする傾向。
うまくいく確信がなくとも、新しい体験に挑戦したり楽しめる力があり、多少の困難に出会っても落ち込みが少なくトライしていくことができます。

この力を維持するには、仲間や同僚・相談にのってくれる先輩や親など「失敗しても心を回復させることができる安全基地」の役割となる存在も大切です。

●肯定的な未来志向

将来的な不安はありながらも、基本的にポジティブに明るい未来を想像でき、またそのように未来を肯定的に見ることができるための将来に向けた努力を積むことができる姿勢。
現実的に厳しい状況に置かれていても「研鑽を積むことで将来の結果も良くなる」と未来をポジティブに思い描くことができる志向です。

たとえば、「夜と霧」で知られる精神科医ヴィクトール・フランクルは、アウシュビッツの強制収容所で「終戦後に強制収容所での心理状態についての講義をする自分」をイメージすることで、生きる目標・意味を自ら設定し心身を病むことなく無事生還しました。

このように困難の中でも、現実を直視しつつ前向きな目標や意味を見つける力により、境遇を打破できます。
すぐに今ある状況を改善できなくても、少し先にポジティブな目標を据え、悲観しすぎず今できることに尽力する能力といえます。

●感情調整

自分の気持ちをある程度うまくコントロールでき、感情に振り回されて不本意な行動をとることが少ない、落ち込んでも自分なりの解消法を使い、悩みを引きずらない状態です。

次の見出しで紹介する「マインドフルネス」などの方法で、自力で動揺や憂うつ・イラ立ちから素早く回復できることも大切です。
カラオケなど自分なりのストレス発散手段を使って感情のバランスを保つことも、感情調整の1つといえるでしょう。

レジリエンスを高めるための方法

レジリエンスを高めるための方法

ここまでで、レジリエンスを保つには「悲観しすぎず未来にポジティブな目標を据えて今できることを努力し自分なりのストレス解消法を持つこと」が大切だとわかりました。
環境も重要とする識者もいますが、個人でレジリエンスを高める方法もあります。
具体的な方法について、「ハーバード・ビジネス・レビュー レジリエンス」(2019年発行)を参考に、世界の著名人が推奨する手段を4つ紹介します。

●「マインドフルネス」で前頭前野の左側を活性化させ、脳の再起回路を鍛える(心理学者ダニエル・ゴールマン)

「マインドフルネス」という方法で、前頭前野の左側を活性化します。
ヒトは動揺や不安を感じると、前頭前野の右側が活発化しストレスやイラ立ちを感じるが、前頭前野の左側を活性化させることでさまざまな憂うつから回復するという点を利用します。

毎日30分のマインドフルネスを習慣化すると、前頭前野の左側がより活発に働くようになり、脳の再起回路が鍛えられると考えられます。

<マインドフルネスのやり方>

  1. 1)数分間一人で集中できる、静かな場所をみつける
  2. 2)ゆったり座り、リラックスして背筋を伸ばす
  3. 3)吸う・吐く感覚を意識し、ゆっくり呼吸を繰り返す
  4. 4)意識に侵入し集中をさえぎってくること(思考や音など)をスルーし、呼吸に集中する

これなら数分でできるので、仕事の休憩時間やすきま時間、帰宅後のリラックスタイムでも試せますね!

マインドフルネスについてはこちらも参考にして下さい

簡単にできるマインドフルネス(瞑想)の方法!ストレス解消や集中力を高めたいときにおすすめ

●貯金のように「ポジティブ通貨」の記録を付ける(心理学ソフトウェア提供のPFグループ創業者 デイビッド・コパンズ)

レジリエンスを高める効果がある「ポジティブなコミュニケーション・出来事・記憶」を「ポジティブ通貨」と呼び、文字に書いて記録し蓄積する方法です。

<「ポジティブ通貨」をためる方法>

1)ポジティブな出来事をノートやスマホ・パソコンなどに書きためる

→「利用者に感謝された、同僚に助けられた」などの良い出来事を記録し、時々見直して感謝する習慣をつけると、自然と幸福感や満足感が高まりレジリエンスが強化されます。

特に「手で文字に書いて記録する」ことで大きな効果を得られ、またそうして得られたポジティブな態度は、周囲にもポジティブな影響を与えることがわかっています。

2)プライベートでもポジティブ通貨をためる

仕事以外の家族・友人・趣味のコミュニティなどでもポジティブな出来事を記録していくと、仕事でもベストパフォーマンスを発揮できるようになります。
職場で良いパフォーマンスが発揮できると、自己肯定感が育つ好循環になりますね。

3)記録を定期的に振り返る

記録を定期的に振り返る

→貯金を確認するように定期的にポジティブな記録を振り返ることで、新たな気づきを得たり行動変容できるなど、さらにレジリエンスを高めることに役立ちます。

●仲間や同僚と自分の失敗から学べるように議論できる関係をつくる(フェイスブックCOO シェリル・サンドバーグ)

失敗してしまったときは、仲間や同僚に自分の失敗について一緒に議論してもらえる関係をつくっておきましょう。
致命的なミスの少ない病院では、間違いについて責めず素直に話せる土壌をつくり、チームで学習することで大きなミスを防ぎます。
またアメリカの海兵隊では訓練後に毎回、うまくいかなかったことを洗い出し徹底的に話し合います。

残念ながら現在の職場がそういう土壌ではなくても、自分なりに失敗について振り返る時間をつくったり、振り返って気づいたことを聞いてくれる仲間を見つけるといいですね。
一人で失敗を引きずるよりも、良い結果にたどり着けるはずです。
もしも自分がリーダーになったときも、ミスの再発防止について安心して議論できるチームづくりをしてみてください。

●業務中の小休憩「就業内回復」&帰宅後の「就業外回復」を意識する(ポジティブ心理学者 ショーン・エイカー)

全力を尽くしたり仕事のことばかり考える時間が続くと、「燃え尽き」をおこしやすく回復にも長い期間が必要になります。
それを防ぎレジリエンスをキープするには、仕事中も短時間の休息をとる「就労内回復」、オフの日や寝る前には「就業外回復」を意識することが有効です。
そのように「回復」の習慣を持つことで、「耐える」のではなく困難に遭遇した後も短時間でしっかりダメージを回復でき、ベストパフォーマンスを維持できるようになります。

1)就業内回復のポイント

仕事の合間に短時間の休憩をとるときは、できれば業務の話は避けたり、仕事と関係のない雑誌を読んだり、外に出て気分転換すると良いでしょう。

2)就業外回復のポイント

休日や帰宅後はスマホやパソコンの前から離れ、政治など思考を酷使するテーマについて考えることからも離れ、瞑想や睡眠、映画や雑誌などでリラックスしましょう。
(オフにスマホやパソコンを触る癖が抜けない人は、一定時間スマホを操作できなくする「スマホ依存対策アプリ」を利用しても頭を休めることができます。)

レジリエンスはいつからでも訓練で高めることができる!

レジリエンスは生まれつき高い人もいれば、日々の習慣次第でいつからでも高められます。
企業ではレジリエンス研修を社員向けに実施しているところもありますが、今回お伝えしたような方法で、個人でも高めることは可能です。
介護福祉業界は自分の心身をいたわりケアすることで、利用者へのケアも向上できますので、ぜひできることから試してみてください。

介護現場のストレス対策などについては、こちらの記事もご参照ください

介護現場での燃え尽きを防ぐ~離職を減らすマネジメント
派閥やいじめまで⁈人間関係に悩んだ時に介護職を辞めずに済む方法

参考:
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部: ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ]レジリエンス. ダイヤモンド社, 東京, 2019, pp.18-21,pp.26-28,pp.42-46,pp.56-80,pp.81-90.
藤野博・日戸由刈(監修): 発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本. 講談社, 東京, 2015, pp.1-15.
松田美智子, 南彩子, 北垣智基: 高齢者福祉施設における介護人材の共感疲労およびレジリエンスの構造. 厚生労働統計協会 「厚生の指標」第65巻第8号, 2018.(2020年11月25日引用)
齊藤和貴, 岡安孝弘: 最近のレジリエンス研究の動向と課題. 明治大学心理社会学研究4: 72-84, 2009.(2020年11月25日引用) 

  • 執筆者

    湖上ゆうこ

  • 大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。

    保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士

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