介護・高齢者施設が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

医療従事者向け 介護プラス

ケアを担う子ども「ヤングケアラー」は25人に1人!現状と支援のポイントを解説します

大人でも大変な「身内の介護」を担っている子どもたちがいます。
「ヤングケアラー」と呼ばれる彼らはなんと25人に1人はいるとの調査結果も出ています。心身の形成や進路に重要な時期にケアに追われる彼らの現状や、ケアマネとして遭遇したときにその家庭の支援で大切になるポイントを解説します。

クラスに1人いるかもしれない「ヤングケアラー」とは

ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは

日本ではヤングケアラーの明確な定義はまだありませんが、高齢化スピードが早い埼玉県が全国に先駆けて施行した「埼玉県ケアラー支援条例」では以下の定義となっています。

「ヤングケアラー」=18歳未満のケアラー
「ケアラー」=高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を行う人

またヤングケアラーが行っている具体的なケアの内容は

  • 買い物・料理・掃除洗濯などの家事
  • ○障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守り
  • ○障がいのある家族の通訳
  • 依存症のある家族の対応
  • ○障がいや病気のある家族の身の回りの世話
     (食事・着替え・トイレ・入浴・移動の介助、投薬管理、金銭管理、通院の付き添いなど)
  • 目を離せない家族の見守りや声かけなどの気遣い(徘徊の見守りなど)
  • 労働で障がいや病気の家族の家計を助ける
  • ○がん、難病、精神疾患など慢性的な病気の家族の看病

(参考:日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト)

等となっています。

両親やシングルの親が仕事で忙しく、子どもが祖父母のケアをしているケースもあります。
また親自身やきょうだいに障がいや難病・精神疾患があり、子どもがケアせざるをえないケースも見られます。

ヤングケアラーの現状

ヤングケアラーの現状

毎日新聞の共同調査(2020年6月実施)では、全国のケアマネジャーの約6人に1人が、ヤングケアラーのいる家庭の担当経験がありました。

またわが国で初のヤングケアラーの大規模調査が2020年に埼玉県で実施され、県内すべての高校2年生のうち4.1%の生徒がヤングケアラーに該当することがわかりました。
およそ25人に1人、つまり1クラスに1人はヤングケアラーがいるということです。
これは埼玉の高校2年生だけの調査なので、実際にはもっと低年齢のヤングケアラーもおり、全国だとかなりの数のヤングケアラーがいることになります。

調査では「毎日ケアしている(35%)」「週4~5日(15%)」「週2~3日(22%)」など子どもが担うケアの頻度が高いケースもみられます。

また一人のヤングケアラーがケアしている人数の中には「2人をケアしている(約14%)」「3人をケアしている(4%)」という生徒もおり、負担が大きい生徒の存在もわかりました。

介護している相手は「祖父母」「父母」「兄弟姉妹」がほとんどで、年齢は「40代(約16%)」が最も多く、次いで「70代」「50代」等となっています。

介護を要する主な原因は「病気」が一番多く、ほかに「高齢による衰弱」「認知症」「障がい」「依存症」などがあります。

ケアを開始した年齢には「小学1~3年」「小学校入学前」という子もおり、かなりの低年齢から介護をする子もいました。

この埼玉での調査結果は、同様の問題が危惧される全国の自治体にも衝撃を与えています。

ヤングケアラーが抱える課題

ヤングケアラーが抱える課題

ヤングケアラーは思春期でもあり、家族の事情を友人や教師に話すのが恥ずかしく、理解されないことを懸念し、困りごとを他人に相談できず孤立する場合もあります。

前述の埼玉県の調査では「(ケアは)学校生活に影響なし」とする生徒も41%いる一方で、

  • 「孤独を感じる」
  • 「ストレスを感じる」
  • 「勉強時間が十分に取れない」
  • 「睡眠不足」
  • 「授業に集中できない」
  • 「成績が落ちた」
  • 「友人と遊べない」
  • 「体がだるい」
  • 「自分の時間が取れない」
  • 「進路を考える余裕がない」

と答えた生徒もいます。

埼玉県ではこの調査結果を受け、電話やSNSを活用した相談体制整備、教職員やスクールカウンセラーへの研修を検討中です。
また睡眠もとれず介護しているなど緊急度の高い生徒への支援を行う人材育成も課題に挙げられています。

海外のヤングケアラー支援制度

海外のヤングケアラー支援制度

TBSの報道によると、ケアラー支援先進国のイギリスでは1980年代からヤングケアラー支援体制が整えられています。
現在イギリスでは自治体がヤングケアラーの現状把握をすることを法律で義務付け。
学校では昼休みに校内のヤングケアラーが集まって抱える問題を話し、そこで支援団体の専門コーディネーターやヤングケアラー担当教員、地域ボランティアがフォロー。
生徒手帳にはヤングケアラーの支援機関が書かれていたり、放課後に支援団体が行う集まりに参加しリフレッシュしたり同じような負担を抱える友人と交流できます。

わが国ではまだここまで介護を担う子どもが相談しストレスを和らげられる場がなく、課題をサポートする制度もありません。
今後日本政府も2020年度冬にヤングケアラーについて初の全国調査を実施予定で、それを元にようやく全国的な支援体制の構築も図られていくと想定されます。

支援のポイント

支援のポイント

ケアマネジャーがヤングケアラーのいる家庭に遭遇した場合、費用内で活用できる介護サービスを十分に提供することはもちろん、ほかにどんな支援ポイントがあるのでしょうか。

●親の事情を理解し、まずは親との信頼関係を築く

ヤングケアラーの家庭では子をやむなくケアラーにせざるをえなかった親の事情も。
そのため、親に子どもが「ケアラー」だと突きつけることは傷つける可能性があり、デリケートに接する必要があります。
親との関係がこじれれば介護サービス提供ができなくなるので、まずは親との信頼関係構築が優先となります。
親の拒否にならないよう、少しずつお子さんの状況も確認し、お子さんの負担を軽くできる支援の情報提供をしていく、というスタンスで接しましょう。

●ケアラーへ介護保険以外の情報提供も

子どもは家の中のことを他人に相談しにくく、また学業より困っている身内の世話を優先してしまいがちで、いわゆる「巻き込まれ」の状態になりやすい環境です。
特に親が病気や障がいにより判断が難しい家庭なら、子ども一人で情報を集め判断しなければならず、子ども自身を犠牲にする選択しかできないこともあります。
モニタリングでは子どもの目線でも困りごとを確認し、介護保険以外で助けを借りられる方法(ファミリーサポートで病院の付き添いを頼むなど)も伝えましょう。
また子どもは情報が少なく、少し先の見通しを持つのも一人では難しいので、レスパイトケアなどの情報を知らせておくだけでも先行き不安を和らげることができます。
子どもが必要とすれば、包括支援センターや子どもの支援を担当する役所窓口、民生委員といった部署や人材を紹介するなど、介護保険以外の支援者につなげましょう。

●当事者同士で語り合えるサービスを紹介し、エンパワメントを支援する

日本では海外のような校内や放課後のピアサポート活動の場がまだありません。
その代わりとなるような、ピアサポートの場を子どもに伝えるのも重要です。
当事者同士でケアの苦労を語り頑張りを承認される経験は、生き抜く大きな力になります。

<ヤングケアラー当事者交流の場>

Yancle community

→無料オンラインコミュニティ。
チャットアプリ「slack」で元当事者のソーシャルワーカーや作業療法士・看護師・現在当事者の仲間と交流が可能
運営者自身も難病の母の介護を経験した当事者

若年性認知症の親と向き合う子ども世代のつどい まりねっこ

→東京都内やオンラインで語れる場を展開、日常的にSNSを利用し情報提供している
 インスタグラム:https://www.instagram.com/marinekko.team/

横浜ヤングケアラーヘルプネット

→若い頃や学生時代に介護を経験した当事者や、専門職らが定期的な集いを開催

●教育機関との連携

藤沢市の教員への調査(2017年)
では、児童生徒が話さないとケアラーだと教師は気づけず、気づいてもその子の介護量を「知らない」ケースが7割にのぼります。
学校側もなかなかヤングケアラーがいても発見できず、見つけても相談先や支援方法に困っている状況といえます。

今後国や自治体もヤングケアラー支援に力を入れるので、教育機関から介護事業所にも情報提供を求めるケースが増える可能性もあります。
親子や学校からのSOSがあれば、介護サービス依頼者やケアラーの親の承諾を得て、介護サービス拒否がないように配慮をしながら、学校や自治体で情報を共有しましょう。
子どもの環境を視点の違う専門家同士で共有・整理すると、子どもが活用できる資源を多くできます。
「ここまでは介護保険でまかなえるが、これ以上の部分をフォローするサービスが欲しい」など伝えれば、実情に合わせて地域のほかの社会資源で対応できる可能性も出てきます。

子どもが情報を得て自分と家族のことを分けて考えられる手助けを!

ヤングケアラーはまだ社会的に認知度が低く、教員や介護職の中でも知らない人がいます。
本人も家庭事情を隠す場合が多く、発見されず一人で苦しんでいることがあります。
介護保険では同居者がいる場合はヘルパーの導入が難しいケースなど課題もありますが、子どもにとってはまず自分が使える制度の情報を知ることが大きな助けとなります。
親の反応を見ながらの支援となりバランス力が必要ですが、ヤングケアラー自身が自分のことと家庭のことを分けて冷静に判断し状況を少しずつ改善できるよう手助けしましょう。

参考:
毎日新聞 ヤングケアラー「介護担う子、いた」16% ケアマネ全国調査(2020年12月10日引用)
埼玉県 ケアラー(介護者等)支援(2020年12月9日引用)
埼玉県 ケアラー支援計画のためのヤングケアラー実態調査結果(2020年12月9日引用)
NHK 介護担う「ヤングケアラー」を支援 埼玉県が相談体制整備へ(2020年12月9日引用)
毎日新聞 ヤングケアラー~幼き介護 ヤングケアラー全国調査、子どもに直接聞き取りへ 文科相「学校把握できていない」(2020年12月9日引用)
TBS ニュースが少しスキになるノート 「ヤングケアラー」報道特集より(2020年12月14日引用)
Yancle 【読売新聞掲載!】オンラインコミュニティのご案内(2020年12月9日引用)

  • 執筆者

    湖上ゆうこ

  • 大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。

    保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)