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認定理学療法士が教えます!明日からできる、訪問リハビリで必要なフィジカルアセスメントとは!?

厚生労働省の統計データによると、わが国の死亡率第2位は心疾患であり、高齢化にともない罹患(りかん)率も増えています。
訪問リハビリに従事する若手セラピストの方々は、循環器疾患に関して知識不足を痛感することも多いのではないでしょうか。
本記事では、認定理学療法士の立場から、明日から実践できる3つのフィジカルアセスメントをご紹介します。

見えるリスクを把握する

「リスク管理」とは魔法の言葉!?

みなさんも、学生時代や新人のときに「リスク管理」という言葉をよく耳にしたと思います。
しかしこの言葉は漠然としていて、具体的になにをすればいいのかわからない方も多いでしょう。
ここでは、リスク管理という魔法の言葉をひも解いて、目に見えるリスクと見えないリスクにわけて解説します。

●見えるリスクを把握する!

一般的には、リスク管理というとバイタルチェックを思い浮かべるセラピストが多いでしょう。
では、バイタルチェックとは具体的になにをすればいいのでしょうか。
代表的な評価を以下にあげてみます。

  1. 1)血圧・脈拍
  2. 2)体温
  3. 3)経皮的酸素飽和度
  4. 4)倦怠感の有無
  5. 5)疼痛の有無

これらを評価することによって、利用者さんの状態の把握に努めるわけですが、循環器疾患をお持ちの方に対する管理としては不十分です。
上記5つに加えて必要となる3つのアセスメントに関しては後述したいと思います。

●見えないリスクってなに!?

血圧や体温の測定に関しては、その場でリハビリを実施するか否かを判断することが多いです。
しかし、実際のリハビリ場面では、複数の評価結果から起こる可能性のある事象を予測することが重要です。
一例として、
「この利用者さん、以前にくらべて脈が速いかな…」
「では、動いたときに息切れを訴えるかもしれないから、休憩用の椅子を用意しておこう!」
など、臨床場面では見えるリスクから見えないリスクを予測することが重要です。
これは臨床現場で働くセラピストにとって必須のスキルですが、
「私は勘が鈍いから、なかなか気づくことができない…」
と諦めている方はいませんか?
ここでひとつ、トレーニング方法をご紹介します。

みなさんは、危険予知トレーニングという言葉を聞いたことがありますか?
筆者の職場では、週に1回の頻度でこのトレーニングを実施しています。
具体例として、ベッド周囲やリハビリ室などの訓練場面を写真で提示し(イラストでも可)、どこに危険が潜んでいるかを各スタッフが意見するというミニ勉強会です。
自分と違う視点で物事を考えられるため、ぜひ試してみてください。

循環器疾患をもつ利用者さんに対応できるか!?

循環器疾患をもつ利用者さんに対応できるか

冒頭で心疾患が死亡率第2位と述べましたが、それはあくまでも全体の割合であり、リハビリの主たる対象である高齢者では少し異なります。

●今後、心疾患での死亡率は上昇する!?

厚生労働省の統計データによると、後期高齢者においては心疾患での死亡率が高くなり、これは平均寿命の延長とともに顕在化すると予想されます。
また、心筋梗塞などの虚血性心疾患は壮年期に多いですが、後期高齢者で気をつけておくべきなのは心不全です。
正確にいうと心不全は病名ではありませんが、高血圧や糖尿病、不整脈や心筋症など多くの原因があり、高齢になるにつれ病態は複雑化してきます。

●増える心疾患!セラピストは準備万端?

諸富ら(2016)によると、訪問リハビリ提供者が対応できないと答えた疾患の第1位は心疾患であり、52.7%と半数以上を占めていると報告されています。
では、こう答えるセラピストが多い理由はいったい何なのでしょうか?
筆者の経験上、

  1. 1)急に苦しんだり倒れるかもしれない
  2. 2)動かして悪くなったら自分のせいと思われる
  3. 3)何を評価していいのかわからない

という意見を耳にすることが多いです。
しかし、何の前触れもなくいきなり倒れる方はそう多くありません。
重要なのは、前述した見えないリスクを把握できるかどうかだと筆者は考えます。
そして、考えられる可能性をひとつでも増やすために、次項で紹介するアセスメントをぜひ実践してみてください。

明日からできる!訪問リハビリで役立つ3つのフィジカルアセスメント

聴診、視診、触診

最初にあげた5つの評価項目以外に、循環器患者さんの状態を把握するには以下の3つの項目を押さえておきたいです。

●聴診(呼吸音・心音)

聴診に関しては、学生時代にしっかり学べたと答えるセラピストは少ないのではないでしょうか?
ここでは呼吸音と心音の聴診において、最低限押さえておきたいポイントについて述べたいと思います。

1)呼吸音

吸気と呼気の長さや、異常ラ音が聞こえないかを評価し、また左右差がないかをしっかりと把握しておきましょう。
「ヒュー」と狭さくしている音(笛声音)やブツブツという音(水泡音)が聞こえる場合は、心不全が悪化している可能性があります。
異常を感じた場合は、ケアマネジャーや事業所の看護師などに相談し、場合によってはかかりつけ医に一報を入れることも必要です。

2)心音

心音に関しては、「ドッドン…ドッドン」という拍動のリズムが規則正しく聞こえるかや、「ブォードン…ブォードン」など擦れた音(収縮期雑音・拡張期雑音)が聞こえないかをチェックしてください。
リズムが常に不整であれば心房細動の可能性が高く、情報提供書や問診から既往歴を確認しておくことが有用です。
また、擦れた音が聞こえる場合は、心臓弁膜症の可能性が高く、不整脈と同様に既往歴や労作時呼吸苦がないかを確認しておきましょう。

●視診(呼吸苦の有無)

押さえておきたいポイントとしては、「寝ているときに息が苦しくはないか」、「動いたときにいつもより息があがっていないか」です。
ご高齢の方では、
「息があがるのは歳のせいですから…」
と答える方も多いですが、筆者の経験上、実は心不全の初期症状であったケースも多いです。
「まさか心不全とは思わなかった!」
と入院後に後悔される方もいますが、ここはやはり医療職として早めに気づいてあげたいところです。

●触診(足の浮腫や体重の変化)

循環器疾患を理解するうえでも、触診は非常に大きな役割をもちます。
1週間で体重が2kg以上増えている場合や、足背(足の甲)がむくんでいる場合は心不全の悪化を疑いましょう。
本人に聞いてもはっきりしない場合は、同居している家族の方に尋ねることが重要です。
「そういえばここ数日で足がむくんできました」
「お風呂上がりに測ったら体重が増えていたような…」
などの情報があれば要注意です。

まとめ

本記事では、循環器疾患を専門としている筆者の経験をもとに、訪問リハビリの現場で身につけておきたいフィジカルアセスメントをご紹介しました。
診察をするうえでは基本的な評価項目ですが、われわれセラピストには十分に普及しているとはいえません。
限られた時間で効果的なリハビリを提供することは重要ですが、それは安全性が担保されたうえで成り立っていることを忘れないようにしましょう。

参考:
厚生労働省 平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況
諸富伸夫:訪問診療医からみる内部障害患者とリハビリテーションの現状.
MEDICAL REHABILITATION 200:15-22,2016.

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